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6月6日(木)

朝、倉庫から移動されてきた『謎の独立国家ソマリランド』を納品するお店ごとに分けていると、電話に出た事務の浜田の声がひときわ大きくなる。

「はい! はい! 月曜日に納品したんですけど......。あっ! そうですか!! すぐ杉江に持ってかせますね」

 なんと今週月曜日に直納したばかりの書店さんから売れ行きがいいのでと大量に追加注文をいただいたのだった。

 思えば事務の浜田は、書店さんから注文の電話があると「どうしたんですかね?」とか「なにかの間違いじゃないですかね」とやたら疑い、10冊以上の注文がはいると、「えっ!? もう一度お願いします」と訊ね返していたような人間だったのだ。

 それがこの3ヶ月近く続くタカノミクスのおかげで、30冊、50冊の注文にも平然と番線とコード(書店さんが注文時に伝える暗号)をメモできるようになった。しかも勝手に私が直納するまで判断するように......。

 しかし気軽に「持っていきます」と答えた注文はとても私ひとりで運べる量でなく、しかも二人で行くにしてもカートは1台しかなく、それも無理。頭を痛めていたところにやってきたのは印刷会社の営業マンMさんで、思わずその顔をみた瞬間「この後どちら方面に行きますか?」などとまるで親指を立てて旅するヒッチハイク青年のようなことを訊いてしまった。運良く同方向だったので車に本を積んでもらい直納す。これぞ産直採れたて納品。

 その後は助っ人のアキヤマ青年と手分けして直納を続け、夕方4時、取次の栗田出版販売さんへ。この日はこちらの会議室を使って開かれる勉強会の講師にお呼ばれしていたのだ。

 しどろもどろの悪戦苦闘一時間半の後、懇親会、そしてまた会社に戻り、注文の〆作業。

 本が売れると、左うちわで楽になるかと思っていたが、それはどうやら間違いだったようだ。

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