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4月30日(火)

  • grownass man
  • 『grownass man』
    The Shouting Matches
    Middle West
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「無理をしない、頭を下げない、威張らない」が社是の本の雑誌社は、年末年始とゴールデンウィークはどーんと休む。本年も4月27日からの10連休。

 そんな誰もいない会社へひとり出社す。この世には浦和レッズの勝利と本が売れること以上の喜びはなく、『謎の独立国家ソマリランド』が売れている今、休む理由は見当たらない。

 しかしその思惑を超える注文の電話が朝から鳴り止ない。営業に行くどころかトイレにも行けず、一日電話番で終わってしまう。しかも今すぐ本を持って書店さんへ納品に向かいたいもののもはや在庫はなく、来週火曜日にできあがる重版を待つばかり。

 定時に退社。タワーレコードに寄り道。この5年の我がベスト・アルバム「Bon Iver」のジャスティン・ヴァーノンらによる別ユニットThe Shouting Matches「grownass man」を購入。まさかのロックンロールに大興奮。

 通勤読書は、『烈風のレクイエム』熊谷達也(新潮社)。最後の一行の重さに震える。そういえば文庫になった『銀狼王』(集英社文庫)に、解説というかエッセイのようなものを書いたのだった。

4月23日(火)

 本日も『謎の独立国家ソマリランド』の注文は止まらず、助っ人を連れてあちこちへ運ぶ。そういえば最近、娘から毎晩「今日何の仕事をしたの?」と訊かれるので、「本を運んでいる」と答えているのだが、そのたびに娘から「ちゃんと仕事をしなさいよ」と叱られるのだった。これでもちゃんと仕事しているはずなんだけど。

 直納の途中、前日良文堂書店のTさんから「めちゃくちゃいいインタビューでしたよ」と教わった佐野元春一万字インタビューが掲載された「RollingStone 2013年5月号」を購入。巻末に掲載されたそのインタビューは、初めて元春の曲を聴いた十代の時のように脳天から電撃が走る。いったいどこまで私は佐野元春を好きになるのだろうか。

 次に訪問した書店さんで見つけたのは「月刊かがくのとも2 サッカースタジアム」鎌田歩さく(福音館書店)

 こちらはサッカースタジアムの試合後の風景を描いた絵本なのだが、なんとその舞台が、我らが埼玉スタジアムなのである。もちろん試合は浦和レッズの試合で、そこに描かれる人々の姿は、まさにいつもの「We are Reds」だ。(唯一の問題はアウェーの客(柏レイソル?)が多すぎるくらい)

 それにしても素晴らしい絵本だ。この絵本を眺めているだけで、埼玉スタジアムで経験したいろんな感情を思いだし、一日が過ぎてしまいそうだ。2013年サッカー本ベスト1候補。

4月22日(月)

  • 謎の独立国家ソマリランド
  • 『謎の独立国家ソマリランド』
    高野 秀行
    本の雑誌社
    2,420円(税込)
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    honto

 日曜日の朝日新聞の書評欄にて高野秀行著『謎の独立国家ソマリランド』が紹介され、狂乱の月曜日となる。直納をして会社に戻ってくるとまた注文が届いており、また出かけるの繰り返し。なんだか恐ろしくなり、一瞬逃亡を考える。

 夜、良文堂書店さんで行っていた出版営業ガチンコ対決フェアの結果発表会。お花茶屋の洋食屋「キッチン ポワロ」。優勝! V2を達成。

 運が向いて来たのかもしれない。

4月17日(水)

  • 謎の独立国家ソマリランド
  • 『謎の独立国家ソマリランド』
    高野 秀行
    本の雑誌社
    2,420円(税込)
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    honto

 毎日、朝イチで確認するのは、倉庫の在庫状況だ。新刊の在庫は、場合によっては一気に減っていくので気をつけなければならない。
 本日、『謎の独立国家ソマリランド』が予想していた以上にぐっと減っていた。もしこの調子で売れて行くと、残りの在庫数と増刷にかかる時間から、品切れ期間をつくらないためには、すぐにでも重版の判断しないことが判明。
 浜本の机の下にある「カンピュータ」を立ち上げ、売上予測ソフト「カエセル」で、連立売上方程式を解く。
 解答は<増刷>。三刷!

 社内で大騒ぎしているうちに「BOOK asahi.com」の「次回の読書面」が更新され、そこの一番上に『謎の独立国家ソマリランド』があることを事務の浜田が見つける。ということは今度の朝日新聞書評欄の大きいところで紹介されるということか。二重の喝采。

 営業。
 相変わらず村上春樹の新刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)は、ほとんどの書店さんに並んでいない。
 ハングリーマーケットを演出し話題にするという戦略があるのかもしれないが、発売前からあれだけ話題になっていたし(そうなることも予想できた)、『1Q84』の前例もあるわけで(詳しくは「本の雑誌」2009年11月号「『1Q84』24時」を)、はじめにドカンと店頭に並べた方がずっと効果的だったのではなかろうか。どう考えても売り逃しているような気もするし、本を売るどころか全国の書店さんから顰蹙を買っていてはしょうがない。もしかしたら文藝春秋の「カンピュータ」も「カエセル」もバージョンが古いのかもしれない。

 会社に戻ると『謎の独立国家ソマリランド』の注文がどどどと届いており、納品の便の関係で搬入が遅くなってしまう分は、明日直納することに。在庫置き場から本を運び出しているとなんだかにやけてしまう。

4月12日(金)

 村上春樹フィーバーをよそに相変わらず落ち込みがひどい。
 このままではダメになりそうなので、営業の後、直帰し、越谷へ。通っていた高校というよりは、サボっていた町並みを見に訪れる。しかし駅前は知らぬ間に商業施設とマンションが建ち、私たちが遊んでいたゲームセンターも喫茶店も何もかもなくなってしまっていた。

 記憶を頼りに高校までの通学路を歩くが、これもまた道が変わっているようで思った場所にたどり着かない。
 それでも薄暗くなった頃、何度も歩いた元荒川の土手の上にいた。小さな川の流れには、あの頃と変わらず高校のボート部の艇庫があり、ジャージ姿の、おそらく後輩であろう高校生がたむろっていた。

 その風景を見た瞬間、ものすごく気持ちが軽くなっていくのが自分でもわかった。
 ここに戻ればいいだけなのだ。

 高校時代のように、太郎焼を買って、家路につく。

4月11日(木)

 相変わらず気持ちが沈んでいる。本屋大賞の後は毎年ブルーになるが、今年はちょっと大きい。
 直行で大宮のNACK5へ。「セイタロウ&ケイザブロー おとこラジオ」に目黒さんが出演するというので、その収録にお邪魔する。

 その途中、大宮駅のブックエキスプレスにて品出ししているHさんの姿を見かける。しかし朝の忙しい時間帯なので一瞬声をかけるのを躊躇するが、『本屋大賞2013』の注文でお世話になっていたのでその御礼を伝えたく、『謎の独立国家ソマリランド』の書評が掲載されているという「週間文春」を購入しつつ、ご挨拶。
 するとHさんはパッと顔を輝かせ、こう言ったのだ。

「本屋大賞(『海賊とよばれた男』)すごい売れてますよ! 昨日なんて朝シャッターを開けたらお客さんが駆け込んできて、『本屋大賞どこ?』って聞かれましたよ」

 その笑顔を見て思い出したのは、2004年に初めて本屋大賞を発表したときのことだ。あのときは出版社も書店さんもそして私たち実行委員会も疑心暗鬼で、果たして発表したもののこういった賞のもとに本が売れるのだろうかと期待と不安のなかその日を迎えたのだ。そして、その翌日、当時銀座の数寄屋橋阪急にあった旭屋書店(いまや書店がなくなっただけでなく、阪急の建物も取り壊されている)を訪問すると、文芸担当のOさんが私の顔見るなり「売れてる、売れてる!」と嬉しそうに駆け寄り、『博士の愛した数式』を指さしたのだった。

 結局、私はこの、本が売れているときに見せる書店員さんの笑顔が見たくて、この十年間本屋大賞を続けて来たのかもしれない。

 収録は無事終わり、目黒さんと大宮で昼食。「WIN5」という馬券の買い方を教わる。その後、営業。

4月10日(水)

  • The Messenger
  • 『The Messenger』
    Marr, Johnny
    New Voodoo
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  • The Next Day
  • 『The Next Day』
    Bowie, David
    Sony
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  • Payola: Deluxe Edition
  • 『Payola: Deluxe Edition』
    Cribs
    Wichita UK
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 目が覚めたとき、まだ夜でありますようにと祈ったが無情にも朝だった。疲労困憊。立ち上がろうとするが膝に力が入らず、転がってしまう。

 事前に取材されていたので本日掲載されることがわかっていた朝日新聞の本屋大賞の記事を読む。あれだけ時間を取り、一生懸命伝えたにも関わらず、「サイゾー」と変わらないレベルにがっかりする。

 ただでさえ、本屋大賞を作ったばかりにゲラやらなにやらで書店員さんの仕事を増やしてしまったことに申し訳ない気持ちでいっぱいのところに、このような誤解と偏見に満ちた記事を全国紙に掲載されてしまい、書店員さんに迷惑をかけてしまったこと、どう謝っていいのかわからない。

 地面に埋もれそうな気持ちのまま出社すると追い打ちをかけるようにつまらない取材の電話が立て続けに入り、暗黒な気分に陥る。昼飯も食う気が起きず、本屋大賞の残務処理をし、定時の6時を待つようにして退社。
 
 タワーレコードへ飛び込み、CDを購入。
・Johnny Marr「Messenger」
・DAVIDBOWIE「The Next Day」
・THE CRIBS「Payola: Deluxe Edition」

 それでも気分はまったく晴れず、娘が所属するサッカーチームのナイター練習に飛び入り参加させてもらう。30分ほどゲームをして少しだけ持ち直す。

4月9日(火)

 本屋大賞発表日。
 5時半に目覚める。ジャージに着替えてランニング。桜の散った見沼代用水西縁を氷川女体神社で本日の発表会が無事に終わるようお参りしながら走る。第10回を記念して10キロラン。

 シャワーを浴びてから出社。発表会に関してテレビ局からの問い合わせに答えているうちに午前中が終わる。

 昼飯を食べに編集の宮里と一緒に出ようとするが、宮里は私が前日食べた「めんめんかめぞう」に行くというので別行動に。神田天丼家。どうしてこんなに美味しくて安い天丼が食べられるのに、その隣の......な天丼屋にお客さんがいるのだろうか。

 その帰り道、古本屋さんを冷やかしていると、とある古本屋さんの店頭に『愛蔵版 まんが道』藤子不二雄(中央公論社)が全4巻セットで売られているのを発見。しかも先日訪問した「つちうら古書倶楽部」の半分以下の値。

 元々持っていたのだが友だちに貸したまま行方不明となり、どうしても娘に読ませたいと考えていたのだ。すぐさま購入。

 2時になったので発表会の手伝いをする助っ人学生とともに会場である明治記念館へ移動する。

 それからは、大わらわの7時間。
 第10回本屋大賞は『海賊とよばれた男(上下)』百田尚樹(講談社)に決定。発表会も無事終わる。

 元春レディオショーを聴きながら帰宅。誰もいない食卓で、ひとりで乾杯。

4月8日(月)

 娘。中学校の入学式。

 しかし本屋大賞発表会の前日にして、『謎の独立国家ソマリランド』が東京新聞と日本経済新聞に書評掲載された翌日なので、妻と娘からどれだけブーイングされようと立ち会うことはできない。

 妻にカメラを渡し、娘には「おめでとう」と声をかけ、出社。背中に、ため息。

『謎の独立国家ソマリランド』の注文書を作り、書店さんへFAX。「どこでもドア」があれば一気に営業に出られるが、まだドラえもんは開発されておらず、こういうときはFAXに頼らざる得ない。

 しかし書店さんには私と同じように考えている出版社から毎日毎日大量にFAXが送られて来ており、訪問で仕事の邪魔をするのと同様、FAX送信も迷惑をかけているのだ。

 昼、久しぶりに「めんめんかめぞう」のラーメンを堪能。

「本の雑誌」5月号の搬入も無事済み、営業へ。

 電車のなかで入学式帰りの親子を見かける。

4月5日(金)

 夜、大阪の出版社140BのAさんと酒。といってもAさんは酒を飲まないので半分食事。最近はいつも神保町の町の中華料理屋「光華飯店」へ。

 そのAさんがゴールデンウィークにアーセナル対マンチェスターユナイテッドの試合を観にロンドンへ行くと言い出したから急激に酔いが回ってくる。
 世の中には自分の思い通りに好きなことが出来る人がいるのだ。うぐぐぐ。

4月3日(水)

『還れぬ家』佐伯一麦(新潮社)を読みはじめる。これはちょっとただならぬ小説なのではなかろうか。ゆっくりじっくり読もう。

 横殴りの雨と強風の吹きつけるなか『本屋大賞2013』の見本を持って取次店を廻るのは、もはや仕事でなく冒険だ。

 オチャノミズのC1を出ると、瞬時に傘が壊され、目の前でおじいさんが吹き飛ばされていった。「タクシー」という文字が頭のなかで点滅するが、私の中の植村直己がそれを許さない。

 決死の覚悟で、C2のあるイイダバシコルに移動し、新たに求めた傘を再度壊されながらも、難所オオマガーリを越えC2ヒガシゴケンチョーに到着。

 その後、カンダガワクレバスをハシゴをかけてわたり、C3、C4と征服。そのままジンボーチョーのC5へ向かいたかったが、我が目の前でトバスの雪崩が発生し(バスの扉が目の前で閉じられた)ため、いったんベースキャンプに帰還。

 食事をとった後、相変わらず暴風暴雨のなか改めてC5、C6、TOPに向けて出発。

 靴の中はビショビショで、一度脱いでしまったら二度と履けないだろう。

 午後4時、頂上到着。
 待ち構えていた報道陣から質問を受ける。

「なぜ取次店を廻るのか?」

 しばし考えたあと私は答える。
「そこに新刊があるから」

4月2日(火)

社内にとどまり、『本屋大賞2013』の事前注文〆作業。短冊と打ち込んだデータが合っているか、ダブって入力していないかなど確認し続ける。

 私は注文短冊を見るのが好きだ。ときにそこに躊躇があったり、気合いがあったり、書店さんの思いが詰まっているからだ。

 営業として目標にしていた部数をクリアーしていたので、机の中に秘蔵しておいたシングルモルト「Glenfiddich」12年もので祝杯。達成感に酔いしれる。

4月1日(月)

  • ラジオのこちら側で (岩波新書)
  • 『ラジオのこちら側で (岩波新書)』
    ピーター・バラカン
    岩波書店
    6,755円(税込)
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通勤読書は『ラジオのこちら側で』ピーター・バラカン(岩波新書)。

 朝、出社するとエイプリルフールかも? と思うような注文がたくさん届いており、急遽、直納の人となる。助っ人を連れて行っては帰り行っては帰りでピストン輸送すること計4回。腕がパンパンになる。それにしても『謎の独立国家ソマリランド』は毎週どこかで紹介していただいているおかげか、売行きがまったく衰えず。こんなことは初めての経験で、毎日目を白黒させている。

 どんな仕事もそうだろうけれど、現在(既刊)、未来(新刊)の同時進行で、どちらも同様に手をかけないとならないから大変だ。営業部を<新刊&プロモーション課>と<既刊課>に分けたいところだが、分けたところでわたし一人しかいないのだった。世襲する娘の入社が待ち遠しい。

 帰宅後7キロランニング。

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