すでに一次投票の受付が始まった
本屋大賞は、今年で6回目。
元々は飲み会で「1回やってみない?」で始まり、それが思いのほかというか、ぶったまげるほど反響があってやめられなくなり、じゃあ5回を目標に頑張りましょうとなったのである。実行委員一同は、年々増していくプレッシャーや毀誉褒貶、予算不足と戦いつつ、ついにその目標である5回を今春達成したのであった。
私はてっきりこれで終わりかと思い、伊坂幸太郎さんが帰った後の楽屋でひとり泣いていたのだが、打ち上げ会場に行くと来年の話がそこかしこで語られているではないか。しかもそのそこかしこで語っている顔がやけに楽しそうなのである。もしやこれはやめられなくなるのではないかと出口に向かったのであるが、そこは出口ではなく、実行委員の高頭さんや白川さんがいるテーブルであった。そして気がついたら、私も来年の話を笑顔でしていたのであった。
11月1日、エントリー書店員さん向けにこのような文章を送り、6回目をスタートさせた。
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6年目も、ありました。
5年を目標に頑張ってきました本屋大賞ですが、やっぱりこれは楽しいお祭りなので辞めるわけにはいかないと、改めて10年を目標に頑張ることにしました。でも初心は変わらず、です。面白い本をお客様に届けたい。もう一押しすれば絶対伸びていく作家や作品を推薦する。そうやって書店店頭を活気づけていく。その繰り返しがこの5年だったわけですが、来春、その歴史に名を刻む作品を決めるのは、みなさん書店員さんであります。ぜひ、奮って投票にご参加ください。
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しかしである。
過去5回を振り返ってみると、何かが足りないのである。外文が投票できない。ノンフィクションも受け付けない。絵本も、マンガもない。それは確かに本屋大賞に足りないものであるけれど、そうではなく、もっと不足しているものを感じるのである。
それは......。
私の投票なのではないか。
祭りは踊らな損なわけだから、踊りたいのである。ならばどうすれば良いのか。書店員になればいいのである。
というわけで、いつも「誰か人いないっすか?」と私を人材派遣会社の営業マンと勘違いし、しかもすっかり私もその気になって助っ人・関口鉄平くんを派遣した中井の
伊野尾書店・伊野尾さんに電話したのである。
「もしもし最近、人、足りてますか?」
「いやーなかなか集まらないんですよ、特に年末が......」
「良いのがいますよ」
「じゃあ鉄平君はマジメはマジメなんですが笑顔がいまだに固いんで、今度は笑顔の素敵な人を希望します」
「おお、ちょうど良かったですよ。100万部の笑顔と呼ばれているのがいるんです」
「誰ですか?」
「私です」
即決で決まるかと思ったが、伊野尾さんは「うーん......」と電話の向こうで唸り続けるではないか。私は鉄平より下なのか。
「ダメでしょうか?」
「杉江さんの日頃の仕事を見ていると......」
確かに私は伊野尾さんのところでまともな営業をしたことがない。しかしそれは伊野尾さんが野球やプロレスの話をふるからであって私のせいではない。いやそんなことはないか。他のお店でも私はまもとに営業していないのだから。
「でも大丈夫ですよ、私、これでも元・書店員(アルバイト)ですから」
「それってPOSレジどころか、バーコードもない頃ですよね」
「そ、そうですけど、ピッてやるレジはジャスコのセルフレジで毎週やってますから」
「うーん......。じゃ、1回試してみましょうか?」
「試験ということですか?」
「まあそんな堅苦しく考えないでいいですよ。12月30日に入るアルバイトがちょうどいないので、その日どうですか?」
「了解しました」と言って、私は電話を切った。
12月30日(火)、11時から20時まで、中井の伊野尾書店さんで17年ぶりに書店員になる。お暇な方どうぞ覗きに来て下さい。エプロンの代わりに浦和レッズのユニフォームを着ています。