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6月22日(火)

社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年
『社長・溝畑宏の天国と地獄 ~大分トリニータの15年』
木村 元彦
集英社
1,296円(税込)
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蒼煌 (文春文庫)
『蒼煌 (文春文庫)』
黒川 博行
文藝春秋
679円(税込)
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 通勤読書は、『オシムの言葉』や『誇り』などを書いた木村元彦氏が綴った溝畑宏を中心とした大分トリニータのルポ『社長・溝畑宏の天国と地獄』(集英社)。

 ハコモノ行政と同様に官が主体となってサッカーチームを作るとどうなるのか。あるいは多くの人間を狂わすサッカーの恐ろしさと魑魅魍魎とした人間社会の物語とでも言えばいいのか。

 美術に狂った人間たちを描いた小説『蒼煌』黒川博行(文春文庫)に相通じるものを感じたが、『浦和レッズの幸福』大住良之(アスペクト)とはまったく正反対の本かもしれない。

 埼玉を営業。
 会えたり会えなかったりしつつ、とある書店員さんから「一生懸命やっているんですが、なかなか同僚や上司から認めてもらえなくて」とこぼされる。

 なーに、私なんか本の雑誌社に入って13年、誉められたのは第1回本屋大賞の発表会のときに、思わず浜本が「お前よくやった」と口を滑らせてしまったときだけだ。

 もちろん誰かに認められたい、という思いは人間誰にでもあるだろうが、それが社内の人である必要はないのである。外に出れば会社の人間関係とはまったく違う「社会」があり、そこできちんと評価してくれる人がいるはずなのだ。

 そういえば先日別の失業中だった元書店員さんと会い、その方はちょうどその日出版社への就職が決まったと喜んでいたのだが、私が彼が失業していたとき贈った言葉は、「それぞれのお店や会社で考えると不安になるけど、出版業界という大きな会社に入ったと思えば安心できるでしょう。」という言葉であった。

 それは以前「本の雑誌休刊騒動」で落ち込んでいた私に向かって、とある書店の店長さんがかけて言葉の受け売りなのだが、その店長さんは、私が知っている限り書店を3軒、出版社を1社渡り歩いた出版流浪組のひとりである。

 そんな方が年齢も関係なく、それもステップアップするかのように転職してこれたのは、まさに出版業界という大きな会社に身を埋め、どこでも真剣に本気で仕事をしてきたから何かがあるとそれまでの仕事を認め、声をかけれくる人がいたからだろう。

 その言葉を聞いたとき私はどんな状況に陥ってもとにかく本のために頑張ろうと思ったのだった。

 裏切る人もいるし、自分が誰かを裏切ることもあるかもしれない。
 でもたぶん誰か見ていてくれる、私はそう信じて今日も歩いている。

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