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9月4日(火)

 紀伊國屋書店新宿本店さんを覗くと前回訪問時はほとんど売り切れだった噂の「ほんのまくら」フェアに、ずらりとその書き出し部分だれが印刷されたかっこいいカバーで包まれた本が並んでいた。未だ注目は衰えていないようで、多くのお客さんがその棚の前で足を止め、何冊も本を抱えているのが印象的だ。

 この10年近く、書店も出版社も「外したくない症候群」にかかったお客さんのために、いかにその本が面白いか、その本を読むとどんな気分になるかを伝え保証することによって売ることに苦心してきたのだと思うのだけれど、この「ほんのまくら」フェアは本の内容どころかタイトルも著者名も隠し、まるで駄菓子屋さんで糸を引いてアメを引っ張るような楽しさによって本を買わせることに成功したのである。

 売り場の人に伺うと「フェア棚の前でお客さんがこれ買ったんだなんて話しコミニケーションツールになっているのがすごいですよね」と予想外の反応に驚かれていたが、ものを買う喜びには本来そういう楽しさがあったのだと思う。

 地下にある仕入部に伺う途中、たまたま開いていた休憩室の扉の向こうに、納品された「ほんのまくら」フェア用の本に一生懸命カバーを巻いている書店員さんの姿があった。なんだかその背中からは本を売ることの楽しさが、びんびん伝わって来るようだった。

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