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8月22日(月)

文庫本宝船
『文庫本宝船』
坪内 祐三
本の雑誌社
2,700円(税込)
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 朝、金曜日から娘と居候していた実家より車を走らせ我が家へ向う。夜には合宿先から息子と妻が帰ってくるのだ。時を追うごとにフロントガラスにあたる雨は激しくなる。さすがにその雨を見て、文化祭の準備に行くと言い張っていた娘も、今日一日家で過ごすことに納得する。

 四日間、閉め切っていた家は熱気をこもらせており、窓を開けて空気を入れ替えたいもののこの雨では叶わず、クーラーのスイッチを入れた。テレビをつけると天気図が映し出され、くっきり描かれた円の中心は一直線に関東地方へ向っている。

 天気予報を聞いていると「外出は控えて」といっているので、社員・助っ人に今日は出社しないよう連絡する。今日すべき仕事は、たいてい明日にもできるのだ。僕らはみんなそのことを青山南さんに教わった。

 さてさて、自分はどうするか。どうみたって武蔵野線が一日中動くわけがない。ならばクーラーの下に寝転がって、雨の音でも聞きながら実家の本棚から持ち帰って来た沢木耕太郎の『深夜特急』を四半世紀振りに再読でもしたいのだけれど、実は本日、営業マンにとって三大仕事である新刊搬入日なのである(ほかのふたつは見本出しと部決)。

 私自身が納品するわけではないのだけれど、物が動くということは、数が違ったり物が違ったり時間通りに着かなかったりとトラブルの可能性もないわけではなく、その場合の対応要員として営業マンは新刊搬入日には必ず会社にいなければらない。もちろん社内搬入分も受け取らねばならない。

 ほとんど体内に存在しない責任感を沸き立たせ、カッパを着て家をでると、少しだけ雨脚は弱まっていた。というわけで隙をついて出社。

 トラブルは一切なく、滞りなく新刊『文庫本宝船』発売。祝。

 せめて中央線一本で通勤できる編集の宮里くらいは会社に来るかと思ったが、誰も来ず。
 そういえば本の雑誌社の社是は「無理をしない 頭を下げない 威張らない」なのであった。

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