2006年8月 アブラゼミ腹出し号
新刊めったくたガイドは、三橋暁が絶妙クライム・ストーリー『レイヤー・ケーキ』を映画より先に読め、とイチオシすれば、石堂藍はノーベル賞作家・ゴールディングの初訳長編を読みごたえ充分と太鼓判。大森望が感動のロボット小説『アイの物語』を本年度日本SFベストワン最有力候補と絶賛すれば、大矢博子は『月が100回沈めば』を読んでとびきりの「普通」を堪能。吉田伸子が『ほどける とける』で心の凝りをゆっくりほぐしたかと思えば、米光一成は幻視者の予言の書を前に、らしくない高漢字率に変身! そして北上次郎は蜂谷涼の新作が二作出て、うれしいうれしいと小樽小説を一気読みだ。さあ、この中に下半期のベスト1はあるか、スイカの種をとばさないように注意しながら読んでくれぃ!
そして今月は半期に一度の特大号ならではの特別企画が盛りだくさん。まずは堀江敏幸がフランス文学に関わるようになった経緯から、翻訳者としてのスタンスまでを9ページで明かす翻訳文学ブックカフェ場外乱闘版。エッセイも評論も翻訳も、はたまた手紙も書き言葉はすべて創作だ、とおなじみ新元良一を聞き手に熱く語るぞ。
続いて登場は古川日出男のオールタイムベストテン。こういう企画は「遊び」だと思うからと、それなりに真剣に順番をつけた「作家としての僕の、師匠のような本はこれだな、な十冊」だ。作家・古川日出男の師匠のような十冊とは何か。濃~いラインアップをじっくり味わってくれぇ! さらに本誌初登場の大橋博之が手塚治虫と武部本一郎の謎に迫る疑惑解明緊急レポート、サブカルおじさん遠藤諭が「裏」神保町へいざなう本の街探訪エッセイ、大槻ケンヂの不定期連載「オーケンの最近読んだ本についてダラダラと。」など、ゲスト陣も超充実! 前編から三か月、遅くなってすまぬすまぬと戸川安宣が成蹊大学図書館アドバイザーの顔写真付き証明書で蔵書始末記に始末をつければ、柴口育子は「通販生活」から「夢みつけ隊」まで十一誌の通販雑誌を読み比べて、財布の紐がゆるみっぱなし! おまけに4月号の特集で初見参をはたした本棚プロファイラー三人組が帰ってきて、三人分の本棚から持ち主の人となりをずばりと当てる本棚プロファイルもあるから、おお、どこから読めばいいのか!? などと言わずにぜ~んぶ読んでね、の本の雑誌8月号はどこをとってもウォーターベッドの心地よさ。一回四百円の整体で背骨もすっきりの特大号なのだあ!
目次
今月の一冊
エッセイも評論も翻訳も書き言葉は創作である! 堀江敏幸vs新元良一
トヨザキ社長の「寄らば斬る!」/齢九十の濁らない眼を見よ! 豊崎由美
地上最強の神秘武術とは何か? まあ、なんでもいいんだけど。 大槻ケンヂ
特集:2006年上半期ベスト1
エンターテインメント・ベスト10
私のベスト1/内澤旬子・高野秀行・久世番子・山口文憲・藤原義也
読者が選んだベスト1
積ん読塔の在庫整理 鏡明
南の話/ワンブック・オーサーの二作目 青山南
私のオールタイムベストテン/ずぶずぶと一生を費やす十冊 古川日出男
吉野朔実劇場/本をつくる 吉野朔実
通販雑誌11誌読み比べ/通販雑誌界にはエコの風が吹いていた! 柴口育子
新刊めったくたガイド
絶妙クライム・ストーリー『レイヤー・ケーキ』がいいぞ! 三橋暁
緊張感に満ちたゴールディングの初訳長編 石堂藍
感動のロボット小説『アイの物語』をイチ押し! 大森望
『月が100回沈めば』で“普通”“特別”を考える 大矢博子
心の凝りがゆっくりほぐれる『ほどける とける』で元気百倍! 吉田伸子
世界を一変させる飯島洋一の幻視の力 米光一成
蜂谷涼の小樽小説に酔いしれる 北上次郎
アイルズの冒険小説『神の足跡』にわくわく! 穂井田直美
直球バカ路線のデスメタル漫画だ! 岩井道
戦国乱世を駆け抜ける信長と戦った男たち 青木逸美
ダン・シモンズの超大作SF『イリアム』が出るぞ! 山岸真
1000店規模をめざす日販のポイントサービス 永江朗
この世で一番早い広告はこれだ! 近藤庄太郎
子供の時に読みたかった『科学者という仕事』 渡邊十絲子
廃線復活の願いを込めた写真集『高千穂鉄道』 川上賢一
帰ってきた本棚プロファイリング座談会
武部本一郎と城青児と手塚治虫 大橋博之
「裏」神保町へいらっしゃい! 遠藤 諭
江戸川乱歩と福田恆存と山岡荘八が顔を並べる座談会! 坪内祐三
サブカルチャー創世記/脳天気な大口のはてに 津野海太郎
よさこい少女マンガ格闘記/干物女に負けない“乾きもの男”チェック!ビンゴ本郷
悪党どもの肖像/人生の現実に迫るフランス人の暗黒観 吉野仁
ヒーローたちの荒野/『無援の抒情』の毅然としたヒロイン像 池上冬樹
自在眼鏡/わっしょい倶楽部でわっしょいしよう!他
コラム
・今月の浅沼茂 浅沼茂
・ミミ中野のこれいただくわ ミミ中野
・銀の輔本の旅 高野ひろし
蔵書始末記(後編) 戸川安宣
笹塚日記 目黒考二
ファッション販売の裏に興味津々 柴口育子
私の「いい本屋」基準はこれだ! 青木るえか
文化大革命の「『馬』になった一家」に驚愕 かなざわいっせい
三十八人の目撃者と届かなかった悲鳴 柳下毅一郎
掲載図書索引
続・棒パン日常/定量制 穂村弘
三角窓口/JQ堂の四面書架が私を傷つける!?他
北原バカ本道 北原尚彦
「愛の流刑地」の弁護士的読み方 ローヤー木村
歩く旅ひとやすみ/煙の奥に見た風景 沢野ひとし
今月のお話/この夏いきなり編集者 椎名誠
後記