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12月22日(水)

身体のいいなり
『身体のいいなり』
内澤 旬子
朝日新聞出版
1,404円(税込)
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 誰も読んでいないのかと思っていたが、そこかしこからきちんと更新するようと叱られてしまう。ありがたいような、そうでないような年末だ。

「『1Q84 BOOK3』 村上春樹(新潮社)以外何もヒットのなかった年ですね」なんて文芸書の担当者さんとしていたのは、12月14日までのことであった。

『KAGEROU』齋藤智裕(ポプラ社) のあの狂気としかいいようのない売れ方には度肝を抜かれてしまった。部数もさることながら、並べられている新刊台の人だかり、中も確かめずに手に取りレジに直交する姿、まるで昔のゲームソフト「ドラクエ」の発売か、OSソフト「Windows」の発売日のようであった。こんな風に売れる本があるのか、いや以前はこうやって本が売れていたのだと、お客さんの密度の濃い店内で呆然と立ち尽くしてしまった。

 そうしてあることに気づく。

 つい営業で私は「この本、面白いんですよ」と自社本を売り込んでしまったり、あるいは本を作るときに面白い本を作ろうと考えてしまうのだが、実は商品として大切なのは、面白いかどうかではなく、「面白<そう>」に見えるかなのだった。

 それは当然といえばあまりに当然で、お客さんは、すべての本を読んだ上で面白かったから購入するのではなく、面白<そう>に感じたから買うのであった。

 出版社の仕事とはまさにその<そう>の部分であり、電子書籍にできないのも、その<そう>の部分なのかもしれず、それこそがパッケージ文化というものなんだと思う。

 それにしてもこんなに簡単に人は本を買うのか......とあの白に青の十字の表紙をみて思うのであった。

 夜、闘病記というよりは、迫力満点の自叙伝『身体のいいなり』(朝日新聞出版)を出版した内澤旬子さんを中心に、高野秀行さん、宮田珠己さんとエンタメノンフ文芸部の忘年会。新宿・陶玄房。

 小説を書くために発足された文芸部なのだが、今年はほとんど活動はなく、まあそれでも宮田さんはWebマガジン幻冬舎で「カミシンデン奇譚」が始まったり、高野さんは来年には長編を発表するようで、じわじわと厚き小説の壁を突き崩しているのだろう。私には書くべき小説がないのだが......。

 これにて、2010年の忘年会はすべて終了。

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