11月26日(月)
通勤読書は『世界ぐるっと朝食紀行』西川治(新潮文庫)。そのタイトルどおり世界中の朝食をルポしたものなのだが、ランチでもなくディナーでもなく「朝飯」というところが素晴らしい。なぜならその簡単な食事にこそ、お国柄が出るからだ。パン、粥、飲茶、フォー。飲み物もオレンジジュースにチャイにコーヒー。その国の気候や暮らしにあった朝食がそこにある。またあてどなくメシ屋を探すその姿は、名作マンガ『孤独のグルメ』(扶桑社文庫)に似ているかも。
営業でつらいことといえば、いるのを忘れられることか。
書店さんを訪問し、担当者さんにご挨拶をしたのは良いけれど、そのとき担当者さんは別の営業マンと話していたり、お客さんの応対をしていたりすると「ちょっと待っててね」なんて言われることがある。たいていはその要件が終わると、欠本調査などして時間を潰していた、こちらにいらしていただけるのだが、その間にお客さんの問い合わせや電話応対などが入り、すっかり存在を忘れられることがある。いや状況を考えたら仕方ないことなのだ。
で、何がつらいかというと、自分が忘れられているのか、それともまだ待たされているのか、わからないということだ。もし忘れられているならまた声をかければ良いし、もしこちらも先を急いでいるのであれば、忘れられたままお店を出れば済むのだけれど、それがハッキリしない。
しばらく棚前でボーっとしつつ、担当者さんの姿を探すが、下手するとバックヤードに行ってしまわれたりして、どうなっているのかわからないこともたまにある。しつこく追って行って「まだなんですよ」なんて何だか催促してしまったような感じになることもあるし、この辺の判断は非常に難しい。
あとツライといえば、お店に訪問したときに担当者さんが見あたらず、他の方に「○○さんいらっしゃいますか?」と尋ねたところ、「あっ先ほど休憩に出たばかりなんで、戻りは1時間後ですね」なんて言われることがある。
いやツライのはその1時間ではない。そんな時間は近隣の書店さんを営業したり、棚を見ていればあっという間に過ぎていく。ツライのはそうやって1時間を過ごし、目的の書店さんに向かったときに、また担当者さんが見あたらず、たまたま近くを通り過ぎようとしている、さっき尋ねた書店員さんとは別の方に尋ねたら「あっ、○○は今日お休みです」なんて衝撃の事実を知らされること。
うわー!! 思わず声を挙げそうになるが、こんなことで声を挙げたり不満顔をしたら営業はやっていられない。「あっそうでしたか」とさも今初めてこのお店を尋ねたような顔をして、新刊情報などをお渡しし、お店を後にしなければならない。
まあ、でもしょせん我らは営業マンだ。基本的に邪魔者と思った方が良い。もちろんプライドはあるけれど、プライドってもんはこういうことでへし折れるようなヤワなものではない。10軒廻って3軒くらい良いことがある……かもしれないと信じて、今日も営業先に飛び込むのである。