« 前のページ | 次のページ »

12月28日(月)

 履歴書の趣味欄に書き込みたいほど私は大掃除が大好きだ。
 特に照明器具と換気扇、網戸洗いは誰にも手出しをさせないほど夢中になる。思うに一年溜まった汚れがすっきり落ちて行く様子に心が奪われているのである。

12月に入ると週末の予定を立てる。網戸と照明器具は外で洗うため天気が良くないといけない。換気扇は天候に左右されずに洗浄できるのでいつもでいいのだが、年末まで引っ張ると正月料理を作る妻に邪魔にされるので、なるべく早く片付けたい。というわけで、1週目に換気扇、2週目に換気扇およびワックルがけ、そしてこの週末網戸洗いに精を出したのであった。

 家中の網戸を外し、ガレージに並べる。一番大変なのは天窓についた網戸なのであるが、こいつが一番汚れており、だからこそ私の心を一番ドキドキさせてくれる存在なので、洗わないわけにはいかない。3メートルのハシゴをテーブルの上から立てかけ、妻にハシゴを持ってもらい私は上と登っていく。

 毎年のことだが、この瞬間、一年の行いが走馬灯のように蘇る。主に家庭生活についてであり、もし妻がそのことを一年間根に持っていたらどうなるのか。もしやハシゴをちょいと動かして私を転落させるのではないかと心配になるのだ。その証拠に、一番上まで登ったところで下を見ると、妻が「ふふふ」と笑っているのである。あんたの人生は今私の手の中にあるのよ、そうつぶやいているように見える。しかもその回りでうろうろしている息子が、僕も手伝うとか騒ぎ、ハシゴに手をかけようとしているではないか。息子のせいにして私をたたき落とす気なのだろう。ああ。

 妻の判断は、来年も私を生き延びさせるほうに決まったようで、無事天窓の網戸を外すことができ、あとはホースとタワシで洗うだけである。無我の境地という言葉があるが、約1時間、まったく何も考えずに洗い続けると、網戸はピカピカになった。あとは乾かして設置するだけなのであるが、年々段取りが良くなるので、午前中の、それも早い時間に終わってしまったではないか。なんだか物足りないのである。

 そこで近所を徘徊してみると、息子がいつも遊んでもらっているサイトーさん家の網戸が特に汚れているように見えた。運良くサイトーさんの旦那さんが窓を拭いていたので「お宅の網戸を洗いますよ」と手に持ったタワシを掲げると、それならこれをとサイトーさん家の子ども二人を差し出され、「大掃除で邪魔なので預かってください」とのことであった。


★     ★     ★

 2009年は恐ろしいほど本が売れない年だったと思う。特に夏ごろから書店さんの悲鳴が大きくなり、11月は「聞いてくれるな」状態、そして期待の12月も低空飛行のままで、出版業界だけ一足先に2番底へ突入してしまったかのようだ。大手出版社の赤字決算、大日本印刷グループによる数々の買収、多くの雑誌の休刊など、まさに「終わりの始まり」の年だったと後に語られることになるだろう。この先どこへ行くのはまったく予想が付かないし、正直言って、出版業界で働いていることに不安を感じない日はない。

 でもと、私は考えるのである。
 まだ、あるんじゃないか。

 面白い本を作る方法が。
 そしてその本を売る方法が。

 あきらめるにはまだ早い気がするのだ。

★     ★    ★

 2010年も、頑張って「本の雑誌」および単行本を作って参ります。
 応援よろしくお願いします。
 ありがとうございました。

« 前のページ | 次のページ »