2月26日(月)
- 『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』
- 木村 元彦
- 集英社インターナショナル
- 1,620円(税込)
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昨日は、リブロ池袋コミュニティカレッジで行われた『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』の刊行を記念した木村元彦さんと高野秀行さんのトークイベントの司会をした。
私はものすごく気が小さく、神経質で、用意周到な男のものだから、事前に打ち合わせをしたかったのだが、編集者から詳細の連絡が届いたのは開催の4日前で、その時点で私はお二人の著作をほとんど読み直し、質問事項を100個くらい考えていたので、今更打ち合わせをしても仕方なかったのだが会ってみると編集者はサッカーバカで、すっかりトークイベントのことを忘れ、サッカー談義に明け暮れてしまった。
しかし私の緊張はイベントが近づくに従い日々高まり、眠れぬ夜が続く。こうなったらきちんとレジュメを作ろうと前日二人の著作を積み上げ、家族を居間から追い出し、パソコンに向かう。何度も悩みながら綴ったレジュメが出来上がったのは深夜のことだったが、実は私の家にはプリンターがなかった。慌ててUSBメモリーにデータを入れると、セブンイレブンに車を走らせる。人数分のコピーを終え、家に帰ると、やっと私に眠りが訪れた。それは三日ぶりの眠りだった。
トークイベント当日、1時間前の待ち合わせに時間通りやってきた高野秀行さんにさっそく苦心のレジュメを渡す。高野さんはつーっと目を通すと、私にレジュメを戻した。それは高野さん用に用意してきたものだったが、さすが早稲田大学の人である。8年通って卒業したはずだが、おそらく天才だから見ただけですべて暗記してしまうのだろう。
30分ほど高野さんとしゃべっていると木村元彦さんがやってくる。実は私、木村さんの大ファンなのであるけれどお会いするのはこの日が初めてで、慌てて名刺を差し出すと木村さんも笑顔で名刺を差し出した。その木村さんにも苦心のレジュメを渡すが、木村さんはじっと見た後丁寧に4つ折りにし、ポケットにしまわれた。
むむむ。もしかしてこの世界中を旅し、多くの人々を取材してきた二人の公用語は日本語ではなく英語だったのかもしれない。そうなると私の日本語すら覚つかないレジュメはまったく役に立たないではないか。
私は日々の営業で、マン・ツー・マンで話すのだって苦手な人間だ。それが偉大なるノンフィクション作家二人と50人近いお客さんである。レジュメも台本もなくそんなところに出ていけるわけはない。頼む、頼むから私が練った進行どおり進んでくれ......という願いは、リブロ池袋店のTさんが私達を会場に導き入れた瞬間に打ち砕けた。
木村さんと高野さんが一気にセルビアの話を爆発させたのだった。
嗚呼、私のレジュメでは、自己紹介から始まるはずだったのに......。
それから約2時間の出来事を私はまったく覚えていない。
ただし『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』は、全サッカーバカは読むべき一冊だ。日本サッカー協会の、Jリーグの狂った運営と、そしてそこに立ち向かった我那覇はじめドクター及び関係者の壮絶なノンフィクションである。そこには木村さんが描き続けてきた誇り高き人々のすべてが詰まっている。
そしてもっとも重要な役割を果たすのが我らが浦和レッズのチームドクターなのであった。クラブにほとんど誇りを感じられなくなってしまったレッズサポーターは、この本を読んで「We are Reds」と叫びたくなるだろう。
私はものすごく気が小さく、神経質で、用意周到な男のものだから、事前に打ち合わせをしたかったのだが、編集者から詳細の連絡が届いたのは開催の4日前で、その時点で私はお二人の著作をほとんど読み直し、質問事項を100個くらい考えていたので、今更打ち合わせをしても仕方なかったのだが会ってみると編集者はサッカーバカで、すっかりトークイベントのことを忘れ、サッカー談義に明け暮れてしまった。
しかし私の緊張はイベントが近づくに従い日々高まり、眠れぬ夜が続く。こうなったらきちんとレジュメを作ろうと前日二人の著作を積み上げ、家族を居間から追い出し、パソコンに向かう。何度も悩みながら綴ったレジュメが出来上がったのは深夜のことだったが、実は私の家にはプリンターがなかった。慌ててUSBメモリーにデータを入れると、セブンイレブンに車を走らせる。人数分のコピーを終え、家に帰ると、やっと私に眠りが訪れた。それは三日ぶりの眠りだった。
トークイベント当日、1時間前の待ち合わせに時間通りやってきた高野秀行さんにさっそく苦心のレジュメを渡す。高野さんはつーっと目を通すと、私にレジュメを戻した。それは高野さん用に用意してきたものだったが、さすが早稲田大学の人である。8年通って卒業したはずだが、おそらく天才だから見ただけですべて暗記してしまうのだろう。
30分ほど高野さんとしゃべっていると木村元彦さんがやってくる。実は私、木村さんの大ファンなのであるけれどお会いするのはこの日が初めてで、慌てて名刺を差し出すと木村さんも笑顔で名刺を差し出した。その木村さんにも苦心のレジュメを渡すが、木村さんはじっと見た後丁寧に4つ折りにし、ポケットにしまわれた。
むむむ。もしかしてこの世界中を旅し、多くの人々を取材してきた二人の公用語は日本語ではなく英語だったのかもしれない。そうなると私の日本語すら覚つかないレジュメはまったく役に立たないではないか。
私は日々の営業で、マン・ツー・マンで話すのだって苦手な人間だ。それが偉大なるノンフィクション作家二人と50人近いお客さんである。レジュメも台本もなくそんなところに出ていけるわけはない。頼む、頼むから私が練った進行どおり進んでくれ......という願いは、リブロ池袋店のTさんが私達を会場に導き入れた瞬間に打ち砕けた。
木村さんと高野さんが一気にセルビアの話を爆発させたのだった。
嗚呼、私のレジュメでは、自己紹介から始まるはずだったのに......。
それから約2時間の出来事を私はまったく覚えていない。
ただし『争うは本意ならねど ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール』は、全サッカーバカは読むべき一冊だ。日本サッカー協会の、Jリーグの狂った運営と、そしてそこに立ち向かった我那覇はじめドクター及び関係者の壮絶なノンフィクションである。そこには木村さんが描き続けてきた誇り高き人々のすべてが詰まっている。
そしてもっとも重要な役割を果たすのが我らが浦和レッズのチームドクターなのであった。クラブにほとんど誇りを感じられなくなってしまったレッズサポーターは、この本を読んで「We are Reds」と叫びたくなるだろう。