11月26日(月)
「さて行くか」と四度声をかけてから立ち上がり、三連休明けの出社。
通勤電車では、その三連休中に古本屋さんから届いた出久根達郎の自伝エッセイ『逢わばや見ばや』(講談社文庫)を読む。昭和三十年代、ネットも検索窓もなかった時代、言葉を覚えたければ図書館に通って広辞苑を読み込み、文学を知りたければ全集を紐解いていた。恥ずかしくなるほど人々は勤勉に生きていたように見えるし、ノスタルジーでしかないだろうけれど幸福に見える。
一月の新刊のチラシを一種作ってから営業に出かける。心なしか本屋さんが混んでいるように見えるのは給料日明けだからだろうか。給料日明けではない僕も笹間良彦著『図説 日本未確認生物事典』と吉田よし子著『マメな豆の話 世界の豆食文化をたずねて』(ともに角川ソフィア文庫)を手にレジの列に並ぶ。
夜、護国寺へ。本の雑誌社に入社以来お世話になっていた本屋の店長さんのお通夜に。レジに立っている時のような笑顔の遺影を見ていたら「杉江ちゃんさあ」といつもの声が聞こえきて涙があふれてくる。どうしてこんな僕をあんなに可愛がってくれたんでしょうか──。
お清め後、赤坂に移動して本屋大賞の会議。15周年を迎える本屋大賞の諸々の打ち合わせ。続ければルーティンになって楽になるかと思いきや毎年毎年課題が浮かび上がり、22時過ぎまで議論が続く。
23時40分帰宅。晩飯を食べ、「おれはいつ反抗期が来るんだろう」と悩む中二の息子と就寝。