11月24日(火)
2位じゃダメなんです。
3連休に観た映画は「エターナル・サンシャイン」「ドライブ」「ブレードランナー ファイナルカット版」「カッコーの巣の上で」「殺人の追憶」「プラダを着た悪魔」。
もっとも衝撃を受けたのは「ブレードランナー ファイナルカット版」で、観終えたあと放心状態に陥る。何もかもが素晴らしい。「ゴッドファーザー」以来の強烈なインパクト。もし私がバーを開いたら「ゴッドファーザー2」と「ブレードランナー」を延々モニターに流すだろう。
そしてもう一作腰が抜けたのは「殺人の追憶」。韓国で実際に起きた殺人事件を元にした映画なのだが、再生ボタンを押した瞬間から目が離せぬどころか息を飲み込んだまま2時間過ぎちゃった感じだ。横山秀夫の小説のような濃密な世界観。演技力もハンパない。
問題は「プラダを着た悪魔」である。この映画は事務の浜田から「私のフェイバリット映画です!」と無理やり押し付けられるようにDVDを渡された映画なのだが、映画そのものよりもなぜ浜田がこの映画を愛しているのか考えるほうが楽しい。
夜、飲み会でミシマ社のワタナベ氏に会う。ワタナベ氏は書店員さんからカルト的に愛されている営業マンで、常日頃から私はその様子に嫉妬を覚えていた。ここで会ったら百年目、ついにそのときが来たとばかりに対面に席を陣取り、その魅力の謎を解き明かすべく話を伺うことにする。
ところが氏の話法というのが舞城王太郎的というか町田康的というか天気の話をしているはずが気づけばアントニオ猪木とモハメド・アリ戦の話になっていたりして、しかもしまいにはビートたけしのモノマネをしている松村邦洋のモノマネをしていたりするから理解どころか誤解もできない。
真剣に耳を傾ければ傾けるほど頭痛が激しくなり、こんなに頭が痛くなったのは高校時代の微分積分の授業以来である。あのときはそのまま寝込み学校を三日ほど休んだのだ。ならばこれ以上ワタナベ氏の話を聞いていると寝込んでしまいそうなので、どうにか氏を黙らせることにする。
そこで壮大過ぎてとてもそう簡単に答えられない質問をしてみることにした。
「ワタナベさんは、なんで本の仕事をしているの?」
ここまで根源的かつ哲学的な質問をすればワタナベ氏も熟考するだろう。飲み放題3時間の持ち時間もあっという間に過ぎ、氏が黙ったままお開きになるはずだ。どうにか頭痛もおさまり、ゆっくり酒と食事を楽しもうとグラスを手にしたところ、ワタナベ氏、こくりと頷くと、メガネを人差し指で持ち上げ、あっさりこう答えたのであった。
「本の近くにいるといいことがあるんですよね」
これまでずいぶん本や出版や自分の仕事について考えてきたけれど、そんな風に考えたことは一度もなかった。
確かに言われてみれば、本の近くにいるといいことがある。私がここまでどうにかこうにか生きてこられたのも、間違いなく本の近くにいたからだろう。
こんな考え方をしている人に勝てるわけがない。ひれ伏す。