5月7日(木)
4時半起床。
大西暢夫『ホハレ峠』(彩流社)読了。
まさか岐阜の山奥の電気もガスも水道もないところで四季折々の自然とともに暮らしていたおばあちゃんのオーラルヒストリーが、これほどまでに壮大になるとは思いもしなかった。
しかも著者の執念というか惜しみない取材により、たくさんの奇跡的な出会いがあり、多くの人たちの記憶の中でこのダムに沈んだ村との想いが交錯していくのである。
人間はどこでどう暮らそうとやはりその土地、土地と切って暮らすことはできないわけで、特に現代のような都市生活でなければ、さらにその土地での暮らしにはその土地ならではの意味があり、それは長らくその土地で受け継がれてきたものだ。
ダムに沈むということはその一切合切が失われてしまうというわけで、この本はその部分を特に声高に叫びはしないけれど、叫ばないからこそ伝わる慟哭が深く突き刺さる。
まあしかし。そんな社会的な部分はともあれ、「ポツンと一軒家」のようなところで暮らしたそのおばあちゃんのその壮大なるオーラルヒストリーに身を委ねてほしい。人生って......生きるって......と素晴らしい小説を読んだ時のような大きな感動が押し寄せてくる。
いや、人生ってやっぱりすごいわ。生きなきゃ、一生懸命生きなきゃ、まっすぐ生きなきゃ、と思うのであった。