4月2日(月)
- 『未来国家ブータン』
- 高野 秀行
- 集英社
- 1,620円(税込)
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- 『放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法』
- 高野 秀行,二村 聡,下関 崇子,井手 裕一,金澤 聖太,モモコモーション,黒田 信一,野々山 富雄,姜 炳赫
- 本の雑誌社
- 1,512円(税込)
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- 『日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)』
- イザベラ バード
- 平凡社
- 1,620円(税込)
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- 『秘境ブータン (岩波現代文庫)』
- 中尾 佐助
- 岩波書店
- 1,188円(税込)
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通勤読書は高野秀行さんの新作『未来国家ブータン』(集英社)。
高野さんにしてはメジャーな辺境地(そんな言葉があるのか知らないが)なのだが、それもこれも『放っておいても明日は来る 就職しないで生きる9つの法則』の一番初めの対談者であり、生物資源探索ベンチャー企業の社長である二村聡さんから依頼を受けてのものだった。
はじめは乗り気でなかった高野さんだが、山師・二村さんの「ブータンには雪男がいるらしいですよ」という言葉に引きずり込まれ、二村さんの本来の依頼も忘れブータンに乗り込んだのであるが、先方は生物資源探索のプロが来たと思い、ブータンの辺境地への旅が始まる。
いわゆる高野さんのUMA探索本だと思って読み始めると肩透かしをくらうかもしれないが、その肩透かしの先に待っていたのは、もしかすると高野秀行の新たなテーマなのかもしれない。
ただいまこの「WEB本の雑誌」でも「謎の独立国家ソマリランド」というリアル北斗の拳と呼ばれる荒廃したソマリアの隣にある、地上のラピュタかと思わされる平和な国らしいソマリランドをルポしていただいているのだが、この『未来国家ブータン』でも高野さんの思考は国、あるいは国家というものに向かうのだった。
UMAから国家?! とはものすごいジャンプなのであるが、おそらくUMAが存在するかもしれない場所というのは、国家という概念の希薄な、それでいて逆に国家を考えさせられる何かがある場所なのかもしれない。思い起こせば初めの探検行である『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)では一介の学生がコンゴ政府とやりとりするところからはじまるわけだし、『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)では、その国と国の線を歩いて渡ってしまい、いまだインドに入国できないわけで、高野秀行ほど国家と個人的に関わってきた人も少ないだろう。
しかも20年以上にわたって辺境地を旅してきた高野秀行には、それらを比較検討するだけの経験があり、この『未来国家ブータン』のなかでも、様々な地域との比較による分析がされている。
といっても決して難しいノンフィクションでは当然ない。
ブータンに着いたときから酒を求め、高山病に痛めつけられたかと思えば、雪男の逸話に興奮する。そして村のおばちゃんたちのおそるべき接待酒に二日酔いになりつつ、唐辛子の食べ過ぎで下痢が治らず、現地の人から祈祷を受ける。
これほどブータン人に世話になりながら旅した外国人はいないと思うのだが、その本質は旅行記の王道で、まるでイザベラ・バードの『日本奥地紀行』(平凡社ライブラリー)のようである。言い換えれば『未来国家ブータン』は高野版『ブータン奥地紀行』となるのかもしれない。そして実は高野秀行にとってこれほど目的の呪縛から逃れた素直な旅行記は初めてなのだった。
この本のなかで触れられている『秘境ブータン』 中尾佐助(岩波現代文庫)とともに読むとより一層楽しめること間違いなし。
高野さんにしてはメジャーな辺境地(そんな言葉があるのか知らないが)なのだが、それもこれも『放っておいても明日は来る 就職しないで生きる9つの法則』の一番初めの対談者であり、生物資源探索ベンチャー企業の社長である二村聡さんから依頼を受けてのものだった。
はじめは乗り気でなかった高野さんだが、山師・二村さんの「ブータンには雪男がいるらしいですよ」という言葉に引きずり込まれ、二村さんの本来の依頼も忘れブータンに乗り込んだのであるが、先方は生物資源探索のプロが来たと思い、ブータンの辺境地への旅が始まる。
いわゆる高野さんのUMA探索本だと思って読み始めると肩透かしをくらうかもしれないが、その肩透かしの先に待っていたのは、もしかすると高野秀行の新たなテーマなのかもしれない。
ただいまこの「WEB本の雑誌」でも「謎の独立国家ソマリランド」というリアル北斗の拳と呼ばれる荒廃したソマリアの隣にある、地上のラピュタかと思わされる平和な国らしいソマリランドをルポしていただいているのだが、この『未来国家ブータン』でも高野さんの思考は国、あるいは国家というものに向かうのだった。
UMAから国家?! とはものすごいジャンプなのであるが、おそらくUMAが存在するかもしれない場所というのは、国家という概念の希薄な、それでいて逆に国家を考えさせられる何かがある場所なのかもしれない。思い起こせば初めの探検行である『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)では一介の学生がコンゴ政府とやりとりするところからはじまるわけだし、『西南シルクロードは密林に消える』(講談社文庫)では、その国と国の線を歩いて渡ってしまい、いまだインドに入国できないわけで、高野秀行ほど国家と個人的に関わってきた人も少ないだろう。
しかも20年以上にわたって辺境地を旅してきた高野秀行には、それらを比較検討するだけの経験があり、この『未来国家ブータン』のなかでも、様々な地域との比較による分析がされている。
といっても決して難しいノンフィクションでは当然ない。
ブータンに着いたときから酒を求め、高山病に痛めつけられたかと思えば、雪男の逸話に興奮する。そして村のおばちゃんたちのおそるべき接待酒に二日酔いになりつつ、唐辛子の食べ過ぎで下痢が治らず、現地の人から祈祷を受ける。
これほどブータン人に世話になりながら旅した外国人はいないと思うのだが、その本質は旅行記の王道で、まるでイザベラ・バードの『日本奥地紀行』(平凡社ライブラリー)のようである。言い換えれば『未来国家ブータン』は高野版『ブータン奥地紀行』となるのかもしれない。そして実は高野秀行にとってこれほど目的の呪縛から逃れた素直な旅行記は初めてなのだった。
この本のなかで触れられている『秘境ブータン』 中尾佐助(岩波現代文庫)とともに読むとより一層楽しめること間違いなし。