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7月8日(木)

人もいない春
『人もいない春』
西村 賢太
角川書店(角川グループパブリッシング)
1,728円(税込)
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どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)
『どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)』
西村 賢太
講談社
566円(税込)
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瘡瘢旅行
『瘡瘢旅行』
西村 賢太
講談社
1,575円(税込)
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「杉江さんの大好きな西村賢太の新作が出ましたよ!」と何軒かの書店さんで声をかけられたのだが、その西村賢太は新作『人もいない春』(角川書店)の帯に書かれているとおり<破滅型私小説>作家で、せっかく手にした彼女に対しても、些細なことをきっかけにぶち切れ、暴力をふるってしまったりするのだから大変な人なのだ。

 確かに私はそんな西村賢太が大好きで、おすすめ文庫王国の1位に『どうで死ぬ身の一踊り』(講談社文庫)を熱烈推薦したし、『本の雑誌』8月号ではオールタイムベストテンの原稿を依頼し、また新作も書店員さんに言われる前に、台車に積んであるのを発見し、一声かけて購入していたのであるが、むむむ、そんな大きな声で言わないで欲しい。なんだか私も破滅型のようではないか。

 しかし『人もいない春』を読んで気づいたのだが、前作『瘡瘢旅行』(講談社)あたりからその破滅が柔らかくなり、爆発一歩手前、あるいは暴力までは及ばずにどこかふと止まるようになっているのだ。歩いは狙っていないと思うが、読んでいるほうは思わず笑ってしまう部分も少なくなく、この変化はいったいどうしたのだろうか。また本人も「気に入っている」とあとがきで書かれているの表題作の「人もいない春」の、この地べたから湧き出す希望は何なんだろうか。

 やっぱり私は西村賢太が大好きなのである。

 国際ブックフェアが開幕したので覗きに行きたいのだが、時間が取れず。

 そんな夜、いつも私の営業を心配してくれているK書店のHさんから、上京されている書店員さんを紹介しますからと、飲み会に誘われる。

 向った先は月島のもんじゃ焼き屋さんで、そこには京都のO書店Yさんはじめ、各店の店長さんがいらっしゃる。あわてていつも訪問出来ずにいることを謝りつつ名刺交換。こんなことだから「出版業界のレアキャラ」と言われてしまうのだ。

 もんじゃ焼きをヘラヘラしつつ、話題にあがるのはやはり電子書籍。本日のブックフェアでも混雑していたのはそちら関係ばかりだったそうだ。

 それにしても月島。ここに来たのは20年ぶりぐらいなのだが、もんじゃ焼き屋が異様に増えているではないか。その立ち並ぶ看板を見ながら、出版もこうなればいいんじゃないと思ったりしつつ、終電で帰宅。

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