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11月21日(火)

  • Blue
  • 『Blue』
    大橋トリオ
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 朝4時、「だれか...、助けて...、苦しい...」という呻き声で飛び起きると、同居している義母がトイレに倒れ込んで、嘔吐しているではないか。慌てて妻を起こし、救急車を呼ぶ。意外と落ち着いていられたのは、この夏、取材先で脱水症状を起こした宮田珠己さんを救急車で搬送した経験があったからか。

 てっきりペースメーカーを入れている心臓か持病の高血圧が原因かと思ったのだけれど、搬送された病院での診察結果は、耳にある耳石が動いたことによるめまいと吐き気だそうで、耳石を元の位置に戻すとすっかり回復し、妻とともにタクシーに乗って帰宅してきた。おおごとにならず一安心。何せ、今週末にはアジア・チャンピオンズリーグの決勝戦が控えているのだ。

 出社。デスクワークを片付けた後、レッズサポ仲間のキリちゃんと「オーレオーレ」で昼食。"神保町の太田篤哉"と勝手に呼んでいる凄腕マスターは、心地いい人間関係を築く接客のプロ。

 営業。神楽坂のかもめブックスさんを訪問。相変わらずこんな本があったのか!といううれしい喜びが沸き立つお店。なぜか私も参加させていただいているオープン3周年記念企画「WORKERS BOOKSHELF」フェアをじっくり眺める。26人の出版営業マンが選んだ本が並んでいるのだけれど、自社本をごりごり並べる野暮な人はおらず、みな自身の読書体験でセレクトしているのが素晴らしい。その後、先月、丸善日本橋店で行なわれた「日本橋BOOKCOM」の出展料をいただきにあがり、東京、銀座などを夕方までかけて営業。

 それにしても初冬の東京の夕暮れは、なんでこんなに美しいんだろうか。BECK「Colors」ヘビロテの後にヘビロテしている、大橋トリオ「Blue」を聴きながらしばし佇む。

11月16日(木)

 通勤読書は唯川恵『淳子のてっぺん』(幻冬舎)。先日出張で訪問したジュンク堂書店三宮店Sさんより「絶対号泣するから電車のなかで読んじゃダメ」とオススメされたのに、電車のなかで読み始めてしまった。案の定、冒頭から涙を堪えられず途中下車。肩を揺らして泣く。尊敬する登山家・田部井淳子さんをモデルにした小説。

 出張やらイベントやらで代休がずいぶん溜まっており、昨日か今日休む腹づもりだったのだが、昨日は会議、今日は来客で結局休めず。疲労は溜まる一方。当たり前のことだけれど、余暇を過ごすものを作ってる人間が、余暇を過ごしていなければよいものなど作れるわけがない。会社に着くと「おすすめ文庫王国2018」の社内座談会のゲラが出ていたので、真っ赤になるほど手を入れる。

 定期購読通販サイト「富士山マガジンサービス」のAさん来社。定期購読を増やすための施策を指南いただく。要するに浦和レッズのシーズンチケットホルダーを増やすためにはどうしたらいいのか考えるのと一緒なのだったが、ならばなぜ私が23年もシーズンチケットを買い求めているかといえば、レッズへの愛なのだった。愛に見返りは求めず──では話が終わってしまうので、焦げついた脳を真っ白にして話を伺う。

 昼は「光華飯店」で味噌ラーメン。もはやふつうの量の味噌ラーメンすら持て余してしまう46歳。若かりし頃、ラーメンチャーハン餃子とペロリと平らげ母親が残した中華丼まで食べていた食欲はいったいどこれいってしまったのだろうか。

 午後、販促DMの制作に勤しむ。あとは編集部から新刊のデータを待つのみ。

 定時で上がり、帰宅。ランニング6キロ。夕食後、某所より頼まれている単行本の編集作業。

 twitterやFacebookでは今夜放送の読書芸人の「アメトーーク!」の話題で持ちきり。しかしとてもそんな時間まで起きてることは不可能で湯たんぽがわりの息子と抱き合いながら11時に就寝。

11月6日(月)

 痛風発症、悶絶の苦しみに四つん這いになって耐え忍びつつ、念願叶って戸田書店掛川西郷店の高木さんの話を伺いに行ったのは先週火曜日のこと。高木さんは本業の書店業のかたわら、本屋のない地域の人たちに本を届けたいと自費で軽バンを購入し、幼稚園の庭先などへ車を走らせ移動書店を開いているのだった。平日も休日も「本屋」なのである。

 魂ふるわせて帰宅すると、金曜日には博多へ飛んだ。と言っても私は飛行機を信用していないので、新幹線で横移動した。そしてこちらも積年の想い叶ってブックオカに初参加。12年目を迎えた博多の本のお祭りは、相変わらずボランティアで運営され、トークイベントやのきさき古本市を開催している。会う人会う人みんな笑顔で、心底本が好きなのが伝わってくるのであった。

 博多から帰宅した翌日は神保町ブックフェスティバルで店番をした。すずらん通りは本を買い求めるたくさんの人たちで溢れかえり、そういった人たちと言葉を交わしながら本を販売するのは楽しさと喜び以外なにものでもなかった。

 そんな一週間を過ごしていたら、ここ数年、自分の心に巣食っていた本への自信のなさがすっかり消えた。売れるとか売れないとか、必要とされているとかされてないとか関係ないのであった。

 本が好きだ。

 ただそれだけなのだった。

 18歳の夏に、2冊の本を読んで興奮し、先も考えず出版業界へ飛び込んだのは、ただただ人生を本の近くで過ごしたかったからだ。

 本が好きなのはあれから30年近く経ってもまったく変わっていない。幸運にも私は今、本を仕事にできているのだ。ならば、もう余計なことは考えまい。ブックオカの「のきさき古本市」に集まった人たちが浮かべていた神々しいまでの笑顔を私も浮かべ、毎日、本と触れ合っていくのだ。

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