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5月30日(月)

帰宅部ボーイズ
『帰宅部ボーイズ』
はらだ みずき
幻冬舎
1,404円(税込)
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 昨晩読みだした、はらだみずきの『帰宅部ボーイズ』(幻冬舎)があまりに面白く、久しぶりに出社をストップし、駅前のエクセルシオールカフェに飛び込んで、最後まで一気に読み進む。読み終えたときには涙が止まらず、慌ててハンカチで顔を覆ってしまった。

 これは、すごい小説だ。
 10代の、あの圧倒的な、無駄な時間ばかりに包まれ、どうしたらいいのかわからないまま、じれるような毎日を過ごした時を、巧みな表現力を駆使して描ききった傑作青春小説だ。主人公の中学生「僕」は、好きな部活に入れず、やる気を失って帰宅部になるのだが、おそらくここで語られるテーマは、帰宅部だろうが、部活に所属していようが関係ない。

 前日まで読んでいた『ラブオールプレー』小瀬木麻美(ポプラ文庫)には、高校のバトミントン部に所属する同級生の父親が「君たちの年頃には、無意識に時間を浪費してしまうものだ。その時の1秒1秒が、どれほど貴重だったか知るのは、普通は、ずっと後になってからのことだ」と話しているのだが、それは違うのだ。

 時間を浪費することこそが、貴重なのだ。
 バトミントンを必死にやるのも、帰宅部で友達とだらだら過ごすのも実はそう大差のないことで、何かを一生懸命やった者だけが手にするものもあろうが、何も一生懸命やらなかった者が手にすることもたくさんあるのだ。

 この『帰宅部ボーイズ』で、僕やその友達が手にしたものは、誰にも自慢できないものかもしれない。それでも彼らの青春が、とてつもなく光り輝いてみえる。傑作。

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 夜、とある書店さんと酒。
 ある程度、酒が回ったところで、書店の効率化についてで話題がヒートアップ。一緒に酒を飲んでいた方が、管理職、店長職、棚担当と立場が異なり、それぞれの意見が違いが面白い。

 ただこれから多くの書店が、一段と効率化の元、本部発注や取次のシステム導入など進んでいくのは間違いなく、そうしたなか出版社の営業マンの仕事も変わっていくであろうし(もうすでに変わっている)、また効率化からは零れ落ちてしまう小さな出版社がどのように生き残っていけばいいのだろうか。

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