2月26日(金)
『新編 越後三面山人記』田口洋美(ヤマケイ文庫)読了。宝物のような本だった。
県営ダム建設のため全戸移転、昭和60年に閉村した山形県と隣接する朝日連峰の山塊深くにあった新潟県岩船郡朝日村三面(みおもて)の生活そのもものを仔細に観察したルポルタージュ。
雪深い冬には集団で狩りをし、家ではテゴやミノを編み、生命が一気に芽吹く春が訪れると、シバ伐り、田植えの後、山奥に建てた小屋に居を移しゼンマイ採集、緑濃くなる夏になれば山に火をつけ焼き畑、川に入って魚採り、実り多き秋にはキノコや木の実を拾う。
自然とは、なんて豊かなんだろうか。
いやそうではない。
三面の山人たちが育んできた知恵によって自然を享受し豊かにしているのだ。代々工夫し、受け継ぎ、集落がダムに沈むまで、ずっとそうやって暮らしてきたのだ。こういう暮らしこそが「生きる」ということなのだろうと思う。最も憧れる「生きる」がここにある。
帰宅後、遠藤ケイ『熊を殺すと雨が降る』(ちくま文庫)の隣に並べる。
芳林堂書店さんが自己破産を申請。
自分たちが作っているものが世の中の人たちに必要とされていないんじゃないかという想いに苦しめられる。