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9月8日(水)

本の雑誌 328号
『本の雑誌 328号』
本の雑誌社
700円(税込)
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月の下のカウンター
『月の下のカウンター』
太田 和彦
本の雑誌社
1,620円(税込)
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東南アジア四次元日記 (幻冬舎文庫)
『東南アジア四次元日記 (幻冬舎文庫)』
宮田 珠己
幻冬舎
700円(税込)
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 もはや呪われているとしか考えられない「本の雑誌」搬入日雨問題。
 ここずーっと雨雲どころか雲ひとつない灼熱の東京だったのに、「本の雑誌」10月号搬入日の本日は台風接近による大雨。カッパを着ながら雑誌を濡らさぬよう運んでいる事務の浜田に、「久しぶりの雨だけど前回降ったのって......」と訊ねると、「『本の雑誌』9月号の搬入日です」との答え。雨乞いのお供え物として「本の雑誌」を売りだしてはどうか。

 その雨のなか完全防備で『月の下のカウンター』の見本を持って、著者の太田和彦さんの事務所へ向かう。他の編集者はどうなのかわからないが、私にとって見本を著者に渡す瞬間はまるで通信簿をもらう生徒のような気分だ。

 著者とはゲラを介して何度もやりとりをしているし、カバーデザインも見てもらいOKいただいているにも関わらず、本という"もの"になった瞬間の評価はまったく違うものになってしまうのはなぜなんだろうか。

 おそらく良い材木を集めただけでは、いい家にならないのと一緒で、いい家を作るためにはいい家の具体的なイメージをもち、そこに必要な素材を集めていかなければならないのだろう。

 袋から『月の下のカウンター』を出し、太田さんにお渡しすると、しばしの沈黙が事務所を包む。胃が痛くなるような瞬間なのだが、太田さんはじっくりと本を見、ページを捲る。デザイナーである太田さんは、"もの"としての本に一段とこだわりのある人だ。

 その太田さんが、本をテーブルに置き、居住まいを正される。
「ほんとうに素晴らしい本を作っていただきありがとうございました」

 その言葉を聞いた瞬間の私の気持ちを言葉にすることはできない。
 ただひとつ思ったのは、編集者としては今がゴールだが、営業としてはこれからがスタートだということだ。いつまでも歓びに満足している場合ではない。

 というわけで、雨のなか営業。

 夜、幻冬舎の編集者Sさんと宮田珠己さんと食事。解説を書かせていただいた『東南アジア四次元日記』(幻冬舎文庫)が、二次文庫とは思えぬ売れ行きを示しているそうで、そのお祝いと『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)5万部突破記念。

 エッセイで5万部!と驚く私の隣で、「全然実感がわかないし、生活も......」と嘆く宮田珠己さん。いったいどうしたら宮田さんに満面の笑みをプレゼントできるのか。書いた小説が100万部?!

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