2010年12月 雪あかり足あと号 No.330
新刊めったくたガイドは三橋曉が力強く軽快なウィンズロウのクライム・ノベルを堪能すれば、山崎まどかは物語が幾重にも響き合う『オラクル・ナイト』を絶賛。大森望が少女版《老人と宇宙》『ゾーイの物語』が出た!と興奮すれば、宇田川拓也は辻村深月の深く静謐な物語を読み逃すな、と進言。アライユキコが絲山秋子『妻の超然』に作家の決意を読めば、金子のぶおはゼロ年代生まれ回想録三本に加え、音楽史も見直して唱歌斉唱。そして北上次郎はホントに素晴らしい。しかしもったいない──と北方謙三『抱影』をイチオシ。小説を読みながらこれほど嬉しかったことは近年ない、と言いながら、いったい何がもったいないのか。その真相は46ページだ!
今月の特別読み物は「二〇一〇年この新人がすごいぞ!」。エンターテインメント、ミステリー、時代小説から今年注目のニューフェイスを紹介するのだ。さあ、新人王は誰か、要チェック! さらに本誌初登場V林田が失われたSF麻雀漫画をざくざく発掘すれば、「焼き肉キムチ弁当」と呪文を唱えながら三万円お買い物に挑戦した穂村弘は、幻だらけの自分に呆然。嘘でかためた面倒くさい話が読みたい吉野朔実に、お天道さま信仰に啓示を受ける宮田珠己、マンションの風呂をビオトープ化する内澤旬子と連載陣も絶好調! 酷暑のあとにいきなり冬が来て、秋ない2010年の掉尾は、春夏秋冬いつどこで読んでも飽きない本の雑誌で、どーんと飾るのだあ!
目次
今月の一冊
トヨザキ社長の「寄らば斬る!」/ヘンテコ小説好き必読のアンチ・ロマン 豊崎由美
吉野朔実劇場/嘘語り 吉野朔実
ブックス・墨瓦蝋泥加/「お天道さま」とキリスト教 宮田珠己
図書カード三万円使い放題!/「幻」だらけ 穂村 弘
特集:活字で自活!
不連続活字自活男対談その1 坪内祐三vs荻原魚雷
拾い物の神様 浅生ハルミン
若者座談会/食っていけさえすればいい! 東川端参丁目・松田友泉・橋本倫史
アンケート/私の「本を読むためやせがまん」
不連続活字自活男対談その2 向井透史vs荻原魚雷
失われたSF麻雀漫画を求めて V林田
黒豚革の手帖/ビオトープ誕生 内澤旬子
文学賞記者日記
ヒーローたちの荒野/二十年前、二十年後 池上冬樹
実録エンタメ・ノンフ人生/世にも奇妙なマラソン大会 (3) 高野秀行
坪内祐三の読書日記/目黒さん共栄堂のメキシコサラダって知ってました? 坪内祐三
新刊めったくたガイド
力強く軽快なウィンズロウのクライム・ノベル 三橋曉
物語が幾重にも響き合う『オラクル・ナイト』 山崎まどか
少女版《老人と宇宙》『ゾーイの物語』が出た! 大森望
絶妙な筆致で綴る深く静謐な物語 宇田川拓也
絲山秋子『妻の超然』に作家の決意を読む アライユキコ
ゼロ年生まれ回想録三本! 音楽史見直しの『歌う国民』もすごい! 金子のぶお
人間の欲望が全開する『抱影』にぞくぞく喜ぶ 北上次郎
心理検死官がサンフランシスコを駆け巡る! 穂井田直美
『ゴールのないマラソン』を走り続けて 伊野尾宏之
唯一無二の異色作家デイヴィッドスンの連作集 山岸真
仙山線の中で読んだ『ゴーストライター』 荻原魚雷
頭脳のチカラビトがひらく哲学の入り口 渡邊十絲子
無闇に面白い『ランチパックの本』 石川春菜
荘厳で重厚な精神病院写真集 風野春樹
オビミシュラン M・オビスピエール
二〇一〇年この新人がすごいぞ!
窪美澄が今年のエンタメ新人賞だ! 藤田香織
鮮烈な新風が続々登場! 宇田川拓也
憧れのアイドルがどんどん雑誌創刊!? 林カケ子
八九歳デビューの“新人”第二作 青木逸美
物語を表す四語 鏡明
南の話/メキシコの波 青山南
サッカーストーリーズ/プロポーズ はらだみずき
稀代の数学者の架空伝記 円城 塔
「過去を逃れて」と『闇の奥』のラスト 吉野 仁
大人の醍醐味 児童文学 池澤春菜
現代のカッサンドラの痛快冒険譚 柳下毅一郎
今月書いた人
掲載図書索引
続・棒パン日常/セドリ幻想 穂村弘
三角窓口/ダイエット本のピンク攻勢にクラクラだあ! 他
小学4年生書評家ゆきちゃんの読んで育つ ゆきちゃん
キムラ弁護士小説に学ぶ/『鬼龍院花子の生涯』を読んで 木村晋介
歩く旅ひとやすみ/さらば二十面相 沢野ひとし
今月のお話/本の雑誌よもやま話 椎名誠
後記