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2月2日(火)

愛は苦手
『愛は苦手』
山本 幸久
新潮社
1,512円(税込)
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 当日記で一番取り上げている作家は誰かと言うと、おそらく山本幸久なのではないか。新作が出ればすべて読み、ほとんどこの日記で紹介してきたように思う。しかしなかなかプレイクしないのが歯がゆいのであるが、なんとなくその理由も分からないわけでもなく、逆に山本幸久にも歯がゆい思いを持って見つめていたのである。

 そんなところに新作『愛は苦手』(新潮社)が出た。帯には「"アラフォー"って自分では笑えるけど、他人にそう呼ばれると、なぜか嫌。 20代はみんな私に優しくて、30代は大丈夫と思ってて。でも気づいたら前にすすめないよ...。愛についてふと考える彼女たち──連作短編集」とあり、裏面には「ラブとピースは、どこなのよ〜!! この説明は読者の年齢・性別を限定するものではありません。愛は時々わからなくなりますので注意しましょう。」とあるから、いつもの、著者紹介にあるような「軽妙な文章と物語」の作品なのかと思って読み出したのである。

 ところがである。もちろんそういう部分は今までどおりあるのだが、この短編集の山本幸久は明らかに変わりだしたと思う。どんな変化かというと、今まで山本幸久の手のひらの上で転がされてきた"小説"が、ついにこぼれ出し、本気で"小説"と格闘しだしているのである。あるいは、今までの山本幸久は上手さが目につき、仏を彫って魂入れずな感じがどこかにあったのだが、この『愛は苦手』にはしっかり芯があるのだ。

 30代後半から40代にかけて、このままでも暮らしていけるがそれでいいのか、10代、20代の頃に考えていた人生と今生きている人生の違いのなかで、今の自分を肯定していいのか、否定して何か始めた方がいいのか、そういうものがしっかり描かれているのである。

 できることなら、私は、この方向性の長編を読みたい。そしてその先には、角田光代や山本文緒の背中が見えるのである。それはもうすぐそこだ。頑張れ! 山本幸久。

 ところで帯に「連作短編」とあるが、どこが連作なんだろうか。

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