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11月20日(火)

 朝焼け、朝霧のなか8キロRUN。
 埼玉スタジアムのことだけを考え東浦和の終の棲家として選んだが、ランニングを始めた今、見沼たんぼの景色がたまらなく愛しい。

 iPodが壊れてしまったので、娘のiPodを借りて通勤。中に入っているのは「嵐」や「AKB48」や「いきものがかり」。私の趣味とは違うようだ。

 有楽町の三省堂書店さんから『千利休』のカバーが破れてしまったと連絡があったので、営業がてらカバーを届ける。店頭には天童荒太の新刊『歓喜の仔(上下)』(幻冬舎)が大量に積まれていた。

 できあがりつつ歌舞伎座を見上げながら東銀座の山下書店さんを訪問。F店長さんとしばしお話。

 日比谷線に乗って六本木に移動。青山ブックセンターさん、あおい書店さんを訪問の後、都営大江戸線に乗り、青山一丁目の流水書房さんへ。渋谷までじわじわ営業を続け、ブックファーストさんなどひと回りするが、なかなか担当者さんに会えず苦戦。

 会社から東京堂書店Nさんから電話があったとメールが入り、帰社しつつ、東京堂書店を覗く。ショーウィンドウの週間ベストセラーランキングでは、2週続けて『古本の雑誌』が1位!

 Nさんからサイン本やバックナンバーの追加注文をいただく。ファミリーマートで、「チョコモナカジャンボ」を買って会社に戻る。夏はガリガリ君、冬はジャンボモナカ。残業。

11月19日(月)

 通勤読書は、絲山秋子さんの『絲的サバイバル』(講談社文庫)。光栄にも解説を書かせていただいたのだが、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 昼、前から気になっていた神田錦町の洋食屋「ふくのや」を覗いてみる。昔ながらの洋食屋さんでオムライスメンチ(オムライスにメンチカツが一個ついてくる)を食す。800円。量は普通。

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「ふくのや」のオムライスチキン

『本の雑誌』の追加注文と『古本の雑誌』の追加注文を頂いた、丸善丸の内本店さんと紀伊國屋書店新宿南店さんにそれぞれ直納。

 高田馬場へ移動するとBIGBOXの下で古書感謝市が行われていた。何気なく棚を見ると山口瞳の全集『山口瞳大全』(新潮社)がズラリと並んでいるではないか。全11巻中、8巻だけなく、帯は破れていたり欠だったり。ただし月報はきちんと封入されていた。各巻千円。ということは10冊買ったら一万円。うおおおおお。

 どれくらい悩んだだろうか。結局、買わずに帰社。

 前日の日曜日に池之上青少年会館というところで一時間半ほどした講演(主に本屋大賞の話)の疲れが抜けず、また田中達也の移籍がショックのため、残業せず帰宅。

11月16日(金)

 事務の浜田が夏休みのため、浜田の机に座って浜田の仕事をする。ハサミを取り出そうと引き出しを開けてみたら、缶ビール、日本酒、ワイン、ウォッカと酒が出てきて驚いた。ホテルのミニバーか。
 
 午後、「本の雑誌」収録予定の「図書カード3万円お買い物」の取材立ち会いのため銀座の教文館さんへ。ご登場いただいた作家さんが「3万円お金をもらうよりうれしい」と話されていたが、その気持ちはよくわかる。どうしてなんだろうか。

11月15日(木)

 出来たばかりの中場利一著『ロケンロール空心町』を持って、取次店さんを回る。23日が祝日のせいか仕入窓口は長蛇の列。これはもしや午前中に終わらないのではないかと心配したが、朝早く出たのが功を奏したのか無事終了。

 17時過ぎ、神保町「魚百」で大竹聡さんと飲んでいると、坪内祐三さんが店内のテレビで放映されている大相撲を観戦しにやってきた。私のサッカー同様真剣なのであろうと挨拶だけして声をかけずにいると、ひと勝負終わったところで、「この後、出版記念会に行くんでしょう?」と訊いてこられた。

 坪内さんが言う出版記念会とは、東京堂書店前店長・佐野衛さんがこの度上梓された『書店の棚 本の気配』(亜紀書房)の出版記念パーティーであった。しかしそのパーティーには本の雑誌社を代表して浜本が呼ばれていた。私自身入社以来、佐野さんにお世話になっており、退職される際にご挨拶できなかった後悔もあった。だからといって呼ばれていないパーティーに顔をだすわけにもいかないし、佐野さんにとっては何百人も訪問してくる出版社の営業マンの一人でしかないのだ。

 そのことを口ごもりながら坪内さんに伝えると「いいよ、いいよ、一緒に行こうよ」と誘ってくれた。そういえば坪内さんは会の発起人のひとりだったのだ。そして相撲が終わりお店を出ていく坪内さんの背中を私と大竹さんは追いかけたのだった。

 会場には私よりずっと年配の出版関係者がたくさんいた。その中心に胸に花をつけた佐野さんがいて、多くの方々と挨拶をしていた。
 私は邪魔になってはいけないと隅っこで静かに酒を飲んでいたのだが、しばらくして佐野さんが前を通ったとき、突然、私のほうを振り返り、「ありがとうね」と頭を下げられてきたのだ。

 佐野さんは営業マンには厳しい書店員さんだった。
 私は16年間訪問し続けてきたが、特別個人的な会話をしたことは一度もなかった。注文をもらえればすぐに持っていく、そういうことをただただ16年間続けてきたに過ぎない。

 だから私のような営業マンを覚えていてくれているとは思えなかった。誰かと間違えて挨拶されたのだろうと思ったのだが、その後佐野さんは「『本の雑誌』読み続けているよ。坪内さんの連載もあるからね」と初めて見る笑顔で話されたのであった。

 私は涙をこらえるのに必死だった。
 そして思い出していたのは、坪内祐三さんの著作を初めて本の雑誌社から出版するときの佐野さんとのやりとりだった。

 私が『三茶日記』の注文書を広げると、佐野さんはすぐに「200」と言った。一瞬聞き間違えかと思って佐野さんを見つめるが、佐野さんは私など気にせず注文書に「200」と書き込んでいた。
「削ったらダメだよ。この間坪内さんの本を出した出版社は削ってきやがったんだ」
 削るとは書店さんの注文が多すぎると出版社が判断したときに、その納品部数を出版社が減らすということだ。

 それにしたって200部。大丈夫だろうか。
 私は会社に戻る電車のなかで悩んでいた。
 しかしこれは出さないわけにはいかない。いや売ると言っているんだから佐野さんは売るんだろう。
 そうしてそのまま削ることもなく納品したのだが、私の心配などどこ吹く風ですぐに売り切れ、その後何度も佐野さんから追加注文の電話が入った。私はそのたびに本を持って、笹塚と神保町を往復していた。

 しばらく佐野さんと話していると別の方が佐野さんに話しかけ、佐野さんはそちらの輪に加わった。

 私はその背中に向かって深々と頭を下げた。

11月14日(水)

 中央線を営業するが、なかなか担当者さんに会えず、撃沈。
 夜、『ロケンロール空心町』の事前注文締め作業。

11月13日(火)


 昼、朝から助っ人に来ていた鈴木先輩を神保町最愛のラーメン屋「めんめんかめぞう」に連れていく。食べ終えた鈴木先輩は「めちゃくちゃ旨いっすね。しばらく通っちゃいそう」と興奮していた。

 午後、昨日空振りしてしまった「しまぶっく」を再度訪問し、一箱古本市に出品していた本の残りを回収にいく。荷物持ち用に連れて行った助っ人のチョモランマ高橋が大活躍。

 夜までかかって書店さん向けDMと新刊注文チラシを作成。

11月12日(月)

「本の雑誌」2012年12月号搬入。

 午前中にデスクワークを片づけ(片付かないが)、昼、深川いっぷくいっぱこ古本市に出品していた本を「しまぶっく」に取りに行く。が、なんとお休み。

 明日出直すことにし、神保町「めんめんかめぞう」で食して以来すっかり気に入っているとんこつラーメンのお店があったのでそちらで昼飯。「九州筑豊ラーメン山小屋」。明日から内装工事でしばらくお休みらしい。

 いったん会社に戻り、今度は「おすすめ文庫王国2013年度版」のゲラを届けにとある書店さんへ。そのまま営業。

 夕方戻るとまた「おすすめ文庫王国2013年度版」のゲラが出ていたので、それを別の書店さんへ届けに行く。出入りの多い一日。

11月9日(金)

『おすすめ文庫王国2013年版』の制作に追われつつ、当然営業もしなければならず、しかもなんだかわからないいろんなことが押し寄せてきて、もはや自分が何をしなければならないのかわからなくなったので、とりあえず外に出てみた。たぶん仕事は小人がやってくれるはずだ。

 夜。丸善ジュンク堂書店渋谷店に飯田辰彦『ラストハンター』(鉱脈社)のトークセッションを聞きに行く。春の養蜂から始まり、夏は天竜川で魚や海老の漁、秋になれば猪や鹿の猟をし、冬は一家総出で鴨猟と一年中自然とともに生きている罠猟師・片桐邦彦氏の話があまりにゆるぎないもので、途中、自分の軽薄さに呆れ、涙が溢れてしまった。

11月8日(木)

 朝、小川洋子の『ことり』をじっくり読みたいがために南浦和駅にて京浜東北線の始発を待つ。オヤジたちとのショルダチャージ合戦に勝ち、安住の地を手に入れ、ページを紐解く。

 一行目から至福の小川洋子ワールドにどっぷり浸かっていたのだが、あまりに浸かりっぷりに駅を乗り過ごしたのではないかと慌てて顔を上げたが、そこはまだ日暮里駅であった。助かったと安堵しつつ、またページに視線を移そうとしたとき、ふと気になるものが視線を横切った。

 それは私の目の前に立つ二人のおばちゃんだった。二人ともつり革につかまって、なんと本を読んでいたのだ。それは2007年にスマホが登場して以来、たった5年でレッドデータブックに絶滅危惧IB類として登録されようとしている「通勤電車で本を読む人」であった。

 久しぶりに野生の「通勤電車で本を読む人」を見つけた私は、歓喜にわき、その姿を写真に撮ろと、ポケットにしまっておいたスマホを取り出したのだが、二人のおばちゃんが手にした本が妙にピカピカと光るなと改めて見つめなおすと、どちらも図書館の貸し出し本であることを示す蔵書ラベルが貼られていたのであった。

 おお、せっかく見つけた「通勤電車で本を読む人」もすでに野生ではなく、保護センターで保護された「読者」だったのか。先程までの歓喜は一気に冷め、もはや写真を撮る必要もなくなったスマホをポケットにしまうと、私はまたあと5駅と迫った乗換駅まで『ことり』の世界に没頭したのであった。

★   ★   ★

 さて、おばちゃん二人が読んでいた本は、夏樹静子『Wの悲劇』(角川文庫)と『50才からの再入学パソコン塾』(技術評論社)という本だった。

 文庫ぐらい図書館で借りずに買えよと思ったのは出版社の人間が持つ共有の意識だろうが、そうは言っても買ってくれないのである。その傾向は一段と強くなっており、おそらく財政破綻で図書館がなくなるまで続くだろうし、あるいは逆に町の本屋さんがなくなりつつある現代に置いて、公共図書館と学校図書館がなかったら子どもたちは、いや大人も含めてほとんどの人が身近に本を手にする機会がBOOKOFFでけになってしまうという可能性もあり、図書館の価値はより高まってくるかもしれないのだった。

 しかしそうは言っても図書館で1冊の本を1000人が読んでも出版社に入ってくるのは1冊の売上しかないのである。それは出版社以上に苦しい立場にいる著者も一緒のことで、夏樹静子はともかくとして多くの作家は自分の本を図書館で借りて読んだと言われたりその姿を見かけたときに歯がゆい思いを抱えているだろう。

 ならばどうしたら図書館で本を貸すことによって出版社や著者はお金を得られるのだろうか。貸し出し料を取るとか入館料を取るというのが簡単なことだが、おそらくそれは既得権を奪うことになるから難しいだろう。そうではなく今と違う発想でお金を生むことはできないだろうか。

 例えば図書館=無料(税金のことは脇にどけておく)ということは要するに「FREE」の精神なのだ。ネット企業のGoogleにしてもFacebookにしてもTwitterにしてもサービスはすべで「FREE」で提供し、それで人が集まるようになると広告収入などで収益をあげていき経営を成り立たせている。これを図書館に導入したらどうなんだろうか。

 いわゆる単行本や文庫本には広告が入れられないようになっているのだけれど(入れようと思えば入れることはできるけれどその分取次店へ納品する掛率が下がる)、図書館納品分に関してはそこを取っ払い、表4に大きく広告スペースを取る。

 印刷段階で広告を入れるか、あるいは図書館納品時に大きく広告を印刷したシールを貼ってもいいのかもしれない。シールならば時期が来たら電車の中吊り広告のように別の広告に替えることも可能だから、そちらのほうがいいかもしれない。あるいは蔵書ラベル自体を大きくして広告にしたらどうだろうか。

 そうやって表4に貼られた広告は、図書館で貸し出された際には家で見られ、またこの日私が目撃したように電車のなかで本を読む人によって電車の中吊りと同等の効果が得られるのではなかろうか。あるいは特殊広告電車のように図書館一館まるごとひとつの広告が付いた本で埋めるということも可能にしたら面白いのではないか。

 図書館に来るあの人の数はTwitterの利用者数を上回ったりしないのだろうか。

11月7日(水)

 午前中、「本の雑誌」の企画会議。

 最近なんだか社内を制服姿の女子中学生がウロウロしており、てっきり私の幻覚か制服フェチの浜本が着ているのかと考えていたのだが、どうやら本物の中学生で職場体験学習で来ているらしい。私も明日から彼女に合わせて長ランとボンタンで出社しようと思う。

 昼飯に以前から一度入って見たかった御茶ノ水丸善さん裏の「中華料理やまだ」へ。味はともかく、量が普通だったので神保町の大盛り避難場所として使えそう。

 食後、直納ラリーはチョモランマ高橋に任せ、営業へ。松戸の良文堂書店さんを訪問。先月行われた出版営業マンガチンコ対決フェアでなんと私が優勝! 支店の八千代台店の平台をひとつ獲得し、フェア開催できるのだった。

 営業後、直帰して等々力陸上競技場へ。浦和レッズ対川崎フロンターレ。
 試合に負けただけでなく、試合終了後、酔っぱらいに絡まれ最低最悪。

11月6日(火)

 ザーザーと雨が降るなか『古本の雑誌』の重版分が納品となる。奥付の「二刷」の文字が眩しくしばし見とれるが、雨のため直納ラリーは明日に順延。

 午後、『おすすめ文庫王国2013年度版』の取材のため、北戸田の中央精版印刷へ。印刷から製本まで一気に文庫が作れる機械を見学させていただく。

 見学後、喉が渇いたので戸田公園駅の「立ち飲み 日高」にて浜本や宮里と生ビールを飲むが時計を見たらまだ17時前だった。そうはいっても私の家はここからたった5駅であり(快速なら3駅)、一方会社のある神保町までは12駅もかかるのだった。とても帰社できるわけもなく事務の浜田に直帰の連絡を入れると「ぶっ殺す!」と言って電話を切られた。

 直帰の途中で本屋さんに寄り、待ちに待った小川洋子の新刊『ことり』(朝日新聞出版)を購入。

11月5日(月)

  • 通天閣 新・日本資本主義発達史
  • 『通天閣 新・日本資本主義発達史』
    酒井 隆史
    青土社
    3,960円(税込)
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    honto
 神保町ブックフェスティバルから福岡出張と休みなく続いた濃密な2週間が終わり、のんきに通常業務に戻るはずが、なんとなんと『古本の雑誌』が発売忽ち重版で、しかも重版中にたくさんの追加注文が届いており、大忙し。明日出来上がってくる2刷めの『古本の雑誌』の直納の手配をする。

 その後池袋へ営業に行き、リブロのYさんと話し込んでいると背後に不穏な空気を感じる。振り返るとそこに青土社の営業E氏が立っており、私の顔を見つめ、ニヤリと笑みを浮かべているではないか。もしかしたら彼は本の雑誌社に潜り込もうとしているのではなく、私のストーカーだったのかもしれない。

『古本の雑誌』が売れていることを自慢すると、青土社では酒井隆史『通天閣』が売れていますと胸を張ってYさんに売り込んでいた。

 秋葉原のタワーレコードに寄り道し、ピーター・ガブリエル『So: 25th Anniversary Edition』ヴァン・モリソン『Born to Sing: No Plan B』、ボブ・デュラン『Tempest』、ベン・フォールズ・ファイブ『Sound of the Life of the Mind』を購入。

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