12月10日(木)
- 『仮面の女と愛の輪廻』
- 虫明 亜呂無
- 清流出版
- 2,592円(税込)
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- >> HonyaClub.com
- >> エルパカBOOKS
- 『徳川夢声の小説と漫談これ一冊で』
- 徳川 夢声
- 清流出版
- 2,592円(税込)
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- >> エルパカBOOKS
- 『人情馬鹿物語』
- 川口 松太郎
- 論創社
- 2,160円(税込)
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やっと意識が回復した。土曜日、 ステレオフォニックスの新譜『Keep Calm and Carry On』を聴きながら埼玉スタジアムに向かったのは覚えているのだが、その後、記憶喪失に陥っていたのだ。
この週末いったい何があったんだろうか。
『本の雑誌』1月特大号が出来たので、年末の挨拶もかねて浜本とともにお茶の水の茗渓堂さんへ直納。店長の坂本さんとしばしお話。ちょうど昼時だったので、どこかでメシを食っていくかとなり、最初に向かったのは讃岐うどんの人気店・丸香。しかし13時を過ぎてもお店の前に行列が出来ておりあきらめる。じゃあということで、私が前の会社に勤めていた頃、よく行っていた菊水へ。久しぶりのひじきメシを堪能する。
その後、ここまで来たならばと古本屋さんの新日本書籍を訪問し、かつて四谷のB書店にいらっしゃったSさんを訪問。浜本とは20年ぶりぐらいの再会で、思い出話に花を咲かせるのかと思いきや、浜本は自分が持っているサンリオ文庫やその他の本が今いくらぐらいで売れるのか真剣に聞き入っていた。しかし文庫1冊で6万円って!!!
浜本と神保町で別れた後、銀座を営業。
思い起こせば一年前、「本の雑誌」で椎名編集長が窮状を訴えたのであるが、そのとき一番に「『本の雑誌』をなくしてなるものか!」と応援フェアの協力を申し出てくれたのが、三越の正面にある老舗の書店・教文館さんなのであった。
担当のYさんに「おかげさまで一年もちました」と報告をすると、とても嬉しそうに笑ってくださる。
★ ★ ★
思えばこの一年いろんなことを教わった。
会社の状態を知ってまず私の頭に浮かんだのは家族であった。私にとって仕事とは、家族を養う手段なのであるが、その家族を私のわがままで苦しめてはいけない。家族のためには、ここで零細出版社から身を引き、もっと安定した職業に転職するのが一番かと思った。
悶々と悩みながら実家に帰った際に、母親にふとこぼすと、母親は表情を変え、大きな声を上げた。
「それが男のすることか? 私はそんな子に育てた覚えはないよ。浦和レッズがJ2に降格したときの岡野雅行を思い出しなさいよ。小野伸二や山田暢久に電話して、移籍するな、一年でJ1に復帰させようってみんなを説得したんでしょうが。わたしはああいう男が好きだ。いやあれが男だ。男がすたるようなことをするならもう家の敷居はまたがせない」
父親は何も言わなかったが、母親がその気持を代弁した。
「本当に困ったらお父さんに相談しなさい」
その言葉の向こうには小さな頃感じていた父親の大きくて厚い手のひらがあった。
そして、しばらくして兄貴からはこんなメールが届いた。
「大丈夫、どんな決断をしても必ず上手くいく。
心配するな。
腹を決めれば、怖いものなんて何もない。
家族が元気であれば、あとはおまけみたいなもんだ!
もう一度言う。
絶対、大丈夫だ。
心を静かにして、深呼吸して、行くべき道を決めればいい。
どちらを選んでも、自分で決めた決断なら、必ず上手くいく。
心配するな。」
これがプライド・オブ・スギエなんだろう。
そして私は目が覚めた。
私にはまだ「本の雑誌」でやりたいことややり残したことがたくさんあった。母親の言うとおりここで逃げたら一生後悔するだろう。今までの負け犬人生くそ食らえ。いや今は負けを認めて、ここから頑張ればいいじゃないか。
そう思ったら後はやるだけだった。
あれから一年が過ぎたのである。
おかげさまで「本の雑誌」はどうにか持ちこたえ、無事、年を越せそうである。
応援してくれた読者、著者、執筆者、書店、出版社、取次、企業の方々には、もう感謝の言葉以外ない。本当に一年間ありがとうございました。
私たちにできることは、浜本が去年の今頃、社員に向かって言った言葉に尽きる。
「俺たちは雑誌や本を作ることしか出来ない。とにかくみんなで頑張って面白い雑誌、面白い本を作っていこう」
★ ★ ★
教文館書店さんではこんな本が売れているそうだ。
『仮面の女と愛の輪廻』虫明亜呂無(清流出版)
『徳川夢声の小説と漫談これ一冊で』徳川夢声(清流出版)
『人情馬鹿物語』川口松太郎(論創社)
この週末いったい何があったんだろうか。
『本の雑誌』1月特大号が出来たので、年末の挨拶もかねて浜本とともにお茶の水の茗渓堂さんへ直納。店長の坂本さんとしばしお話。ちょうど昼時だったので、どこかでメシを食っていくかとなり、最初に向かったのは讃岐うどんの人気店・丸香。しかし13時を過ぎてもお店の前に行列が出来ておりあきらめる。じゃあということで、私が前の会社に勤めていた頃、よく行っていた菊水へ。久しぶりのひじきメシを堪能する。
その後、ここまで来たならばと古本屋さんの新日本書籍を訪問し、かつて四谷のB書店にいらっしゃったSさんを訪問。浜本とは20年ぶりぐらいの再会で、思い出話に花を咲かせるのかと思いきや、浜本は自分が持っているサンリオ文庫やその他の本が今いくらぐらいで売れるのか真剣に聞き入っていた。しかし文庫1冊で6万円って!!!
浜本と神保町で別れた後、銀座を営業。
思い起こせば一年前、「本の雑誌」で椎名編集長が窮状を訴えたのであるが、そのとき一番に「『本の雑誌』をなくしてなるものか!」と応援フェアの協力を申し出てくれたのが、三越の正面にある老舗の書店・教文館さんなのであった。
担当のYさんに「おかげさまで一年もちました」と報告をすると、とても嬉しそうに笑ってくださる。
★ ★ ★
思えばこの一年いろんなことを教わった。
会社の状態を知ってまず私の頭に浮かんだのは家族であった。私にとって仕事とは、家族を養う手段なのであるが、その家族を私のわがままで苦しめてはいけない。家族のためには、ここで零細出版社から身を引き、もっと安定した職業に転職するのが一番かと思った。
悶々と悩みながら実家に帰った際に、母親にふとこぼすと、母親は表情を変え、大きな声を上げた。
「それが男のすることか? 私はそんな子に育てた覚えはないよ。浦和レッズがJ2に降格したときの岡野雅行を思い出しなさいよ。小野伸二や山田暢久に電話して、移籍するな、一年でJ1に復帰させようってみんなを説得したんでしょうが。わたしはああいう男が好きだ。いやあれが男だ。男がすたるようなことをするならもう家の敷居はまたがせない」
父親は何も言わなかったが、母親がその気持を代弁した。
「本当に困ったらお父さんに相談しなさい」
その言葉の向こうには小さな頃感じていた父親の大きくて厚い手のひらがあった。
そして、しばらくして兄貴からはこんなメールが届いた。
「大丈夫、どんな決断をしても必ず上手くいく。
心配するな。
腹を決めれば、怖いものなんて何もない。
家族が元気であれば、あとはおまけみたいなもんだ!
もう一度言う。
絶対、大丈夫だ。
心を静かにして、深呼吸して、行くべき道を決めればいい。
どちらを選んでも、自分で決めた決断なら、必ず上手くいく。
心配するな。」
これがプライド・オブ・スギエなんだろう。
そして私は目が覚めた。
私にはまだ「本の雑誌」でやりたいことややり残したことがたくさんあった。母親の言うとおりここで逃げたら一生後悔するだろう。今までの負け犬人生くそ食らえ。いや今は負けを認めて、ここから頑張ればいいじゃないか。
そう思ったら後はやるだけだった。
あれから一年が過ぎたのである。
おかげさまで「本の雑誌」はどうにか持ちこたえ、無事、年を越せそうである。
応援してくれた読者、著者、執筆者、書店、出版社、取次、企業の方々には、もう感謝の言葉以外ない。本当に一年間ありがとうございました。
私たちにできることは、浜本が去年の今頃、社員に向かって言った言葉に尽きる。
「俺たちは雑誌や本を作ることしか出来ない。とにかくみんなで頑張って面白い雑誌、面白い本を作っていこう」
★ ★ ★
教文館書店さんではこんな本が売れているそうだ。
『仮面の女と愛の輪廻』虫明亜呂無(清流出版)
『徳川夢声の小説と漫談これ一冊で』徳川夢声(清流出版)
『人情馬鹿物語』川口松太郎(論創社)