高校の入学説明会。
私が参加する必要はまったくなかったのだけれど(結果として教科書を持ち帰るのに役立った)、制服採寸と説明会の間に学食が利用できるというので、28年前のソウルフードを味わうため、会社を休んで参加する。
学食はもちろん教室に入るのも卒業以来で、校舎に一歩入った瞬間から忘れ去っていった記憶がまるで赤血球や白血球のように血液の中を流れ、張り巡らされた毛細血管で爆発し、震えが止まらなくなってしまう。飲み込んだ息を吐き出すのも忘れ、気づけば涙があふれる。娘と妻から「恥ずかしいから帰って」と叱られるが、そこかしこに18歳の私がおり、友だちがいた。
一番感動したのが廊下だった。
その廊下はどんずまりの隔離教室の前の廊下なのだが、私はいつもそこで昼休みになると野球をしていた。どこかに転がっていたボールとプラスチックのバットでかなり真剣に毎日毎日野球をしていたのだ。
もちろんそこは教室の前の廊下だから人通りも激しく、みんなから迷惑がられ、先生からも何度も何度もこんなところで野球をやるなと怒られたのだけれど、我が物顔でボールを投げ、打ち込んでいたのだ。
28年ぶりに立ったその廊下は、こんなところで野球をやっているやつがいたら羽交い締めにしてロープでぐるぐる巻きにし、外に捨て置きたくなるほど狭かった。18歳の私はいったい何を考えていたんだろうか。