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2020年4月 旋毛曲り旅立ち号 No.442

 訃報から一か月半。事務所をの扉を開けて、「いる?」と言って本の雑誌社に入ってくることはなくなっても、社員一同の心のなかに坪内祐三は変わらずい続けている。本の雑誌のスタッフライターを公言し、経営危機の際には社員ひとりひとりに図書カードを振舞って元気づけてくれた恩人・坪内祐三。本誌は急逝した坪内祐三に感謝の意を込めて、追悼特集を組むことにした。題して「さようなら、坪内祐三」。重松清と平山周吉、ふたりの弔辞から佐久間文子の送ることば、坪内番編集者座談会に酒中日記外伝座談会、倶楽部カメグロ対談に坪内祐三の十冊、坪内祐三年譜に読者の追悼の弁、そして内堀弘、一志治夫など総勢三十七人の追悼のことばにツボちゃんに教わった店、さらに自宅と仕事場の本棚を8ページで公開するカラー口絵「本棚が見たい!特別編」まで、なんと88ページの大特集だ。91年1月号の初登場から30年、本の雑誌とともにあった(と思いたい)坪内祐三がここにいる! ありがとう、ツボちゃん。

 新刊めったくたガイドは、小財満が帰ってきた生物学探偵セオ・クレイの孤軍奮闘に興奮すれば、林さかなはル=グウィンのクリアな思考に降参。大森望が乾緑郎の改変歴史時代SF《機巧のイヴ》三部作完結を寿げば、千街晶之は紙の本ならではのミステリー『紙鑑定士の事件ファイル』が示した宝島社の意地を支持。大塚真祐子が絲山秋子『御社のチャラ男』は会社員小説の金字塔である!と断言すれば、冬木糸一は人類の理性と共感を信頼するピンカー『21世紀の啓蒙』をイチ押し。そして北上次郎は伊吹有喜『雲を紡ぐ』のあちこちで立ち止まって、ふわふわ。さあ、おじさんがとても美味しそうだと舌なめずりする「白龍」の「ちいたん」とはなにか!? 118ページを見てくれぃ!

 今月は図書カード三万円使い放題!に須賀しのぶが登場! 丸善丸の内本店三階で歴史棚から音楽関係まで、足と思考をぐるんぐるんまわしながらも宝の山で予定崩壊。厳選した5点6冊は122ページだ。そして大山顕「マンションポエム東京論」が、ポエムとは何かといきなり核心を突けば、服部文祥が北海道に二ヶ月行ったあと十二国に二ヶ月行っていたことが判明! ホリイのゆるーく調査が「1899年生まれの三人の研究」って『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り』へのオマージュか、と思えば、沢野ひとしは「坪内祐三に教えられた日々」として神保町外伝でリスペクト。特別企画も連載陣も絶好調。超増ページ特集で本誌史上最厚の192ページのため、お値段も本誌史上最高になってしまったが(ごめんなさい)、その分中味は充実一途。本の雑誌4月号は坪内祐三に捧げる感謝と御礼の追悼号なのである!

目次

本棚が見たい!

特別編/いつまでも読書中 坪内祐三

特集:さようなら、坪内祐三

「いない」ことで、ずっと僕たちの中に「いる」 重松 清
ツボちゃんのこと 佐久間文子
坪内番編集者座談会/編集者気質と好奇心 飯窪成幸・江木裕計・嶋田哲也
東京外骨語大学の頃 内堀 弘
破門された私 藤中浩平
坪ちゃんありがとう 田口久美子
追悼のことば/さようなら、ツボちゃん
 福田和也・中野翠・柴﨑淑郎・嵐山光三郎・飯田昌宏・永栄潔・長塚圭史・増田結香・森山裕之・杉作J太郎・内藤誠・長谷川森人・新元良一・南伸坊・佐野衛・クラフト・エヴィング商會(吉田浩美・吉田篤弘)・壹岐真也
倶楽部カメグロ対談/ロング・インタビューのころ 亀和田 武vs目黒考二
マイルストーン時代の坪内祐三 一志治夫
従弟・坪内祐三君を悼む 坪内文生
神経のふれかた 橋本倫史
酒中日記外伝座談会/オフサイドトラップに気をつけろ!? 赤井紀美・安藤善隆・金寿煥
三角窓口/読者の送る言葉
坪内祐三の10冊/メディアとしての坪内祐三 平山周吉
追悼のことば/ありがとう、ツボちゃん
 泉麻人・石田千・荻原魚雷・四方田犬彦・畠中理恵子・和久井光司・川本三郎・岸本佐知子・浅生ハルミン・松尾潔・向井透史・瀬尾佳菜子・内澤旬子・谷村友也
おじさん二人組、教わった店でツボちゃんを偲ぶ
坪内さんに教わったお店
坪内祐三年譜 川口則弘
同時代史を書き続けた人 平山周吉

図書カード三万円使い放題!/宝の山で予定崩壊 須賀しのぶ
その出版社、凶暴につき 四谷熱血「本づくり」黄金時代/大学でテレビを爆発させていた「俺」 田代靖久
新旧いろいろ面白本/海の砂の中に住むグネグネ生物の生態 椎名 誠
SF音痴が行くSF古典宇宙の旅/ムーとSFはメビウスの輪 高野秀行
サバイバルな書物/北海道に二ヶ月行ったあと十二国に二ヶ月行ってました  服部文祥
一私小説書きの日乗/堅忍の章(二十) 西村賢太

新刊めったくたガイド

孤軍奮闘の生物学探偵セオ・クレイが帰ってきた! 小財 満
ル=グウィンのクリアな思考に圧倒される! 林 さかな
乾緑郎の改変歴史時代SF《機巧のイヴ》三部作完結! 大森 望
紙の本ならではのミステリー『紙鑑定士の事件ファイル』 千街晶之
絲山秋子『御社のチャラ男』は会社員小説の金字塔である! 大塚真祐子
人類の理性と共感を信頼するピンカー『21世紀の啓蒙』 冬木糸一
伊吹有喜『雲を紡ぐ』のあちこちで立ち止まる 北上次郎

アダルト・アウトロー・ミステリー『龍探』誕生! 宇田川拓也
木内昇『球道恋々』で球春到来! 内田 剛
店舗住居一体型本屋をめざせ! 坂上友紀
現代中国SFの傑作16篇 ケン・リュウ編『月の光』 山岸真
『マイ・ブロークン・マリコ』のあふれる情動に圧倒される! 田中香織
イセザキ・モールの“黒っぽい”古本屋 小山力也
よりどりみどりの地獄から謎の俗信へ べつやくれい
感傷と混乱に陥った休刊の報 下井草 秀

生き残れ!燃える作家年代記/小説家とブルースハープはプロとアマが同じ道具を使っているんでござる 鈴木輝一郎
黒い昼食会/ノムさんに頼るしかない!?
マンションポエム東京論/いきなり核心:ポエムとは何か 大山 顕
憧れの住む東京へ 洲之内徹(3)/郷愁の深川東大工町 岡崎武志
私がロト7に当たるまで/355回の活力 宮田珠己
マルジナリアでつかまえて/実物はもっと美しいんだから! 山本貴光
ユーカリの木の蔭で/名探偵退場 北村 薫
連続的SF話/喫茶店が好き 鏡 明
南の話/それで最後はどうなるの 青山 南
そばですよ/「富士そば」の奇襲攻撃。針を振り切って、バクテーそば現る。 平松洋子
鬼花──鬼刑事・花篤好美/ヤクザがタピオカ注文する午後二時半 中場利一
ヘミングウェイとJavaScript 円城 塔
思いがけないランチタイム 江部拓弥
人間関係、その柔らかく厄介な襞 石川美南
伝説の船長自らを語る 風野春樹
ホリイのゆるーく調査/1899年生まれの三人の研究 堀井憲一郎
神保町物語外伝/坪内祐三に教えられた日々 沢野ひとし

続・棒パン日常/ちまちま天国 穂村 弘
三角窓口/面白味九割減にするパンフレットはこれだ! 他
即売会の世界 石川春菜

今月書いた人
掲載図書索引
今月本の雑誌に遊びに来た人
後記

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