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8月30日(月)

キムラ弁護士、小説と闘う
『キムラ弁護士、小説と闘う』
木村 晋介
本の雑誌社
1,728円(税込)
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 誰よりも早く出社して、まず最初にするのは冷房のスイッチを入れて、「急」「26度」に設定することだ。その後は、お湯を沸かし、コーヒーを入れている間に、みんなの机を雑巾がけをする。

 その頃にはゴボゴボとコーヒーが入り、おもむろにコピー機併用のFAXを確認する。注文書、返品了解書、校正の戻しなど月曜日は結構な山になっている。それを分類していると妙に『キムラ弁護士、小説と闘う』の注文が多いことに気づく。なんだろう。

 その後はパソコンに向かってメールチェック。朝イチでメールを読むなというビジネス書があったけれど、朝しか机に向かえない私は、朝メールをチェックするしかない。

 メールで届く取次店からの注文にも『キムラ弁護士、小説と闘う』が二桁注文で入っており、これは何かがおかしいと、あわててamazonの販売データを確認する。すると、おお! なんじゃこりゃという数のお客さんからの注文が入っており、ひっくり返る。

 そうこうしていると事務の浜田が出社し、そして書店さんからの電話の注文も入りだす。みんな『キムラ弁護士、小説と闘う』の注文だ。

 なんだなんだ何があったんだ!? と騒いでいると、浜田がどこかから調べてきたのか昨日の「読売新聞」で紹介されたらしいと報告してくる。

 毎日曜日の午後、近所の図書館に行って、子どもの本を借りるついでに各紙の書評欄をチェックしているのだが、昨日は午後にサッカーの練習があり、図書館に行けなかったのだ。あわてて、会社の近くの図書館に浜田を向かわせ、コピーしてきてもらう。

「本のソムリエ」という読書相談のコーナーで、嵐山光三郎さんが「学生時代のようにとびっきり夢中になれる本を紹介してください」という質問に、『キムラ弁護士、小説と闘う』がいいでしょうと回答しているのであった。

 いやはやありがとうございました。
 重版した『活字と自活』といい、改めて新聞の影響力を思い知る。

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 しかしこうなってみると「営業」とはいったいなんだろうか。

 売れるときはこうやって勝手に売れていき、私はまったく苦労せず電話を取ったり注文の差配をしていればいいのである。今日一日、いやこの何週間か暑い中外を歩いて注文をとった数をたった一日で売り上げてしまうだろう。

 ならば売れないときこそ営業の力を、とはいうものの、売れないもんはどうしたって売れないし、なんだか売れてうれしい反面、自分の無力さを痛切に感じた一日なのであった。

 出版社はもしかしたら営業に力を入れるより、広報に力を入れたほうがいいのではなかろうか。その辺で成功しているのが、実は今元気がある出版社といわれているミシマ社なのではないかと私は考えている。

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