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1月15日(金)

 営業は中央線の続き。
 なかなか終わらないのである。

 たとえば吉祥寺......。私が営業で訪問しているのは3軒。そんなの半日あれば終わるだろうとふつうの人は思うだろうが、そう簡単に行かないのがアポなし営業である。

 A書店のAさんは食事中、その間にB書店を訪問するとお休み、じゃあとC書店へ向かうとこちらは現在会議中なんてことがしょっちゅうある。振り出しに戻ってA書店に伺うと、レジの時間だったりしたら、もうオシマイだ。私には上司がいないからいいけれど、きちんとした会社であれば報告書にどう書くか悩んでしまうだろう。

 ならばアポ取りすればいいじゃないかと思われるだろうが、おそらく電話をしたら「いいよ、いいよ、忙しいでしょう。注文は10冊ね」なんて電話で終わってしまう。

 楽ではないか。そう思ったあなたは営業に向いていない。なぜなら注文を取るだけが営業の仕事ではないのである。書店さんの棚を見て感じる何かがとても大切なのだ。ハッキリいって売上データなんていう情報はすべて過去の産物であって、これからのことはどこにも書いていないのである。それは書店の棚にあるのである。

 長い言い訳になってしまったが、なかなか営業が捗らない。そこで別の駅へ移動すると、てっきり教科書販売に追われている頃かと考えていた店長さんが売り場におり、そのままお茶へ誘っていただく。♪幸せは歩いてこない だから歩いていくんだね

 本屋さんや出版業界の現状を事細かに教わりつつ、ずーっと不思議に思っていた質問を投げかけてみる。

「本が売れなくなってもどうしてこう暇にならないんですかね。暇になるどころか忙しさは増してますよね」
「出版社はまあ1点の売上が下がれば出版点数で稼ぐってことだからそれはアイテム数が増えて忙しくなるよね。書店はさ、売れているときは例えば5冊入ってきて4冊売れたとするでしょう。まあ追加注文するならす別だけど、そうじゃないなら残った1冊を棚に差して、新刊で入ってきた別の本を平積みすればいいの。でもさ、今みたいに売れないと、新しい本が入ってきても返品をしないと積む場所がない。その返品が難しいんだよね。明日売れるかもしれないわけだから。だから過去のデータをみたり、いろんなことを考えて棚から抜き取るのに時間と手間がかかって結局忙しくなっちゃう。まあ、人手が減っているというのが大きいけど」

 そういえば別の書店員さんが言っていたっけ。
「書店っていうのは入荷には意思はないけど、返品には意思があるんだよ」

 店長さんとの長話は、「結局、僕たちが願うのはとにかく出版社にいい本、売れる本を作って欲しいってことに尽きるんだけど」で終わったのだった。

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