3月25日(火)
通勤読書は「小説すばる」4月特大号と「小説新潮」4月号。
「小説すばる」は『文壇について知っている二、三の「邪魔」な「秘密」』と題された東野圭吾氏と奥田英朗氏の対談がムチャクチャ面白い。こんなに赤裸々に作家が文学賞や売れることについて語られたことが今まであっただろうか。対談の最後に東野圭吾氏が「この対談、おれたちにとってはメリットがない。1カ月、静かに何事もなく「小すば」が売れずに過ぎていくのを待つだけだね」と仰っているが、いやはや私はひとりでも多くの人に、この面白対談が読まれることを望む。
さて「小説新潮」は、日記の特集で、なんと顧問の目黒さんが『「はじめてのダイエット」日記』なんて書いているではないか。そういえば年明けにお会いした時、『俺はダイエットする。そしてそのことを書くんだ。その際、生まれて初めて自分の本当の体重おおやけにする』なんて言っていたのだが、それがこれなのか。しかし、ここに書かれている現体重「79.4キロ」というのは、絶対ウソだと思う。
なぜなら見た目もそうなんだけど、この「79.4キロ」という数字が、いかにも怪しいではないか。本人は<断言するが、80キロはない。>と書いており、それは百歩譲って、信じてあげてもいい。しかし「79.4キロ」は絶対ウソで、本当は79.6キロとか79.8キロだったと思われる。なぜ、それを素直に書けなかったかというと、そうなると四捨五入して80キロになり、たぶん僕や浜田がそう指摘してくることを考慮したのだろう。
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営業は常磐線。
千駄木の往来堂さんを久しぶりに訪問するが、相変わらず品揃えが素晴らしく、思わず営業マンではなく、単なるお客さんになってしまいそう。
綾瀬の山下書店は棚卸しの真っ最中。そのなかにTさんの姿を見つけ思わず声をおかけすると「実はこの棚卸し後は、山下書店の直営になるんだ」と話される。そうなのだ、この綾瀬の山下書店さんは、渋谷や銀座にある山下書店から、Tさんがのれん分けのようなかたちで起こしたお店で、店名は一緒だったが、別経営なのである。
ところが、今回の棚卸しを機に、直営の山下書店さんになるそうで、ということはTさんも引退で、もう会えないということらしい。淋しい。これでまたひとり「本の雑誌」が直の頃からお世話になっている書店員さんがいなくなるということだ。私は、このお店を訪問し、Tさんから伺う「本の雑誌」創刊時期の話を伺うのが大好きだったのだ。
落ち込みつつ、松戸の良文堂さんを訪問すると、高坂さんが、リスト片手に文庫の棚から本をちょっとだけ抜き出していた。何をしているんですか?と質問すると、「文庫の棚がいっぱいになると、こうやって出版社が送ってくるランクから外れたものを抜き出して、入れ替えるんですよ」という。新刊が出れば売り場は当然いっぱいになるし、出版社の倉庫も飽和する。そうするとトコロテンのように売り上げの悪いものが押し出され、返品や品切れや断裁の道を辿る。
また暗い話になりそうだったのだが、高坂さんから「杉江さんダメだよ! 『主題歌』柴崎友香(講談社)がわかんないようじゃ。あれ最高だよ! 傑作だよ!!」と叱られる。いやわからないんじゃなくて、あまりに女子の生活がリアル過ぎて、なんかこうそういうものに慣れていない自分はドキドキして居場所がない感じがしちゃんですよと説明するが、それが良いんじゃない、憧れるじゃん、なんて女子道について語り合う36歳のおっさんふたり。
柏、新松戸と訪問したらすっかり遅くなってしまったので、直帰する。