« 前のページ | 次のページ »

8月2日(日) 炎のサッカー日誌

 朝8時半から夕方5時まで娘のサッカーに付き合う。女子サッカーチーム、2チームを招いての練習試合だったのだ。

 娘は小学3年生だからアンダー10という括りの試合に出るのだが、この半年でそれなりにボール扱いを覚えたとはいえ、相変わらず試合で何をしていいのかわからない様子であった。グラウンドの真ん中でボールに歩み寄っては立ち止まるを繰り返す。幼稚園からサッカーをしている子たちの姿ばかりが目立ち、私は思わず浦和レッズ戦のときのように怒鳴りそうになってしまった。

 試合が始まったら勝つためにゴールを目指す。どうしたこんなシンプルなことがわからないのだろうか。私はアホみたいにシュートを打つ「どこにいてもストライカー」なので、いちだんと優柔不断な娘のスタイルが気に入らない。

 ガンガンいかんかコラッ!

 そう大声をあげそうになったとき、私は自分の中学校時代のことを思い出した。最後の夏の大会でチーム全員で円陣を組み、後にNTT関東の選手となるキャプテンが、いくつもの頭の影に向かって「絶対勝つぞ!」と叫んだのだった。そのとき私は心のなかで「早く負けて、夏休みにして欲しい」と思っていた。

 あの頃私は部活で「勝ちたい」なんて考えたことがなかった。それどころかサッカーが好きという気持ちもなかった。ただただ暇な時間をボールを蹴って過ごしていただけで、私がサッカーに夢中になってボールを本気で蹴り出したのは20歳を過ぎて自分でチームを作ってからだ。だから娘のことはとやかく言えないのであった。

 危ない危ない。サッカーは人を惑わす。サッカーは私を惑わす。しばらく頭を冷やそうと試合会場を離れ、ランニングに向かった。

 すべての試合が終わり、私と娘は自転車に乗って家路へつく。私は浦和レッズの試合があるため、猛烈なスピードで自転車を漕いでいたのだが、足腰が強くなった娘も余裕な姿でそれについてきた。

「パパさ、サッカーで雨でもやるんだね」
 この日は雨が降ったり止んだりで、結局中止にすることもなく、試合が行われたのであった。

「そうだよ雪でもやるんだよ。昔トヨタカップっていう世界一のクラブチームを決める大会があって、それが大雪でさ。ウルグアイって暖かい国ところにあるチームの選手は雪を見たのも初めてビックリしてたんだよ」
「そのチームどうしたの?」
「負けちゃった」

 自転車を漕ぎながらこの日の試合の娘の姿を思い出す。
 ぶかぶかのオレンジ色のユニフォームを靡かせて、味方が攻めてるときには果敢にオーバーラップをし、ピンチとなると必死に戻っていたではないか。ボールが来なかっただけで、彼女は彼女なりに雨にも負けず頑張っていたのだ。

 真っ黒に日焼けしたその姿は、この日の浦和レッズの選手よりもずーっと格好良かった。いや浦和レッズの選手たちも今、娘同様に成長している真っ最中なのだろう。待っているぞ! 浦和レッズ!!

« 前のページ | 次のページ »