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9月22日(月)

 単行本版『「本の雑誌」炎の営業日誌』再校を無明舎安部さんに戻す。
 これで著者としての役割はほぼ終わったわけで、ここから営業に勤しむ。

 原稿を直している間、ずーっとこんなまとまりのない文章を本にして良いのだろうか…と悩んでいたのだが、今現在もその気持ちは変わらない。ふつう営業マンが出す本なら営業についての本だったり、あるいはせめて出版業界への提言みたいなものになるだろう。『「本の雑誌」炎の営業日誌』はどのどちらにも当てはまらずあまりに等身大なチビ出版社のチビ営業マンの日常でしかない。

 それなのに先日『文化系トークラジオLIFE』の営業で訪問した神保町のS書店人文書売り場では、リトルプレスの担当もされているOさんと名刺交換したところ「あっ!来月本出ますよね、楽しみにしています」なんて、いきなり声をかけられる。恐縮どころか、狼狽。仕事も忘れてお店を飛び出してしまったではないか。ほかの書店さんでも知らぬ間に本部の方が集約してくれていたり、場所を空けて待っているよなんて言っていただいたり、ネット書店さんではいち早く商品ページを作っていただいたりと、ほんとうに有難いかぎりなのだが、中身がそれに答えられるとは到底思えず、落ち込む一方である。

 まあ年8万点近くある新刊に埋もれるのは確実なのであるが、何だか本当に苦しい日々だ。

 昼は、成城学園の三省堂さんを訪問し、出版営業マンを主人公にした『平台がおまちかね』(東京創元社)の著者大崎梢さんと戸川安宣さんの対談を拝聴。マイクが1本しかなかったので会話にならなかったのがちょっと残念だったが、大崎さんの作家らしい語り口と、戸川さんの原稿を読む際のポイントなどが面白かった。

 夜は、飯田橋で、日下三蔵さん、白夜書房のFさん、ダイヤモンド社のKさん、そして深夜プラス1の浅沼さんと酒。僕を除いたこのメンバーの共通項は、ミステリーの造詣が深いということなのだが、特に日下さんとFさんの、昭和のミステリーに関するディープすぎる話は、合いの手も相づちも入れられず、こんな話を無料で聞いていいのかと悩んでいるうちに、3時間が過ぎてしまった。まさに知の巨人だ。

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