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「第2回 京都水無月大賞」決定!

2009/06/02更新

第二回京都水無月大賞が決定しました!

『明るい夜』  黒川創

文春文庫 2008/10

第二回京都水無月大賞は『明るい夜』 に決定いたしました!
参加各店で大賞作フェアが開催されます。ぜひお立ち寄り下さい!



【水無月会メンバーのコメント】

●ジュンク堂書店京都BAL店 市木さん
登場する男女は若いのに似合わず、まったく群れない。
寝れなくて苦しむのも、誰とも繋がれないのも、夢がかなわないのもまったくもって誰のせいでもないとわかっているかのようだ。いろいろな主題が組み合わさって、読む者を本当に楽しませてくれる。センスの良い小説って本当は「普通のこと」しか書いていないんだなと思わせてくれる京都小説です。
●紀伊國屋書店MOVIX京都店 西尾さん
京都を舞台にしているから、入り込みやすい。
この先の自分に悩みながら、前になかなか進めず日々か過ぎていく・・・。
今の若者のリアルな姿があるような気がしました。
●恵文社バンビオ店 大瀧さん
「よるべない」という言葉がしっくりくる小説。実は若者も老人も多い街・京都。この街の暮らし、文化。独特の空気が巧みに綴られています。
●大垣書店イオンモール京都ハナ店 杉山さん
京都舞台なので話にはすっと入っていけました。細かい描写が上手いですね。
個人的には銭湯の場面が非常に印象的でした。全体を通してぬる湯に浸かってい
るような心地よさがありました。
●アバンティブックセンター 安西さん
「たぷん」・・・この音にやられました。京都の銭湯にこれほどふさわしい音はありませんねえ。昔の人たちの日々の営みや風習を、これほどリアルに胸にひびく言葉で読んだ記憶がありません。語ることの素晴らしさ、聴くという姿勢の大切さをあらためて感じさせてくれた秀作だと思います。
●三省堂書店京都駅店 中澤さん
京都っゆー街はほんとに若人の青春が似合う場所なんだなぁとつくづく思いました。
思い悩むのもすなわちこれ立派な青春ですよ。
自分が一体何なのか。何をしたいのか。どんな自分になりたいのか。
学生のときに陥りがちなこの悩みを何も言わずにただあるがまま包み込んでくれるような無言のやさしがあるような。若人の味方・京都の魅力再発見な1冊でした。
●京都大学生協 山下さん
特別でない私たち。ここに生まれ落ちてここで人とつながった。誰もが持っている、選ばれなかった私たちの桎梏が淡々と鴨川の流れにのせて紡がれます。秀作だと思います。
●パルナ書房 久野さん
生きづらい今の時代を自然に肯定的に描写したいい作品だと思います。
するすると読みきれました。
「ポトスライムの舟」「ばかもの」等の代表的なロスジェネ時代の作品のなかでどれがいいかなあ~って思わせてくれた一冊でした。
●アバンティブックセンター南草津店 多田さん
まだ20代で、京都に住んでいて、自分が何者か分からない不安を感じながらも、何かを求めて毎日を生きている、そんなあなたに是非この物語を読んでほしいと思います。
●大垣書店営業本部 吉川さん
京都で青春時代を過ごした人なら、きっと鴨川べりにまつわる思い出が一つや二つある筈。私たちと同じようにひっそり、ささやかに生きている人々の姿に感動。
何でもない日々の素晴らしさに気が付かされる一冊。
●ふたば書房卸事業部 大澤さん
印象を言葉で言うのは難しいけど
例えていうと、静かな場所にいて声を出すのを遠慮しあっているような
もやもやに似ているかなぁと思います。
登場人物に共通したつかみどころのなさが私にはときどきたまらなくなりました。
具体的に京都の地名が出てきますが
町の印象を言葉にすると確かにこんな一面も、あるかもしれません。
●恵文社西大路店 加藤さん
ものすごい閉塞感、行き詰った感じが少しずつじっくりと開放されていく感じが良かったです。
特別な事件とかなくて、でもちょっとずつ色んな世代の人(国も)触れ合うことって必要なんだな、と思わせてくれました。
すごく共感できるわけではない登場人物たちなんですが、全員を応援したくなるのはなぜでしょう?
踏み込みすぎず、離れすぎずのこの距離感ってわたしたちみんなに必要なことなのかもしれないと思わされました。
●ジュンク堂書店京都店 山本さん
「爽やかな感動」と裏表紙にはありますが、私にはそれとはまたちがう、
ささやかな、おぼろな心のなかの何かをそっとすくい出してくれるような、
なかなか得がたい読後感の小説でした。
●ふたば書房御池ゼスト店 畠山さん
京都に暮らす若者たちの物語。ふわふわ浮かぶ若い彼らの生は、出会う人々、そして彼らの記憶が織り成す時間の縦軸と横軸の中で、ゆっくりと進んでいく。同じ若者として「若さとは不安である」と考えてしまうような始まりから、しかし彼らは「いま、ここをしっかりと生きている」と感じさせてくれる終末。
じんわりと心に響いてくる作品です。
著者の黒川さんは京都を基盤に活躍する気鋭の作家さん。
京都の書店員として、いま最も推していかなければならない重要人物だと思っています。

恵文社バンビオ店でのフェアの様子です。ぜひいらした際はのぞいてみてく ださい!

店舗画像

「第2回 京都水無月大賞」

2009/04/20更新

昨年「酒飲み書店員大賞」にならって始まった、京都の書店員有志による「京都水無月大賞」。「もっともっとおもしろい文庫ありますえー!!」と今年は14名にパワーアップして、第二回京都水無月大賞を開催いたします!

『第2回 京都水無月大賞』

第一回大賞作『レイン・レインボウ』加納朋子著(集英社文庫)に次ぐ大賞作は果たして?発表は2009年6月1日(月)です。お楽しみに!

  • フィンガーボウルの話のつづき
  • 風少女
  • 依頼人は死んだ
  • 宇宙でいちばんあかるい屋根
  • ぼくたちも妊娠できますか?
  • つむじ風食堂の夜
  • プラネタリウムのふたご
  • 河童が覗いたインド
  • 最後の願い
  • 夢で会いましょう
  • うたかたの日々
  • 明るい夜
  • 袋小路の男
  • クレイジーカンガルーの夏

「京都水無月大賞」ブログ:http://d.hatena.ne.jp/minaduki_taisho/

★最終候補作★
フィンガーボウルの話のつづき
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アバンティブックセンター南草津店 多田さん推薦

『フィンガーボウルの話のつづき』  吉田篤弘(新潮文庫)  2007/07

ビートルズ「ホワイト・アルバム」から連想された短編集。
子どもの頃にラジオで初めてインパクトある音楽を聴いたり、面白い小説に出会った時の純真な気持ちを思い出しながら読みました。
そういう音楽や小説から衝撃を受けた時って、やっぱり頭が「真っ白」になるもので、その真っ新な気持ちと「ホワイト・アルバム」の白いジャケットが重なり合う気がして、とても興味深かったです。
水無月にちなんで、第7話「その静かな声」を特にお勧めします!

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風少女
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紀伊國屋書店MOVIX京都店 西尾さん推薦

『風少女』  樋口有介(東京創元社 創元推理文庫)  2007/03

柚木草平シリーズで知られる樋口有介さんのデビュー2作目にして、直木賞候補にもなった作品です。まぁ、そんなこと知らずに読んだんですが・・。
父が危篤のために帰省した斎木亮は、中学生の時に憧れていた川村麗子の死を知らされます。彼女の死に疑問をもった斎木は死の謎を解き明かそうとするお話。
20年程前に書かれた作品ですが、時代をあまり感じさせません。
ミステリなのに、斎木の語り口が軽快だからか、どろどろとした暗い感じではなく、むしろ爽やかなかんじがします。あまりミステリが好きでない方にも、青春小説のような気分で読んでもらえる後味の良い作品です。

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依頼人は死んだ
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恵文社西大路店 加藤さん推薦

『依頼人は死んだ』  若竹七海(文春文庫)  2003/06

天才的な頭脳を持った冷酷な殺人犯、なんかでなく、ごくごく普通の隣人の自覚の無い悪意を堪能できます。
とにかくイヤな奴を書くのが上手い!!
絶対身近にいてほしくないし関わり合いたくない!!
と思うことは間違いないですが、なんかいそう。
女流にありがちな(偏見?)湿度の高い人物描写はなしで、カラッとサラッとかわいた感じなので読後感は意外とさわやかです。主人公の女性探偵(契約社員)葉村晶の組織に頼らず、常に一人で立っていると> ころが格好良いです。
連作短編集ですが、ひとつずつ最後の一行まで手を抜かず読むことをおすすめします。

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宇宙でいちばんあかるい屋根
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三省堂書店京都駅店 中澤さん推薦

『宇宙でいちばんあかるい屋根』  野中ともそ(角川文庫)  2006/07

いいなーこれ!すごくいいよーこれ!ほんとに。
何がいいって胸に刻んでずっと大切にしていきたい宝物のような言葉がいっぱいなのです!
キックボードを乗り回し、14歳の女子中学生・つばめにツケツケともの申す素性の知れない奇妙なおばあさん・星ばあの言葉はそれはもう鮮烈。
14歳の女の子に何もそんな・・・って思ってしまうほどイジワルで容赦なく厳しく、力強い言葉。
なのに言葉の端々ににじむ思いやりとやさしさ。
くぅ~しみるなぁ・・・っ!
悪態ついてばかりだったつばめと同様いつしか、星ばあに特別な親愛の情を抱いてしまうのです。あぁ。星ばあが忘れられない。
そして星ばあの名言以外も、じーんっとしみてきます。
14歳の少女の平穏そうな中でも息苦しさを感じる多感さがなつかしくて。
誰かが誰かを思いやるやさしさには、泣きたくなるようないとおしさがこみ上げてきて。
見上げた星空のように、静かにやさしくきらきらと光るとてもとてもすてきな1冊です。

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ぼくたちも妊娠できますか?
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ジュンク堂書店京都店 山本さん推薦

『ぼくたちも妊娠できますか?』  ビル・ソーンズ/リッチ・ソーンズ(早川文庫)  2006/04

ハヤカワのサイエンスエッセイが好きで「キリン伝来考」「変な学術研究」「火星の人類学者」
色々まよったんですが、インパクト勝負でこの本にします。
どこから読んでもおもしろい。まじめなのにくだらない。
ろくでもない質問が続きますが、楽しい一冊です。

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★最終候補作★
つむじ風食堂の夜
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ふたば書房御池ゼスト店 畠山さん推薦

『つむじ風食堂の夜』  吉田篤弘(ちくま文庫)  2005/11

日本のどこかにある「月舟町」の<つむじ風食堂>に集う、ちょっと風変わりな人たちのささやかなエピソードを綴ったお話。そこから見えてくる彼らの暮らしの営みは何となくどこにでもありそうで、懐かしさを感じさせてくれます。でもその優しくも淡い文章は、風のように私たちの身体を過ぎ去っていくような気がします。
だからこそ、一文一文をゆっくり噛み締めたい。
静かな夜にコーヒーでも飲みながら読みたい一冊です。

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プラネタリウムのふたご
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ふたば書房京都タワー店 佐藤さん推薦

『プラネタリウムのふたご』  いしいしんじ(講談社文庫)  2006/10

プラネタリウムで拾われたふたご、タットルとテンペル。二人の育つ村は工場のせいで星が見えない。聖なる山を侵食する工場を持つ村の人々は、暗闇で光る星と星の物語を必要としている。成長したテンペルは村を出てサーカスの手品師になり、タットルは昼は郵便配達員、夜はプラネタリウムで星の語り部となる。
手品師と星の語り部、遠いようで近い。
だます才覚とだまされる才覚が、くっきりと浮き彫りになる職業である。
例えば、自分の起こした奇跡に心底驚く、ということができないと成り立たないのである。
大人たちは、サーカスやプラネタリウムのようなものが、つまり、ゆめ・まぼろし・うまい嘘がどれだけ貴重で犯すべからざるものか分かっていると思う。それが分かっていない者は痛い目に遭うことも分かっている。
この小説は、役割が配置された物語、ファンタジーである、それは、うまい嘘の一つだ。
だとすれば私は「最高のお客」でありたいと思って読んだ。

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河童が覗いたインド
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アバンティブックセンター京都店  安西さん推薦

『河童が覗いたインド』  妹尾河童 (新潮文庫)  1991/03

長年の愛読書です。河童さんを知らない世代が増えつつあるので、往年の大ベストセラーをあえて推薦したい!こんなに、這いずり回って覗き込んだ旅行記がかつてあったでしょうか?ヨーロッパや日本の覗き歩きもありますが、やはり最高なのはこのインドでしょう!人類の好奇心が生み出した最高の産物!それが本書です。とにかくどのページからでもかまいません。覗いてください。人間くさくて、暑くて、大きくて、美しいインドがそこにあります。

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最後の願い
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大垣書店三条本店 吉川さん推薦

『最後の願い』  光原百合(光文社文庫)  2007/10

「0がφになる。(一本線を入れるだけ!?)そんな単純な様で奥深きお話。」
作りたい劇団がある!名前は「劇団φ」。
ある日度会恭平は思い立った。
彼は役者である。
役者といえば色男。色男といえば…。
お約束だが、人物金はなかりけり。
武器は無駄に冴え渡る頭脳と変幻自在の容姿だけ。
その才能だけを武器に、時にボーイに化けパーティーに潜入し、
またある時は古びた洋館で草をむしり、出会った謎を斬りまくる。
クスリと笑えるエピソードあり、やりきれない切ないお話ありの、
連作ミステリー短篇集。
全ての謎が収束するラストが爽やかな感動を呼び起こします。
ひとりの力には限界がある。
誰かと一緒に頑張るっていいな~と思える作品です。?

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夢で会いましょう
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大垣書店イオンモール京都ハナ店 杉山さん推薦

『夢で会いましょう』  村上春樹・糸井重里 (講談社文庫)  1986/06

80年代を代表する両者が競作した、奇妙で素敵なショートショート集です。思わずクスリとなったり、「えっ?」となるような変な作品もあったり。非常に上位にバラエティに富んでます。深読みするよりさらっとこの変な世界を楽しんだほうが良いかと思います。
『パン屋再襲撃』(文春)の前日譚ものっています。

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うたかたの日々
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京大ブックセンタールネ 山下さん推薦

『うたかたの日々』  ボリス・ヴィアン (ヤカワepl文庫)  2002/01

「現代の最も悲痛な恋愛小説」と評され、「現代の最も美しい恋愛小説」でもある。
理性では読めません。
真面目な方はアルコールとともにお召し上がりください。

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★最終候補作★
明るい夜
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ジュンク堂書店京都BAL店 市木さん推薦

『明るい夜』  黒川創 (文春文庫)  2008/10

登場する男女は若いのに似合わず、まったく群れない。
寝れなくて苦しむのも、誰とも繋がれないのも、夢がかなわないのもまったくもって誰のせいでもないとわかっているかのようだ。いろいろな主題が組み合わさって、読む者を本当に楽しませてくれる。センスの良い小説って本当は「普通のこと」しか書いていないんだなと思わせてくれる京都小説です。

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袋小路の男
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パルナ書房 久野さん推薦

『袋小路の男』  絲山秋子 (講談社文庫)  2007/11

男女間のこのどうしようもない形が、切なくて哀しいんだけど、でもなんか分かる気がする。
でも、もう、しゃーないよなーと思う。ほんだらもう、それでいいんじゃないかなーと思う。
まーいーかぁ・・と思えてしまうような、どうしようもないようなほのぼのさがある。
同じカタチではなくても、何かどこか共感してしまう人ってのは、実は世の中にはたーくさんおるんではなかろうか・・?と思う。

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★最終候補作★
クレイジーカンガルーの夏
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恵文社バンビオ店 大瀧さん推薦

『クレイジーカンガルーの夏』  誼阿古 (ソフトバンクGA文庫)  2006/11

大人の都合で振り回されて、文句いったら
「こどもはだまってなさい!」なんて言われた幼少のきおく・・・
いつの時代も”そういうこと”があったようです。
仲間が「大人の都合」で困って悩んでる。
じゃあどうする?おれたちに何ができる?いま、できることしなきゃだろ!!
困難に立ち向かっていく姿がまぶしい。
アホすぎるまっすぐさがいとしい。
あきらめることを知ってしまった背中がせつない。
おとなの階段、のぼっちゃってます。
表紙イラストからくるさわやかイメージのちょっと斜め上をいく、少年たちの成長ストーリー。
舞台は神戸やけど、京都でオススメしちゃいますよ!

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