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10月24日(火)

 寝ても覚めても『オブリヴィオン』遠田潤子(光文社)だ。会う人、会う人に薦めている。仕事のメールも要件よりも『オブリヴィオン』のことを書いている。先日、丸善日本橋店であった「日本橋 BOOK CON」では、どんな読書相談にも『オブリヴィオン』を薦め、半日で4,5冊売ってしまった。それくらい素晴らしい。

 2016年は『雪の鉄樹』(光文社文庫)と作家・遠田潤子を発見する年だったわけだけれど、2017年は『オブリヴィオン』を読むためにあった年となるだろう。読まねばならぬ。読まねば激しく後悔する小説だ。遠田潤子恐るべし。この10年で、これほどのインパクトを持ったエンターテインメント作家はいないだろう。

 遠田潤子の小説はあらすじを紹介してもあまり意味がない。どこへ行き着くかわからぬまま、最初の一行から最後の一行まで、まるでジェットコースターに乗ったかのようにページをめくることをおすすめする。物語に圧倒され、物語とはこんなに力強いものなのかと改めて教えてくれるだろう。『オブリヴィオン』もそういう小説だ。読み出したら本を置くことができぬ小説だ。息を吸うのも忘れ、脈打つ鼓動は早まり、読み終えると放心しているだろう。

 遠田潤子という作家は、いったい何なんだろうか。どの作品も怨念のような、情念のような、不穏な空気に包まれており、曼珠沙華のように引き込まれる美しさと恐ろしさを兼ね備えている。そんな作品の中でも『オブリヴィオン』は、より強烈だ。早く読むべし。今すぐ読むべし。2017年、必読の小説だ。

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