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10月20日(火)

 朝イチで妻は蓄膿症の手術に立ち向かうわけだが、私はその頃、息子の弁当づくりに追われていた。人様に弁当を作るのは初めてなので、何かしら工夫がしたい。弁当といえば海苔で絵を書いたりするよなとはさみでチョキチョキ。両津勘吉弁当の出来上がり。

 無事ふたりの子どもを送り出し、会社へ急ぐ。

 いつものように営業していたのだが、突然、朝日新聞出版社のPR誌『一冊の本』で内澤旬子さんが書かれている「身体のいいなり」を思い出す。この連載は身体の弱かった内澤さんが、病気遍歴を綴っているのだが、そのなかで確か乳がんを患ったときに、今まで何もしてくれなかった旦那さんを思い出すのだ。

 その文章を読んだとき私はビカーンと雷に打たれた気がしたのである。なぜなら私がその一節を読むまで頑に信じていた「女のポイントは貯蓄性じゃない理論」は良い面に関してだけで、恨みや悪い面は一生覚えているものなのだと気付いたからである。そして何らかの拍子にすべて思い出すのであるという、まさに「怒り貯蓄式確率変動理論」である。いい面はすべて水に流され、悪い面だけ覚えているなぞ、恐ろしすぎるではないか。

 というわけで恐らく手術後で不安いっぱいであろう妻の病院へ慌てて駆けつけたのであるが、時すでに遅し。

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