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5月16日(月)

笛吹川 (講談社文芸文庫)
『笛吹川 (講談社文芸文庫)』
深沢 七郎
講談社
1,512円(税込)
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 WEB白水社で連載している「蹴球暮らし」第7回「入団」を更新。

 通勤読書は、講談社文芸文庫で復刊された『笛吹川』深沢七郎。
 以前から気になっていて、まさに待望の復刊なのだが、予想を超えるあまりの素晴らしさに言葉を失う。
 これから「好きな小説は?」と訊かれたら、まず最初にこの『笛吹川』と答えるだろう。
 オールタイムベスト1!

 『笛吹川』は時代小説で描かれる賑やかな表舞台の裏側で暮らす、ある農民一家六代の暮らしを淡々と描いた作品であるが、そこにあるのは人間のいい面も悪い面も含めたむき出しの生と死だ。親方様の逆鱗にふれ殺されたり、笛吹川の反乱に逃げ惑ったり、子を身ごもらないことを悩んだり、まさに妬み、恨み、苦しみ、悲しみ、喜びなど生きる上でのすべての感情が、甲州弁で表現されている。

 解説で町田康氏が書かれているが、まさに「こんな小説を読んでしまって私はどうしたらいいのかわからず途方に暮れ」る小説だ。例え文庫で1400円しても圧倒的に安い!

 常磐線を営業。
 松戸のR書店さんで散々話をした後、「では」と挨拶をし背中を向けた瞬間、「浦和レッズ大変ですね」と心臓を突き刺すような一言をかけられる。そういえばここは松戸で、先日このお店のツイッターで、柏の連勝を喜ぶツイートがされていたのだ。

 ふと顔をあげると担当のTさんは、黄色いTシャツを着ているではないか。
 今まで本とロックと子どもの話しかしていなかったのだが、もしやと確認すると「北嶋がね」と言って、笑うのであった。あわててお店から退散す。

 この秋、私は平常心で過ごすことができるだろうか。
 今から心配だ。

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