石田剛規さん
大学時代は"慶大トリオ"として名を馳せ、JBLの名門チーム「トヨタ自動車アルバルク」を経て、現在はドラマ出演に、バスケクリニックを主宰。活躍のフィールドを広げ続ける石田剛規さんが選んだ座右の一冊とは――。
“漢”の生き様に出会う、という読書の愉しみ
葛藤の中で出会った読書の愉しみ
大学時代には、慶應大学バスケ部を関東大学リーグ、インカレ優勝に導く活躍を見せ、卒業後はトヨタ自動車アルバルクに所属。 プロ引退後はドラマ「ブザー・ビート」(フジテレビ)に出演する傍ら、バスケ指導にあたる。 石田剛規さんの経歴は、人が羨むような華々しいものに見えるが、これまでの道のりは決して順風満帆なことばかりではなかった。
「大学時代に日本一になり、社会人一年目でアンダー24の代表に選ばれ、これからだという時に、膝を怪我してしまったんです。 手術をして復帰した後も、なかなか評価されない時期が何年も続いて……。 自分で選んだ道だから諦めたくない、上手くなりたい、負けたくない、と思う一方で、 大好きなはずのバスケットが、とてもつらい存在になりそうで、ずっと葛藤がありました」 突然のケガによる入院。それは読書の面白さに目覚めるきっかけでもあった。 「体が思うように動かず、毎日ベッドに寝ているような生活ですから、本を読むぐらいしかやれることがなかった(笑)。 小説から株式投資の本、ビジネス書と、手近にある本を片っ端から読んでいました。 ある種の現実逃避だったのかもしれません。でも、いろんな本を読んでいるうちに、 ケガをしている自分もそれほど悲観するものではないなと思えるようになったんです。 試合にも出られず、相手にもされない今の自分でも、何か学べることはあるはずだと」
プロをも涙させる『スラムダンク』の魅力
- 『スラムダンク (1) (ジャンプ・コミックス)』
- 井上 雄彦
- 集英社
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バスケットボールとの出会いは小学4年生の頃。友達に誘われ、 バスケ部に入ったのがきっかけだった。以来、ずっとバスケとともに人生を歩み続けてきた。
「子供の頃はあまり本を読むほうではなかったんですが、『スラムダンク』は読んでいました。 今でも大好きなマンガで、何回読んでも泣ける。 作品の中のバスケシーンは高校生にしては凄すぎる....と、つい思ってしまうんですけど(笑)。 でも、登場人物のシュートフォームや、精神状態はすごくリアル。 試合の中で、疲れる事も無く、シュートを打つと全て決まる、「ゾーンに入る」という感覚を経験したことがあって、 作品の中でも、同じように「誰にも止められない」「打ったら入る」という選手の状態が描かれています。 井上雄彦さんは本当にプレイヤーの気持ちもわかっている方なんだなと、そんなことを想像しながら読むのもまた面白い。」
想定外だった“プロ”という進路
中学から高校、大学とバスケ部に所属。しかし、大学卒業後もそのままバスケ選手を続けることになるとは、想像していなかったという。
「もともと、将来は建築の方面に進むつもりでした。プロの世界にいけると思ってなかったし、バスケは大学までだろうなと。 だから、トヨタから声をかけられたときは、本当に驚いたし、嬉しかった。 ただ、社員として働きながらバスケを続けるのか、プロになるのかはすごく悩みました」
石田さんの背中を押した、ある一冊とは――
- 『人生の地図』
- 高橋 歩
- A‐Works
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『人生の地図』は当時、進路に悩んでいた頃に出会った一冊だ。
「親を安心させたいという思いもあったし、自分がどの程度、プロの世界で通用するのかという不安もありました。 ずっと迷っていたんですが、この本を読んで、決心がついたんです。 「人生は旅だ。自分だけの地図を描こう。」という言葉に出逢い、世界が広がった気がしました。 一度、バスケに自分の全てを注いで挑戦してみたい。欲求のまま、自分の可能性に賭けてみたい。 それなら、リスキーではあるけれど、プロという道を選んでみようと」
印象がガラリと変わった『神はテーブルクロス』
- 『神はテーブルクロス』
- 須藤 元気
- 幻冬舎
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プロという進路を選択した石田さんを待ち受けていたのは、膝の故障という過酷な現実だった。 つらい日々の中で、偶然手にとった『神はテーブルクロス』。当時と今とでは印象がガラリと変わったそうだ。
「スピリチュアルな視点から、「幸福を生み出すヒント」を紹介している本なんですが、 初めて読んだときは全然ピンと来ませんでした。なんだかよく分かりませんでしたね。(笑)。 でも、ケガを繰り返して、ボロボロになり、バスケを好きな気持ちも揺れ始め、 一度は『このまま、バスケから離れて、別の道で……』と思っていたけれど、 今こうして、ドラマの仕事をさせてもらったり、バスケクリニックでバスケを教えたりしているのは、バスケとしっかりと向き合って生きてきた事からの縁ですし、いろいろな人との出逢いやつながりのおかげだなと。 好きなことができる幸せを感じる事、人の痛みを感じて理解する事、 周りの方々への感謝の気持ちを持つ事、それが出来るようになったのは、 あの時、ケガをしたおかげかもしれない、とようやく思えるようになりました」
オトコの生き様を教えてくれる、おすすめの一冊
- 『水滸伝 1 曙光の章 (集英社文庫 き 3-44)』
- 北方 謙三
- 集英社
- 648円(税込)
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そんな石田さんがすすめる、オトコの課題図書は、19世紀の中国を舞台に、英雄たちの活躍を描いた『水滸伝』だ。
「現役時代に、知り合いに勧められて読み始めたんですが、全19巻もあるので、最初は絶対、最後まで読めないと思っていたんです。ところが、1巻を読み始めたら、ハマってしまった(笑)。 この小説に書かれているのは、まさに“漢(おとこ)”の世界。 男同士の友情から愛情、生き様から死に様まで、すべてが詰まっている。 何度も心を震わせました。何度も泣きました。何度も読み返しました。 スピンアウト作品にあたる『楊令伝』もおすすめです。ハマるかどうかは1巻を読めばわかるので、ぜひ『水滸伝』の1巻だけでも手にとってみてください」 また、「地球消滅」という危機的状況を目前にした人々を描いた短編小説集もおすすめだとか。 「『隕石が落ちて地球が消滅する』と言われたら、絶望してしまう人もいれば、何も変わらずに日常生活を過ごせる人もいる。 では、自分はどうやって過ごすんだろうと考えされられる作品でもあります。できれば、ほっこり昼寝でもしていたいけれど、無理だろうな。『やべー!』なんて言いながら、ずっとしたかった旅をしていそう。それも、泣きながら(笑)」
1982年 9月25日 生まれ 身長 187cm 体重 83kg
元トヨタ自動車アルバルク所属。
05' U-24 ユニバーシアード
イズミル 日本代表
06' スタンコビッチカップ
日本代表(中止)