1月9日(土)
ファンによる、ファンのための高野秀行講演会へ本を売りに行く。
以前医学書出版社に勤めていた頃、週末は学会等に本を持ち込み展示販売をしょっちゅうしていたので、机に本を並べて出店のように本を売るのが大好きなのである。
幹事の方から「濃い高野ファンの集まりだからみんな全部持っていて売れないかも」と心配されたのであるが、濃いファンはサイン本保存用にもう1冊買ってくれたりしてびっくりしたのである。
二次会にもまぜていただくと、美しい女性が「本の雑誌社の杉江さんですよね、この本復刊してください」と1冊の本と小指を差し出してくるではないか。その本とは、高野ファンの間で幻と言われている『アマゾンの船旅』ダイヤモンド社であった。これは「地球の歩き方」の執筆を依頼された高野さんが、気づいたら情報原稿でなく旅エッセイを書いてしまい、そのためにまた別のシリーズを立ち上げ出版された経緯のある本なのである。後に文章の部分は『巨流アマゾンを遡れ』(集英社文庫)となるのであるが、写真満載のこの単行本はまた違った印象を残す、素晴らしい本であった。
もちろん私も持っておらず、できることなら酔った勢いで盗んで帰ろうかと思ったが、女性は私の目をじっと見て「復刊してください」と相変わらず小指を差し出しているではないか。その向こうでムハハハと笑っている高野さんがおり、これはどうも刺客のようであった。私はじっと女性の小指を見つめつつ、頭のなかでソロバンを弾いていた。
以前医学書出版社に勤めていた頃、週末は学会等に本を持ち込み展示販売をしょっちゅうしていたので、机に本を並べて出店のように本を売るのが大好きなのである。
幹事の方から「濃い高野ファンの集まりだからみんな全部持っていて売れないかも」と心配されたのであるが、濃いファンはサイン本保存用にもう1冊買ってくれたりしてびっくりしたのである。
二次会にもまぜていただくと、美しい女性が「本の雑誌社の杉江さんですよね、この本復刊してください」と1冊の本と小指を差し出してくるではないか。その本とは、高野ファンの間で幻と言われている『アマゾンの船旅』ダイヤモンド社であった。これは「地球の歩き方」の執筆を依頼された高野さんが、気づいたら情報原稿でなく旅エッセイを書いてしまい、そのためにまた別のシリーズを立ち上げ出版された経緯のある本なのである。後に文章の部分は『巨流アマゾンを遡れ』(集英社文庫)となるのであるが、写真満載のこの単行本はまた違った印象を残す、素晴らしい本であった。
もちろん私も持っておらず、できることなら酔った勢いで盗んで帰ろうかと思ったが、女性は私の目をじっと見て「復刊してください」と相変わらず小指を差し出しているではないか。その向こうでムハハハと笑っている高野さんがおり、これはどうも刺客のようであった。私はじっと女性の小指を見つめつつ、頭のなかでソロバンを弾いていた。