第9回「マンガ大賞2010 極私的ノミネート作品」
Page 3 圧倒的な熱量で読者を引きずり込む『バクマン』
圧倒的な熱量で読者を引きずり込む『バクマン』
- 『バクマン。 1 (ジャンプコミックス)』
- 大場 つぐみ
- 集英社
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今回、「マンガ大賞」の候補作を選ぶにあたり、あまりに王道過ぎて、一瞬「選んでいいのか」と迷いそうになった作品があります。現在『週刊少年ジャンプ』で連載中の『バクマン』(作・大場つぐみ 画・小畑健)です。
『このマンガがすごい2010』でもオトコ編の第一位を獲得し、間違いなく現在、ジャンプの屋台骨を支える作品のひとつでしょう。この秋にはアニメ化も予定されているといいます。選考委員として、こうした"ドメジャー"な作品を挙げていいのかと一瞬迷ってしまったんですが、「マンガ大賞」は「いまこの瞬間一番おもしろいマンガ」を決める賞なのですから、挙げないわけにはいきません。「俺はこんなマイナーなマンガも知ってるぜ」とか通ぶるのもカッコ悪いですから。
さてその『バクマン』ですが、とにかく熱い! 実はこの作品、1巻だけ読んだ時にはハマらなかったんですが、その後「マンガ大賞」にも関わっているニッポン放送の吉田尚記アナウンサーと本連載の担当者が飲み会の席で「『バクマン』の4巻、熱いですよね!」などと熱く語っているのを横で聞いて「この話題に入りたい!」と直後にツアーに出るとき東京駅で全巻買い。ホテルで読み漁った結果、2009年、もっとも衝撃的な作品となってしまいました。
現場の生々しさを見せるというウラ技
- 『バクマン。 6 (ジャンプコミックス)』
- 大場 つぐみ
- 集英社
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内容はご存じの方も多いでしょう。中学生の真城最高(ましろ・もりたか)と高木秋人(たかぎ・あきと)が作画者と原作者としてコンビを組み、プロのマンガ家を目指す物語で、まさに現代版の『まんが道』とも言えるような内容になっています。実は『まんが道』をモチーフとした作品は他にもありますが、フィクション作としては『バクマン』は他の作品と決定的な違いがあります。この作品は週刊マンガ誌の内情をかなりの部分で暴露してしまっているのです。しかも舞台は『週刊少年ジャンプ編集部』。持ち込み先もジャンプ編集部ですし、「ジャンプシステム」として有名なアンケートの詳細も、かなり実情に近い形で描き込まれているそうです。
物語は、奇想天外とも言えるような設定からスタートし、場面ごとにラブコメやギャグマンガの手法など、マンガに必要な要素がこれでもかと詰め込まれています。しかもジャンプ王道の「友情」「努力」「勝利」という"熱血スパイス"も振りかけられている。これは男なら燃えないわけがありません。個人的に「マンガ大賞」には「これが来るんじゃないか」と予想していますが、さて結果はどうなるか。3月に行われる大賞の発表をお待ちください。