11月6日(日)
- 『アーセン・ヴェンゲル ―アーセナルの真実―』
- ジョン・クロス
- 東洋館出版社
- 1,944円(税込)
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お抱え記者による自伝本だったり自己啓発あふれたメッセージ本だったら嫌だなという不安が数ページめくっただけであっけなくぶっ飛んだ。
ジョン・クロス『アーセン・ヴェンゲル アーセナルの真実』(東洋館出版社)は批評精神あふれる客観的なルポルタージュであり、アーセン・ヴェンゲルとアーセナルにあらゆる角度から迫った傑作ノンフィクションだった。
私を含めサポーターやクラブが求めるのは完璧な監督だ。チームを毎年チャンピオンに導き、下部組織の選手を一流に育て、交渉巧みにトッププレイヤーを招く。それでいてクラブは健全経営で、日々発展させていかなければらない。
もちろんそんな完璧な監督は世界中探しでもどこにもいない。たとえ日本ではオシムと並んで英雄視されているヴェンゲルですら、フットボールの母国イングランドでは、ありとあらゆる批判に晒されている。
そういった事実を包み隠さず紹介し、それでいてきちんと20年に及ぶヴェンゲルのアーセナルでの仕事ぶりを評価しているのが本書だ。指導法、クラブ経営、移籍交渉、プレッシャー、マスコミ......現代サッカーを取り巻くすべてがここに描かれている。
それにしても何度もいいところまでいきながら勝ち切れないチーム状況や移籍金を使わずに選手を獲る様子などヴェンゲル&アーセナルと我がミシャ&浦和レッズの似ていることといったら。浦和レッズサポも必読の書かもしれない。