1月8日(火)
千葉を営業。千葉は今、営業で廻っていて、とても楽しい。刺激にあふれている。というか単に本を買いたくなるお店が多い。私の仕事は本を売ることなのだけれど、サラリーマンである以前に人類であるわけで、人類というものが他の哺乳類と決定的に違うのは、食欲、性欲、睡眠欲以外に購書欲があるということで、だから本を買わないわけにはいかないのだった。それは本能であり、反射だから仕方ない。
その本能を最大限に引き出してくれる本屋さんが千葉には多い。各ターミナル駅に出店されているくまざわ書店さんはどこも必要な本がきちんとあり、津田沼には県下最大級の丸善さんが使いやすく改装オープンされている。残念ながら昨年、柏の浅野書店さんや新星堂さん、津田沼の昭和堂さんという長年地域の読者を支え、想像してきた本屋さんが閉店してしまったが、それでも店内に入るとわくわくしてくるお店が千葉にはたくさんある。
最も刺激的に先頭を駆け抜けているのは、千葉のJUNNUに校正・校閲の鴎来堂&かもめブックスの柳下氏が出店し、S店長が運営している「16の小さな専門書店」さんだろう。このお店にはミニシアターが併設され、そこで映画マニアでもあるS店長が、自ら交渉した映画を上映しており、もちろん映画だけでなく、並べられている本、その本の並べ方やフェアが本好きの心をぐっと鷲掴みにするものばかりで、たぶんここで本気で購書本能を発揮したら3万円くらいすぐ買ってしまうはずだ。自分の家の近所にあったら最もキケンな本屋さんのひとつだろう。
そんな中、本日まず最初に訪問したのは、千城台のときわ書房さんだ。千葉駅からモノレールに揺られて約30分、開発された住宅街の駅前ショッピングセンターにある文具を入れて80坪の本屋さんだが、その手入れの行き届いた棚と平台には感動を覚える。まさに綺麗に整地され、耕された棚なのだ。
ときわ書房さんといえば船橋本店や志津ステーションビル店も有名で、どちらもそれぞれ買いたい本が山ほど見つかるお店なのだけれど、私はこの千城台店さんのオーソドックスな、ディス・イズ・本屋さんな品揃えがとても好きだ。お客さんの欲しい本が過不足なく全ジャンル並べられ、80坪でも町を支える立派な総合書店。自分の家の近所にあったら最も幸せな本屋さんのひとつだろう。
購書欲を高める本屋さんというのは、大きさや在庫量といった規模の違いではなく、結局そこに人(書店員さん)が居るかどうかなのだと思う。かつて大型書店さんが隆盛を極めたのは、お店の大きさではなく、そこに優秀な、お客さんに鍛えられた、特に専門書の担当の書店員さんが居たからなのではないか。結局、その売り場を耕す人次第なのだ。
そうして、以前、津田沼の丸善のS店長さんに教わったことを思い出す。
「品数と品揃えは違う」
S店長さんとスタッフの方々は今、1000坪を越える大型書店の、品数ではなく品揃えにこだわってお店を作っている。それが楽しくないわけがない。自分が住んでいる近所になくても本の買い出しに行きたくなる本屋さんのひとつだ。