2008年10月 軽トラ三段跳び号
氷室冴子が亡くなってはや3か月。『クララ白書』が打ち出した20世紀後半の等身大少女小説はどこにいってしまったのか!? というわけで、今月は黄金期(と勝手に思っている)少女小説にどっぷりつかる特集だ! コバルト四天王の末っ子・エイミー久美沙織による正しい少女小説の書きかたから、80年代コバルト文庫のベスト10、異端に海外、さらに氷室冴子の全作品一挙再読レポートに、読者の偏愛少女小説まで、少女小説の世界にぐわ~んと迫るのである。さあ、老いも若きも男も女も、少女小説に逆襲されてくれぃ!
新刊めったくたガイドは、三橋曉が傑作目白押しの作品集『20世紀の幽霊たち』にぐりぐりの5つ星を打てば、牧眞司はパワーズの冠絶した演算性能と不敵な修辞法に感服。大森望が『ディスコ探偵水曜日』を今年最大最強のバカSF巨編!とベタほめすれば、宇田川拓也は柳広司の最高傑作と『ジョーカー・ゲーム』を絶賛。永江朗がなぜかカップル小説を続けて読めば、東えりかは吉村昭の本格伝記と夫婦の記録を合わせ読み! そして北上次郎は杉本章子『銀河祭りのふたり』を前にシリーズものの終わり方をじっくり考えて、1冊でスペース使いまくりだ。さあ、あなたも「信太郎人情始末帖」で、シリーズの終わり方を考えてみよう!
今月の「世界の魔窟から」は時代小説のアンソロジーなどでおなじみの文芸評論家・細谷正充氏が住む埼玉県行田市の小さな図書館風3階建ての一軒家。家を建てて魔窟卒業した文芸評論家の「理想の本棚」は意外にもマンガがいっぱい!? コレクターじゃないといいながら、本棚50棹以上が2フロアを占める勝ち組書評家の魔窟を堪能してくれぃ! さらに、10月号だっていってるのに「さらさらかき氷 雪細工」を買いにコンビニを流す顧問に、朝から立ち呑み屋を求めて彷徨うイラストレーターと町田コンビは右往左往。編集長がカツオを釣っているうちに夏は終わって、浜本の禁煙もはや1か月! 読書の秋の皮切りに1冊あれば山フェスもSF大会もぶっ飛ぶ、「本の雑誌」10月号で、いざ、星空へレッツゴーなのだあ!
目次
今月の一冊
世界の魔窟から/四十過ぎたら“魔窟”じゃダメでしょ。勝ち組書評家に訊く蔵書整理の秘訣!
トヨザキ社長の「寄らば斬る!」/地味でささやかな語りに唇ふるふるだ! 豊崎由美
特集 少女小説の逆襲
正しい少女小説の書きかた 久美沙織
コバルト文庫黄金時代ベスト10座談会/忘れられないタイトルがここにある!
「嵐が丘」症候群 柿沼瑛子
暗黒ものからBL系まで異端の少女小説大集合だ! 米光一成
氷室冴子作品一気再読/ずっと心の奥に持ち続ける物語 高頭佐和子
読者アンケート/この少女小説が好きだ!
コラム・今月のお買いもの 目黒考二
やっと、シェイボン 鏡明
南の話/集中せよ 青山南
新刊めったくたガイド
傑作目白押しの作品集『20世紀の幽霊たち』をおすすめだ! 三橋曉
冠絶した演算性能と不敵な修辞法おそるべしパワーズ 牧眞司
『ディスコ探偵水曜日』は今年最大最強のバカSF巨編である! 大森望
柳広司の最高傑作『ジョーカー・ゲーム』を読むべし! 宇田川拓也
さまざまなカップルを描く四編の小説 永江朗
息詰まる戦いのような吉村昭の本格伝記 東えりか
激しく動き続けたシリーズ完結編『銀河祭りのふたり』 北上次郎
ルヘイン『運命の日』を世界に先駆けて読んだぞ! 穂井田直美
昭和という時代の精髄を読む 神谷竜介
業界風雲児田中達治の功績 田口久美子
超個性派の二長篇 日本SF新人賞受賞作 山岸真
いい女は男に求めるレベルが高いのです 近藤庄太郎
安直モノマネゴシップ雑誌に喝! 柴口育子
老舗岩波の70周年記念復刊柳田国男『伝説』 渡邊十絲子
図書館員が選ぶ信州の名著復刊シリーズ 川上賢一
坪内祐三の読書日記/矢沢永吉って日大生だったの? 坪内祐三
ミーツへの道/自然発生の街 江 弘毅
よさこい少女マンガ格闘記/気持ちほっこりの短編コミックス ビンゴ本郷
高野秀行の辺境読書/『印度放浪』、『血だるま剣法』に敗れたり! 高野秀行
ヒーローたちの荒野/一人称のない名無しの“世間師” 池上冬樹
ブックス・墨瓦蝋泥加/おかしくも真摯なちょんまげヨハネ像 宮田珠己
自在眼鏡/原作と翻訳が同一人物の本が出た!他
コラム
・今月の林カケ子
・ミミ中野のこれいただくわ
・古本屋セドロー君の午後 向井透史
岸和田DNA/自分だけはダマすな 中場利一
コージーといえば猫なのだ! 大矢博子
グレアム・グリーンとチェイスの交友関係 吉野 仁
「意外な犯人」がもたらす恐怖と不安の世界 霜月蒼
マンソン・マニアからの贈り物 柳下毅一郎
掲載図書索引
続・棒パン日常/言葉と「私」 穂村弘
三角窓口/双子小説『悪人』の必然性を探る!? 他
長島千尋のうきうき道場 長島千尋
歩く旅ひとやすみ/立ち呑み屋は消えない 沢野ひとし
今月のお話/カツオの夏だったあ! 椎名誠
後記