2008年6月 タコ足とおせんぼ号
『ゴールデンスランバー』が本屋大賞を受賞し、村上春樹訳の『ペットサウンズ』が刊行されて、なんともめでたいこの春だが、どっこいビートルズとビーチボーイズだけが、ロックじゃない、ロケンロールな本はまだまだあるんだぜ、ベイベエ! というわけで、本の雑誌6月号の特集は「本とロックが人生だ!」。 スプリングスティーン・フリークの坪内祐三によるロックとアメリカ文学の関係から、洋楽一途書店員が絶賛する私的グラミー賞最優秀ロック小説部門受賞作品にポップおやじとノワールドラマーのロック本、さらに挫折ハードロッカーが表現衝動をむくむくさせる脳天直撃のヘビメタコミックまで、ロックがビンビンに鳴り響く本の特集だ。おっと、忘れちゃいけない、読者がすすめるロック本もあるぞ。いざ、うねるビートで、ずっこんずっこんいこう!
新刊めったくたガイドは三橋曉がペレケーノスの新たなステップボード『変わらぬ哀しみは』にしみじみすれば、牧眞司はウィリアム・トレバーの『密会』を前に三日三晩熟考。大森望が小林泰三のマッドな時間SFに拍手すれば、宇田川拓也は大倉崇裕の新境地『聖域』のズシリとした読み応えに大満足! 永江朗がパズルのような日常風景に気分はグーグル・アースなら、東えりかは『広告放浪記』のがむしゃらさにどーんと感情移入。そして北上次郎は気がつくのが遅くてすまぬ、と詫びながら異世界ファンタジー『天山の巫女ソニン』を絶賛だ。今さら格好悪いと言いつつも諦めきれないおじさんのイチオシに注目してくれぃ!
そして今月は少年SF研究家・大橋博之が久々に登場! 生誕百年という節目に判明した山川惣治の意外なミステリーに迫れば、いよいよ元祖古本村で朝を迎えたバカ本堂・北原尚彦は古本聖地に古本市を発見できずに唖然呆然。さらに青山南が写真集『ハワイ』で、さみしく、わびしく、なつかしくハワイに想いを寄せれば、沢野ひとしもハワイからの手紙で、心はハワイ島。リゾート気分も満喫できる本の雑誌6月号は、なにを隠そう300号!の記念通常号なのだあ!
目次
今月の一冊
ヒーローたちの荒野/彫師伊之助とネオ・ハードボイルド 池上冬樹
吉野朔実劇場/楽しい仕掛け本 吉野朔実
ブックス・墨瓦蝋泥加/謎がいっぱい補陀落渡海 宮田珠己
特集:本とロックが人生だ!
ロックしている文学を私は一つしか知らない 坪内祐三
コラム・『階段途中のビッグ・ノイズ』は私的グラミー賞受賞作品なのだ! 高坂浩一
テランとマッカーシーでずっこん! 田口俊樹
コラム・挫折ハードロッカーがすすめるコミック二作プラス五! 佐藤祥道
もっと速く!もっとうるさく!! 霜月 蒼
読者アンケート・これぞロックだ本!
北原古本旅・英国編/古本聖地に古本市はなかった!? 北原尚彦
トヨザキ社長の「寄らば斬る!」/祝『バートルビーと仲間たち』全訳! 豊崎由美
衝撃の一行 鏡明
南の話/さみしく、わびしく、なつかしく 青山南
新刊めったくたガイド
ペレケーノス『変わらぬ哀しみは』がしみじみいいぞ!! 三橋曉
トレヴァーの本を前におき三日三晩考えてみた 牧眞司
小林泰三のマッドな時間SF「時空争奪」に拍手! 大森望
“山”の存在感がズシリと響く大倉崇裕『聖域』 宇田川拓也
地図を見ながら読みたいパズルのような日常風景 永江朗
『広告放浪記』のがむしゃらさがいいのだ! 東えりか
三カ月遅れでも『天山の巫女ソニン』を強く押したい! 北上次郎
M・ハリソンのロックなシリーズ第一弾だ! 穂井田直美
世界にはばたくわれらが光源氏(嘘) 神谷竜介
海外文学棚の人気者!? 田口久美子
『日本SF全集』全六巻が六月スタート! 山岸真
10年後どうしてる?男の将来が心配に 近藤庄太郎
クセになる!?好き勝手夫婦雑誌「クレヤン」 柴口育子
上半期最大の「見逃し本」はこれだ! 渡邊十絲子
明治の夜明けを駆け抜けた“ふうけもん”たち 川上賢一
坪内祐三の読書日記/銀座の旭屋書店までなくなってしまうなんて 坪内祐三
ミーツへの道/ミナミで巻き返し 江 弘毅
山川惣治│百年目のミステリー 大橋博之
よさこい少女マンガ格闘記/白ギャルと猛禽ちゃんが乱舞する女子世界 ビンゴ本郷
高野秀行の辺境読書/お宝を巡る夢と欲の大熱戦 高野秀行
自在眼鏡/厚さ五十五ミリの背目次本に注目!他
コラム
・今月の林カケ子 林カケ子
・ミミ中野のこれいただくわ ミミ中野
・古本屋セドロー君の午後 向井透史
岸和田DNA/タコ焼きと極意五箇条 中場利一
ピュアなミステリ愛がいいのだ! 大矢博子
ハドリー・チェイスの幻の作品 吉野仁
サイコ・サスペンスの黒い種子 霜月蒼
一問一答すべて記した暴露すれすれ公判録 柳下毅一郎
掲載図書索引
続・棒パン日常/表現の痕跡 穂村弘
三角窓口/借金とりの王子で予習は万全だあ!他
長島千尋のうきうき道場 長島千尋
コラム・今月のお買いもの 目黒考二
「地下鉄に乗って」の弁護士的読み方 木村晋介
歩く旅/ハワイからの手紙 沢野ひとし
今月のお話/今日は歌舞伎座、明日は人間ドック 椎名誠
後記