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8月10日(水)

夜去り川
『夜去り川』
志水 辰夫
文藝春秋
1,749円(税込)
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 暑すぎる。
 7月半ばに涼しくなって思わず今年の夏はたいしたことないのではなんて油断したのがいけなかった。しかも本日は昼、夜と予定があり、その移動が東京、神奈川、千葉、埼玉と一都三県をまたぐ小旅行なみなのであった。

 Y書店の本部でIさんとお話。Iさんとは、Iさんが売り場にいた頃しょっちゅうお会いしていたのだが、本部に異動されてからはなかなか顔を見ることができずにいた。それもこれも本部営業を苦手とする私が悪いのだが、どうしても今月の新刊『三時のわたし』を大きく展開したく、アポイントを取ったのであった。やっとお会いできたIさんであるが、なんと来月には別部署に異動になるとかで痛恨の極み。

 夜は柏で、昔馴染みの書店員さんたちと酒。
 かれこれ10年以上の付き合いの人たちばかりで、まったく気兼ねなく、互いの仕事の状況や本や出版の話をできる、私にとってものすごく大切な場所だ。

 その思いは年々強くなるばかりで、なぜかというともはや書店さんを廻ってもこのようにゆっくり人間関係を築いていく時間はなく、ひとりの書店員さんの仕事量たるや10年前とまったく比べ物にならないほど増えているのであった。だから訪問しても数分会話できればいいもので、ほとんどがそこまでいたらず新刊の説明だけで終わってしまう。また書店員さんの、あるいは営業マンの退職も多い。

「むかしはよく出版社の営業さんとお茶を飲みにいったよね」
「今は考えられないよ」

 そんな会話がこの日の飲み会でも交わされていたが、本当に余裕というものがこの業界からなくなってきた気がする。そしてその傾向はこれから一段と強くなるだろう。どうやって人間関係を築いていけばいいのだろうか。ネットか。それとも人間関係なんて不要な世界に変わっていくのだろうか。

 夜遅く電車に揺られながら、『夜去り川』志水辰夫(文藝春秋)を読む。
 年に1作程度、志水辰夫の時代小説を読める幸せを噛み締めつつ、じっくり一文一文読み進める。

 夜になっても暑かった。

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