第5回「ドラマ・映画だけじゃわからない! 原作マンガの凄味」

Page 5 『SLAM DUNK』『宇宙兄弟』は限界を突破できる

ゲキコミが考える実写版『SLAM DUNK』

Slam dunk―完全版 (#1) (ジャンプ・コミックスデラックス)
『Slam dunk―完全版 (#1) (ジャンプ・コミックスデラックス)』
井上 雄彦
集英社
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そしてゲキコミはまだ実写化されていない、禁断の作品にも手を出します。そう。かの名作『SLAM DUNK』です! 基本的にスポーツ漫画は、役者の運動能力やフォームの見栄えなど実写化にあたって課題が多く、なかなか良作になりづらいのですが、役者次第では可能ではないでしょうか。

まず主役の桜木花道(さくらぎ・はなみち)には、TOKIOの長瀬智也をキャスティングしたい。個人的には、桜木=長瀬は鉄板なんです。長瀬君は決して役者として器用なほうではないかもしれませんが、『池袋ウエストゲートパーク』や『タイガー&ドラゴン』など、ハマったときの爆発力は物凄い。粗野でありながらも純朴さを残している桜木は、まさに彼のためにあるようなキャラクター。もちろん長身で手足も長いのだから、きっとハマるはずです。

もう一人の主人公とも言える流川楓(るかわ・かえで)は、小栗旬! クールな役からウェットなキャラクターまで自在の演技力がありますし、この2人を主役クラスに配役できれば、作品化もかなり現実味を帯びてきます。そして巨漢の赤木剛憲(あかぎ・たけのり)か魚住純(うおずみ・じゅん)にハンマー投げの室伏広治をキャスティングする。あの中身の詰まった肉体は実に魅力的。赤木の妹で、桜木が恋心を寄せる晴子ちゃんにはやはり相武紗季(笑)。あとは、EXILEのTAKAHIRO君に少しマジメな感じになってもらって、メガネ君こと木暮公延(こぐれ・きみのぶ)を演じてもらいましょう。そして安西先生にはマイク真木に太っていただくか、西田敏行を据える。このキャストなら作品をしっかり構築しながら、いろいろな意味での話題性をも提供できる。キャストの年齢的な問題をツッコまれたら、「山本太郎だって25歳の時に『バトルロワイヤル』で中学生役を演じている。まったく問題ない!」と答えることにしておきましょう(笑)。

『宇宙兄弟』は実写で映える

宇宙兄弟(1) (モーニング KC)
『宇宙兄弟(1) (モーニング KC)』
小山 宙哉
講談社
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『SLAM DUNK』は実写化の難しいスポーツというジャンルですが、まだ実写化されていない作品で映像向きの作品があります。それは僕の大好きな『宇宙兄弟』。幼い頃、交わした約束を胸に南波六太(なんば・むった)と日々人(ひびと)という兄弟が宇宙を目指す物語です。月や宇宙が舞台となるだけに、CGなどフル活用すると画面映えする実写化作品になるに違いありません。

まず、主人公の六太は妻夫木聡。ここは窪塚洋介に頭をもじゃもじゃにしてもらうか悩んだんですが、素朴で愛嬌のあるキャラクターというところで、ぜひ妻夫木君にお願いしたい。いい感じの無精ひげもモジャモジャの髪型も似合うはず。弟の日々人は三浦春馬もハマるとは思うんですが、ここは敢えて「こいつを持ってくるか!」とキャスティングでも勝負したい。ここは思い切ってお笑いコンビ「はんにゃ」の金田哲(かなだ・さとし)を。そしてヒロインの伊東せりかには、宮崎あおいか榮倉奈々をキャスティング。その他のサブキャストについては、テレビ局や配給会社からビジュアルアドバイザーとしての依頼があるまで、温めておきましょう(笑)。

しかし今回は思いもよらぬ方向に妄想が膨らみました。「このドラマの原作を読め」のはずが、最後には「ゲキコミ的キャスティング大会」に(笑)。今回はある意味中学生のように純粋にキャスティングを考えましたが、本来原作マンガをドラマ化する際に大切なのは、まずイメージがハマるかどうか。極端に言えばそれだけと言ってもいい。細かく言うと原作のイメージに忠実かどうかではなく、あくまで脚本や演出のイメージにハマる役者をキャスティングできればいい。しかし昨今では、キャスティングすら仕掛けの一部になっていて、まず集客やスポンサー集めのためと思われる配役も目につきます。その結果、コンテンツの力が落ちる。時折耳にする脚本の書き直しも、制作途中で「この方が作品が良くなる」という理由ならわかりますが、最近ではタレントの所属事務所の意向などが入り込んでくることもあるそうです。

この連載の第1回「神がかり作品」にも書きましたが、「神は純粋なクリエイティビティのもとにこそ降りてくる」。神がかりとまで言わずとも、名作には必ず純粋なクリエイティビティと情熱がある。予算の問題ではないんです。マンガ家にしても、コミックスが売れなければ儲かるどころか赤字になりかねない商売。それでもマンガ家というクリエイターは「どうしたら面白くなるか」を純粋に追求してしまう。巨額な制作予算が必要な映像作品よりも、マンガ家の脳内でアイディアが膨らむマンガは余計な思惑が混じりにくいんです。

今回「ドラマ・映画になった原作」ということで、Blogでコメントを募ったところ、「原作の世界観をそのまま持ってこれるわけではないので、ドラマ化した作品には興味がない」、「むしろ、世界観を壊されたくないから見ない」という意見もありました。もちろん原作に対する思い入れが強ければそう思ってしまう気持ちも理解できます。テレビドラマ化するには、マンガが持つ独特の世界観を一般化しなければならない。原作のファンには薄まったように感じたり、陳腐に見えてしまうかもしれない。でも、あれはあれでいいんです。コアなファン層に響くものをそのままドラマ化しても広く訴えかけることはできない。原作に愛情を持つ人が手がければ、賛否はあっても必ず誰かには刺さる作品になる。読者にしてもイマジネーションを全開にして、違う作品として楽しみたい。

原作のマンガを純粋に楽しみ、ドラマ化された作品も楽しみ、さらにはストーリーやキャスティングまでも脳内で妄想を膨らませることができる。マンガという極上のエンターテインメントに触れるだけで、人生の楽しみは何倍にも膨らんでいくのです。

HAKUEI的「ドラマ・映画だけじゃわからない! すごい原作マンガ」とは
一、ディテールや世界観にこだわりがある作品である
一、読者それぞれがキャスティングが思い浮かべられる作品である
一、そもそも映像化される時点で名作である
番外、映像化された作品のガッカリ感を取り返してくれる作品である

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