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1月27日(木)

 昨日、営業から会社に戻ると、編集の松村がコートを来て首にマフラーを巻いていた。
「もう帰るのか」と思ったが、その格好で机に座り、相変わらず仕事を続けている。
 そういえば、昔、うちの会社には一年中、首にタオルを巻いて、スウェット姿でふらふらしている人が、今はもうみんな普通の格好で働く普通の会社だ。

「どうした? 松村」と訊ねると「寒い」という。
 たしかに今は季節が冬で、特に今年は寒い気がするが、それにしたってここは会社の中である。先ほどまで寒風吹きすさぶ外にいた私からみたら天国であり、それじゃなくたって空調は28度に調整され、心地良い風を吹きつけているのだ。いくら氷結と異名を持つ、冷たい女松村でも異常なのではなかろうか。

「それ、熱があるんじゃない? インフルエンザだよ」
「いえ、そんなことないです。花粉症かも......」

 今朝、松村から連絡が入る。
「や、やっぱりインフルエンザでした」

 というわけで医者から1週間休むよう宣告された松村の仕事をみんなで振り分けていると、再度松村から連絡があり、なんと旦那さんの会社は家庭で誰かがインフルエンザにかかったら出社できないらしく、家に帰ってきたという。

「本の雑誌の人、大丈夫ですかね......」

 その瞬間、大きな声で「みんな、帰ろう」とうれしそうに叫んだのは編集発行人の浜本であった。
 「それ逆でしょう!」と思い切り突っ込んだのは、事務の浜田だった。

 そうか、私たちは家に帰ってはいけないのだ。家庭にインフルエンザを持ち込む可能性が高い。
 
「今夜は鍋でもしますかね」とキッチンに置いてあった日本酒を大事そうに抱えてきたのは、編集の宮里だった。

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