4月5日(月)
この一年ほど高野秀行さんのオンラインイベント「辺境チャンネル」をともに企画し運営している渡社長とは、日々のメッセンジャーが30通40通を超えるほど熱愛発覚状態なのだけれど、その渡社長から何もかも用意周到にして前日までにはすべてのことを終えている私に、「杉江さんはなんでそんないつも心配症なんですか? 失敗に対する恐怖? 自尊心? 子供の頃のトラウマ?」と真顔で訊かれたのは、つい先日のことだった。
自身そんなことはあまり考えたことなく、子供の頃から夏休みの宿題は7月中に終わらせ、すっきりした気持ちで残り一ヶ月夏休みを思い切り満喫していたので、性分としかいいようがないのだが、まあそうやって前もって準備することで失敗することが限りなく減り、だからこそ渡社長のいう「失敗に対する恐怖」がいつも失敗する人に比べたら増大し、さらに準備を執拗にするという好循環が生まれているのではないかと答えたのであった。
しかしそうは答えたものの、よくよく考えてみれば、私は確かに失敗を極度に恐れており、なぜそんなに恐れるのかといえば、やはり心のどこかで仕事ができる人間と思われたい、あるいは人から叱られたくないという気持ちがかなりあるのではないかと思い至ったのである。
社員6人で異動も昇進も勤務評価すらなく、しかもほぼ全員本屋さんに並ぶ新刊には興味津々なのに他人にはまったく無関心という人たちに囲まれながらも、こうして他者の視線や評価を気にして生きてしまうのが人間という生き物なのだろうか。
まあそれはさておき、失敗しないで過ごす最たる術は、新たなことにチャレンジせず、勝負することなく昨日と同じ今日を繰り返すことだろう。サッカーでいえば1対1でまったく仕掛けず、バックパスしているような人生だ。
振り返ればここ数年、私の人生はバックパスばかりしていたような気がしてきたので、本日、朝、8時に出社すると「チャレンジ! チャレンジ!! チャレンジ!!! 仕掛けろ杉江!」と段ボールの切れ端にマジックで書き出し、壁に貼り付けたのだった。
遅れて出社してきた浜田がその野球チームのスローガンのようなポスターを見て目を丸くしていたので、浜田の分として「おかわり! おかわり!! おかわり!!! 飲め飲め浜田」というのも貼ってあげた。
出版社の社員がチャレンジすることといったら何か? それはもちろん本を出すこと、売ることであり、その手前には企画があり、営業があるわけだが、一気に企画書を書き上げ各所に送り、単行本の企画書を送っていた沢野さんから電話あり、また先日デザイナーさんに入稿していた鈴木輝一郎さんの単行本の原稿もレイアウトが済んでゲラがでてきたり、書籍化打診していた原稿をまとめたりしているうちにすっかり日が暮れて夕方になっていたのであった。
ちなみに渡社長は、何事も当日に一気にやり進めるという性分らしい。それで毎回失敗するから失敗が気にならなくなったそうだ。