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7月10日(金)

ツンドラ・サバイバル
『ツンドラ・サバイバル』
服部 文祥
みすず書房
2,592円(税込)
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 服部文祥『ツンドラ・サバイバル』(みすず書房)読了。傑作、必読。

 サバイバル登山も狩猟も服部文祥氏のなかで当然となった今、浮かび上がってきたのはとてもシンプルなものだった。それは「生きる」ということだ。死に対しての生でもあり、いかにこの世を生きるか、生きるとはいったい何か、だ。

 本書『ツンドラ・サバイバル』では矛盾も欺瞞も打算も家庭もさらけ出し、2010年から2014年までのサバイバル登山行のなかで、それらについて考えたことが素直に綴られている。

 特に白眉なのは、表題にもなっており、NHKBSプレミアムで放映されたロシア・チェトコ半島を旅した「ツンドラ・サバイバル」。その広い大地で運命を感じさせるトナカイ遊牧民ミーシャとの出会いは、珠玉のような旅を産む。

 2006年に『サバイバル登山』を読んだ時にはまったく考えもしなかったけれど、『ツンドラ・サバイバル』を読んでいると、まるで植村直己や星野道夫の本を読んでいるときのような気分になる。いかに「生きる」のか、問われている。

★   ★   ★

 とある書店さんで「アメトーーク!」で紹介されヒットしている『教団X』の話題になったところ、「Amazonのレビュー見ました?」と訊かれる。

 未確認だったので会社に戻って覗いてみると、「アメトークで絶賛されていて期待しながら読んだのですが、全然でした」やら「テレビで紹介されてたみたいですが、この人の作品が好きな方以外は、読まない方が良いと思います」といった一つ星の厳しいコメントが並んでいた。

 そういえば紹介されてすぐ店頭から在庫が消えたときに、別の書店員さんが「いつも本を読んでいない人があれを読んで本を好きになってくれますかね...」と心配していたのだ。

 本を紹介するのは難しい。個人のブログやメルマガなら紹介者の趣味を理解した人が読むからただ好きなものを紹介すればいいし、友だちに紹介するなら相手の興味を知っている。でも雑誌やテレビではその媒体につく読者や視聴者を意識しないと今回のようにミスマッチが起きる。

 まあでもミスマッチが起きてもいいんじゃなかろうか。この作家は自分に合わないと思えるのもその本を読んだからこそで、次から読まなければいいわけだ。またこの書評家(この場合は芸人)の薦める本は私に合わないと分かれば、これからその人が絶賛する本を手にしなければいいだけのことだ。そのひとつひとつの積み重ねが、自分の趣味を見つけることに繋がるはずだ。

 本はそんなにちっぽけじゃない。いっぱいある。一生かけても読みきれないほどある。失敗して、失敗して、一冊の大好きな本を見つけたときの喜びは、海底に沈む財宝をすくい上げたようなもの。それに今読んでつまらなかった本が10年後にめちゃくちゃ面白く感じることもある。もちろん10年後に読んでもつまらない本もあるけどね。ただ、つまらないと感じる心があるなら、きっと面白いを見つけられる。

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