第1回「震撼する神がかり的名作」

Page 4 神がかり作と、名作『DEATH NOTE』の間にある一線

超名作の『DEATH NOTE』や『シグルイ』も
「神がかり」とは一線を画している

DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)
『DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)』
大場 つぐみ,小畑 健
集英社
421円(税込)
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個人的に「惜しい!」と思える作品はたくさんあります。例えば、最近の完結作なら『DEATH NOTE』(原作・大場つぐみ 作画・小畑健)、未完作なら『シグルイ』(原作・南條範夫 作・山口貴由)なども頭をよぎりました。両作とも大好きなマンガですし、超名作であることに疑う余地はないのですが、「神がかり」かというと悩ましいところです。

現代のマンガ――とりわけ少年誌では「エログロ」に対する自主規制もあり、一定の制約の範囲内で表現をせざるを得ないという事情もあります。『DEATH NOTE』はメジャー誌でやるなら、あそこまで緻密にやるしかないというほど、作画もストーリーも完成度が高い。でも、制約がなければもっと"スゲエ作品"になったのではと、ついつい考えてしまいます。

神は純粋な表現者の
もとに降りてくる

シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)
『シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)』
山口 貴由
秋田書店
596円(税込)
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マンガには、いつの時代も何らかの制約がつきまとってきました。商業誌である以上、一定の"大人の事情"はつきまといます。そんな背景を感じさせずに、作家の純粋なクリエイティビティが真っ直ぐに読者に伝わる――。そんなエネルギーを持っているのも「神がかり作品」の条件かもしれません。

現代でも、実験的な作品が発信される雑誌・媒体はまだまだあります。『寄生獣』が連載された『アフタヌーン』もそうですし、残虐表現がこれでもかと出てくる『シグルイ』連載中の『チャンピオンRED』は、一部では「秋田書店の赤い核実験場」と言われるほど、過激なマンガのオンパレード。マンガ雑誌やコミック売り場をうろうろしていると、まだ知らない雑誌やコミックスが発売されていることに気づかされます。

純粋な表現者が人智を絞り尽くすことで、初めて神は降りてくる。今回挙げたようなマンガを読んでいると、つくづくそう感じさせられます。そんな表現者の「神がかった作品」に、一作でも多く出会えることを、神に祈らずにはいられません。

HAKUEI的「神がかったマンガ」とは
一、作中の世界観がある種の現実感を持って読者に迫りくるマンガである
一、作品自体が「人間とは何か」を問いかけてくるマンガである
一、アイディアや物語の昇華法が、人間業とは思えないマンガである
番外、"大人の事情"を読者に感じさせないマンガである

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