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5月28日(木)

 朝ラン7キロ。ここのところコンスタントに走れているので、身体が軽い。

「本の雑誌」40周年記念号(2015年6月号)に続いて、『完全復刻版「本の雑誌」創刊号〜10号BOXセット』も品切れとなる。発売一週間! シンジラレナイ! ただし倉庫に積まれた大量の本を目にしているにので重版に慎重にならざるを得ない。悩む。大いに悩む。

 それにしても不思議なのは、電子書籍だ。電子書籍はこうやって重版に悩むこともなければ、在庫や返品や品切を心配することもない。出版社が抱える問題のかなりの部分を解決するはずなのに、出版社の人(私)が電子書籍を推進する気があまりないのはなぜなんだろうか。

 やっぱりこうやって悩み、悩んだ末に成功したり失敗したりするのが働いている醍醐味だと理解しているからなんだろうか。それとも推進したら自分の役割(仕事)がなくなっちゃうからだろうか。

 夕方、『迷う門には福来る』のカバーの色校が届く。束見本に巻いてみるとあまりに素晴らしすぎてにやけてしまう。早く中身も出来ますように。

 夜、書店員さんたちと飲む。
「ここ数年でがらっと変わった。店のなかでの書店員とも話が通じなくなり、版元の営業とも通じなくなっている」というベテランの書店員さんの言葉が胸に刺さる。

5月27日(水)

  • 役にたたない日々 (朝日文庫)
  • 『役にたたない日々 (朝日文庫)』
    佐野 洋子
    朝日新聞出版
    638円(税込)
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 ここのところ佐野洋子の本をずっと読んでいる。

 18歳ではじめて本の面白さを知り、椎名誠や村上龍や丸山健二や山口瞳の本をまるでバイブルのようにノートに書き写していた時期があったけれど、佐野洋子はあきらかに40代の私のバイブルだ。

「私は、わかった。人と付き合うより自分と折り合う事が一番難しいのだ。私は自分と折り合えなかったのだ。六十年くらい。
 私は自分と絶交したいのだ。」
(『役にたたない日々』朝日文庫)

 ゆれる電車のなかで、一文一文書き写している。10代、20代に書き写したあの文章たちが、私の血と肉になったのだから。

5月26日(火)

 限界かもしれない。営業、編集、イベント、展示、通常の業務に40周年に絡めたものが押し寄せ、そこに倉庫の倒産問題が降り注ぐ。まるで岸辺に押し寄せる波のように次から次へと仕事がやってくる。そろそろ凪の時季かとおもいきやその波はどんどん大きくなっていく。もう無理と救いを求め社内を見渡せば、いびきをかいて寝ている人がいる。会社って不思議なところだ。もしこれで浦和レッズの成績が悪かったら私は会社をやめていただろう。りふじんだものみつを。でも今はシーズン無敗の勝ち点30で首位独走。愛する関根貴大は試合ごとに素晴らしい活躍をし、私の暗黒の心を晴れ渡る青空にしてくれる。関根には、関根のチャントがしっかり歌えるようになるまで日本にいて欲しい。浦和レッズ万歳! 関根万歳! 本の雑誌40周年万歳!

5月15日(金)

 日記を更新できなかったのには理由があって、ゴールデンウィーク明けの5月8日に保管流通のすべてを委託していた倉庫会社が倒産してしまったからだ。

 在庫である本は出版社のものだから問題ないのだが、一刻も早く新規倉庫と契約、移動させなければ出荷が止まってしまう事態において、まさに時は金なり、信頼できる仲間に相談しながら、最善の方法を探り、どうにかこの夜、引っ越し作業が始まった。

 ほとんど訪れるのことのなかった倉庫のなかで、これまで訪れなかったことを激しく後悔する。この本の山を見ずして本を作るなんて冒涜以外の何物でもない。出番を待つならいい。しかし、いちだんと短命になっていく本というものの商品価値において、在庫は出番のない役者の吹き溜まりでしかない。

 本は、読まれてこそ、本になるのだ。

 読まれる本を、作ろう。

5月1日(金)

 今日は妻が休みらしいので、仕事に出かけることにする。

「本の雑誌」7月号の特集「これからの『本屋』について話をしよう」の座談会収録に立ち会う。デスクワークをしながら聞いていた編集の松村が感動するほど素晴らしい座談会に。

『古本屋ツアー・イン・神保町』を三省堂書店さんに直納した後、神宮球場へ。相棒とおると野球観戦。ライアン小川対黒田の投手戦を予想するも黒田が乱調でまさかの5失点。

 神宮球場には「昭和」が残っている。

4月30日(木)

  • For All My Sisters (+DVD)
  • 『For All My Sisters (+DVD)』
    Cribs, The
    Imports
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 いちおう28日から6日まで休みだけど来たいやつはくればいいさという傲慢なゴールデンウィーク休暇に突入。来たくはないけれど仕事は山ほどあるので例年通り出社しようと考えていたところ、朝、息子と娘は学校で妻も仕事に出かけると聞いた瞬間、休むことにした。家族と仕事からまったく開放される日なんて年に一日あるかどうかだ。このチャンスを逃してはならない。

 というわけで自転車に乗って、私が最も愛する街・浦和へ。まずは調神社にお参りし、須原屋、レッドボルテージ(浦和レッズオフィシャルショップ)、パルコで買い物。タワーレコードでは今月の一枚としてザ・クリブスの「For All My Sisters」を手にする。

 昼時になったので前から気になっていたラーメン屋「鶏そば一瑳」の行列に並ぶ。あっさり鶏そばのスープの最後の一滴を飲み干した瞬間、また来ることを確信する。今度は鶏団子をトッピングしよう。

 そして、本日のメインイベント「武蔵野書店」を訪問。メインイベントといっても10坪ほどのいたって普通の古本屋さんなのだが、その普通さが私の身の丈にあっており、またときおり掘り出し物があるのだ。外の100円均一棚を眺めた後、店内の文庫を物色。何冊かの本を抱えた後、単行本の棚を目を滑らせていると一瞬、胸が高鳴る。まるでスロットマシーンでリーチ目が出た瞬間のような気分。目押しするかのごとくもう一度視線を戻すと、これまで見たことのなかった本の背表紙に「山口瞳」の文字があるではないか。箱入りの立派な造本をグラシン紙が包んでいるのでよく見えないが紛うことなき「山口瞳」の文字。しかも隣の本も似たような造本で、同じく山口瞳と印刷されている。

 おお、これは文庫本では一冊に合本されてしまった『月曜日の朝』と『金曜日の夜』ではないか! ではないか!と驚いているけれど、実は先ほど、いや今この瞬間まで、『月曜日の朝』と『金曜日の夜』がこのような形で出版されていたことを恥ずかしながら知らなかった。

 震える手で値段を確認しようとするも、本に巻かれているグラシン紙が破れそう。深呼吸をして、手首のストレッチをし、ゆっくり本を抜き出すと1500円と記されている。買った! 思わず競りでもないのに大声をあげてしまう。

 近くの喫茶店に飛び込み、買ったばかりの『月曜日の朝』と『金曜日の夜』を開く。『月曜日の朝』には田沼武能氏の写真が、『金曜日の夜』には関保寿氏の絵が多数収録されている。幸せ。

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