9月9日(火)
- 『(やまいだれ)の歌』
- 西村 賢太
- 新潮社
- 1,620円(税込)
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まさか西村賢太の著作を読んで涙するときがくるとは思わなかった。
最新刊『(やまいだれ)の歌』(新潮社)はいつもどおりの著者の分身である北町貫多を主人公とした私小説なのだけれど、これまでの王道パターンである水戸黄門の印籠よろしく貫多が大暴れして終わるものではなく、気づけば信じられないことに貫多に感情移入し泣いてしまうのだった。
もちろん貫多のやっていることは相変わらずの非道ぶりなのであるけれど、貫多の心情がこちらの胸に刺さるほど痛く、それは怒りだけでなく哀しみもデフォルメされた西村賢太の新機軸なのだった。
『サンリオSF文庫総解説』の見本が出来上がってくる。本に力がある。